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17/22

絵美 シャーロットタウン

今日はゆっくりと・・。

 四日目(金)曇り・風が強い


昨日のピーカン晴れが嘘のよう。今日は空が厚い雲で覆われている。

ゆっくりと起きて、ブレックファーストルームへ行く。昨日とは違い、部屋の中は子どもを連れた家族や若い人たちで一杯だ。昨日真っ黒けになっていたフレンチフライポテトが、今日は普通のポテトの色をしている。これは料理人が用意しているのではないらしいなと見当がつく。汚れたお皿を運んでいる早番のスタッフがいつも一人いるが、この人たちが自分で準備しているのだろう。ここの朝食を三回食べることになるのだが、若い男の子が当番だったこの日の料理の焼き加減が一番うまかった。


部屋に戻ってからも、ベッドでゆっくりしながら今日の自由行動の観光予定を立てる。今までが慌ただしかったので、今日はのんびりとシャーロットタウンの町(?)を散策しようということになった。

十時頃にホテルを出る。アンの物語の中では大都会のように書かれているシャーロットタウンの町も私達から見ると鄙びた田舎の村に近い町に見える