絵美 一日中Flying
一日移動の日でもいろいろあるものですね。
五日目(土)曇りのち晴れ
シャーロットタウン~トロント~カルガリー~バンフ
今日は一日中カナダを移動する日だ。昼ご飯をどこで食べることになるのかわからないので、日本から持って来ていたおにぎりの乾燥パックにお湯を入れて、お弁当を作っておくことにする。これがすぐれもので、味の方も美味しかった。日本の即席食品の技術って本当に素晴らしい。アウトドア好きのフミくんもこのおにぎりは知らなかったみたいで、山登りにいいね!と感激していた。
朝、ホテルの外に出てみると昨日よりは寒さが緩んでいた。地面が濡れていたので夜中に雨が降ったようだ。
ロビーで待っていると、旅行会社の人が迎えに来てくれた。すっかり慣れ親しんだこのホテルともお別れだ。適度に放任主義で旅行者の痒い所に手が届く感じのこのホテルはこの旅行中で一番良いホテルだった。ロビーの若いお兄さんに手を振ってホテルを後にする。
シャーロットタウン空港では、この旅行中で一番厳しい物々しい検査が行われていた。何かあったのだろうか?私達は無事に検査をパスしてエアバス319に乗り込む。空には厚い雲がかかっていたが、何とか飛行機は飛ぶようだ。飛行機が離陸するまで待っていたが窓側の席の人が乗り込んでこなかったので、フミくんと二人して交代しながら外を眺めさせてもらう。飛行機は群青色の明るい空の上を飛んでいるのだが、下には雲の山脈が一面に続いていてまるで雲の王国が下に広がっているようだ。
後に座っているサリーをまとったインド人の家族の人たちが大声を上げたので外を見ると、同じ高度を飛んでいるように見える別の飛行機がぐんぐんこちらの方に近付いて来て、私達の飛行機とすぐ隣に並んで並走したかと思うと、直ぐに「お先に!」と前方へ見えなくなっていった。その飛行機が残した飛行機雲が、私達の覗いている窓のすぐ側を流れていった。・・・凄い。なかなかこういう経験は出来ないね。
今朝のテレビの天気予報では、「五大湖の方に低気圧の塊があるので、ストームに注意してください。」と言っていた。なので飛行機が揺れるかも知れないと覚悟していたのだが、ほとんど揺れなかった。よかった。トロントで会った旅行会社のWさんが「天気予報が毎日雨だと言っているのに、この半月ずっと晴れなんですよね。」と言っていたが、あまり天気予報はあてにならないのかもしれない。五大湖に近付くにつれて雲は無くなっていき、結果的にトロントはピーカン晴れだった。
さあ、ここが今日の一番の難所である旅行会社の人がいない中での飛行機の乗り換えだ。プリンスエドワード島を立つときに飛行場まで送ってくれた旅行会社の人が「荷物はそのままカルガリーに行きますが、乗客の搭乗ゲートナンバーはここの飛行場で確認できないので、現地で直接係員の人に聞いて確認を取ってください。それと、緯度が変わるので現地時間が一時間ずれます。搭乗時間を必ず現地の時計で確認してくださいねっ。」と念を押された。
しかし飛行場についてみると、私達の次に乗る飛行機が同じ搭乗口に表示されている。ほっと安心したが、飛行機ナンバーが合っているのに出発時間が違う。フミくんに確認してもらうと、エコノミーとファーストで搭乗時間を変えているのでこれでいいと言われた。やれやれ。
待ち時間がかなりあったので、ここで昼食を食べることにする。おにぎりだけでは少ないので、店を何件か覗いて見ると、一軒の店に寿司弁当があった。エビ、サーモン、カルフォルニア巻でガリと綺麗にソフトクリームのように絞り出してあるワサビがついていて13ドルだ。ナイアガラで見たものより値段も見た目も良心的だったので、ちょっと高いけどこれを購入することにする。これは味もまずまずだった。エビアン水とおにぎりなども加えてささやかな昼食だ。
搭乗時間が近づき「もう一回トイレに行ってくる。」とフミくんが言うので、フミくんのリュックサックも抱えてウトウトしていると、港内放送で「passengerタツノ、passengerタツノ、ゲート案内までチケットを持って来てください。」と呼ばれた。他人が呼ばれるのは何回も聞いてきたが、まさか自分が呼ばれるとは思ってもみなかった。恐る恐る行ってみると、お歳を召した案内係の方が、私の持っている航空券をさっと取って何やら新しい券を用意してくれている。もしかして・・・と思って喜んでいると、やっぱりフミくんと私の席を並びにしてくれていた。「サンキュー!」と満面の笑顔でお礼を言うと、いえいえとーぜんの事よっ。「ユァウェルカム。」と笑ってくれた。
フミくんがトイレから帰って来たので、座席が並びになったことを言うととても喜んだ。前のチケットだと二人ともミドル(三人席の真ん中)だったのだ。放送で私達の名前が呼ばれたのも「聞きたかったなぁ。」と悔しそう。そこまで?
空港で同じ飛行機に乗る人を観察していると国際色豊かで面白い。アラブ人の女の子の赤ちゃん、アメリカ人のやんちゃな男の子がいる家族、フランス人のファッション雑誌に出て来そうなスタイルのマダム、アメリカ人の元軍人のようなおじさま、等々。この人たちはどんな人生を送っているのだろうと思わず想像してしまった。
飛行機に乗り込むと私達の席の担当のアシスタントパーサーの人がきびきびした黒人の男性だった。挨拶も「ボンジュール、コンニチハ。」とわざわざ日本語を使ってくれた。なので私達もドリンクのサービスの時に「メルシーボクー。」と言ってみる。お互いにニンマリだ。私達の三人席の通路側に座っているのは、ビジネスウーマンという感じのやり手そうな女性だった。分厚い本を読んでいたが、フミくんが飛行中にトイレに立つ時も事前に気付いてサッと席を立ってくれたりして、対応がカッコイイ。
カナダでは降り立つ空港ごとに現地時間が変わるので、飛行機に乗っている滞空時間を計算するのに苦労する。これって社会科の地理の問題になるかもね。とちょっと思った。昨夜は変な時間に寝たのでバンフへの四時間の飛行中半分の二時間はウトウトしていた。フミくんは元気一杯だったようで、初めての窓際の席で眼下に見えるアマゾンのような川やパッチワークのように綺麗に並んだ畑、緑豊かな町の様子をカメラで激写していた。
バンフの空港に着き、まず思ったのが暑いということだ。今回の旅行ではここバンフが一番寒いという情報だった。なのでフリースの上着まで荷物になるのに鞄に入れてやって来た。・・・なのに暑い。そして周りを見るとみんな半袖で歩いている??完全に誤算だ。
迎えに来てくれたFさんは新人さんらしく、車が走り出すと覚えたことを立て板に水のようにしゃべりだした。寝ぼけているのと長時間のフライトでふらふらの頭には少しきつい。けれど、これが今日の唯一の観光?になるのだ。何とかFさんについて行かなくてはならない。
まずはカルガリーの町を走りながらカルガリーオリンピックの話題、カナダの生活事情、山々や川の名前などの話が続く。ぼんやりした頭に染み込んできたのは、ここが映画「クールランニング」の舞台であり撮影場所でもあるということだ。あれは面白い映画だった。ジャマイカだったかしら、暑い国の人たちがやったことのないボブスレーを練習してオリンピックに出るのよね。
それから「スキーのジャンプ台が選手たちに不評だったのだが何故だと思いますか?」と聞かれたが私の頭は回らない。フミくんが左手に見えているジャンプ台と右手にある町を見て「このジャンプ台は山の中じゃなくて町のそばの高台にあるんですね。」と言ったらそれが正解に近かったらしくてFさんがとても喜んだ。「そうなんですっ。普通ジャンプ選手たちは山の中で飛ぶのに慣れているので、ここのカルガリーのジャンプ台で町に向かって飛ぶのが怖いと不評で、一番記録も伸びなかったので有名なオリンピックだったそうですっ。」・・・なるほど、作られた施設によって記録も変わって来るのね。
カルガリーの町を出ると、ずうっと大草原が続く。どこまでも真っすぐなフリーウェイと地平線しか見えない大草原。私の中の想像では、アメリカのテキサスあたりの景色に思える。カナダは森林地帯だと思い込んでいたけれどさにあらず、カナダ全土がこんな感じの大草原地帯らしい。遠くに牛や馬が放牧されていて、カーボーイとインディアンが住んでいるらしい。これにはびっくりした。私の中のカナダのイメージが百八十度変わってしまった。
遠くにロッキー山脈が見えて来た。それが走って行くうちにだんだん大きくなってくる。車は緩やかなカーブを描いて山脈の広々とした谷に道を進める。日本のようにくねくねした山道を思い描いてはいけない。道はあくまでも広々と真っすぐなのだ。両側にぴょこんぴょこんとディ〇ニーランドのアトラクションのように有名な名の付いた山々が変わり交代に現れていく。ハトがいないのにピジョンと名付けられてしまった山、フェイス・ホープ・チャリティの三つの頂を持つスリーシスターズという山、ランドル牧師さんと言う人格者の名がつけられたMt.ランドル、いろいろな山を観ることが出来た。よく晴れていたので山の稜線までくっきりと見えた。フミくんは興奮状態で写真を撮りまくっていた。
バンフに入る手前に、急に丘の上に住宅街が現れた。バンフは国立公園に指定されているために住宅の建築許可がでないらしい。なのでバンフで働いている人はみんなここに住んでいるそうだ。バンフにあるホテルに着いたのが、夜の9時。しかし日差しは真夏の昼の3時ごろのように感じる。太陽はピカピカで空は抜けるように青い。本当に今は夜なのだろうか・・・?
バンフは、高原にある鄙びた町だと思っていたが全然違った。この旅行で初めて出会った大都会で、東京の原宿みたいな感じだった。人も車もいっぱいだ。山小屋風の建物のホテルだったが、夜でも日が沈まないので車の排気ガスの匂いと、賑やかに酔っぱらっている大勢の人々で、「どこが山小屋?」な感じだ。私とフミくんにとっては、時差の関係で今日は27時間ある。疲れた身体に活を入れて、隣のスーパーに夕食の調達に出かけた。
スーパーで食料を買って、そこから2分ほどの所にあるリカーショップに行く。何とそこには日本のア〇ヒビールがあった。現地のビールも何本か買ってホテルに帰って部屋で夕食を食べる。夕食の後にシャワーを浴びると、二人でコテリと寝落ちした。余程疲れていたようで、外の喧騒も気にならなかった。
夜中の3時にあまりの暑さで目が覚める。・・・バンフ暑い。部屋にどうして扇風機が2台置いてあるのかがやっとわかった・・・。酸素が薄いぐらいの高原地帯と書いてあったガイドブックに物申したい。カバンの中に半袖など1枚も入っていない。セーターとフリース、ダウンジャケット・・明日はTシャツを買いに行くしかないね。
フミくんと二人で、やっと暗くなった夜中に、持って来ていた緑茶でティータイムだ。二人でごそごそとして、やっと明け方にもう一度寝ることが出来た。
バンフは湖の氷が溶けたばかりと聞いていたのに暑かったです。




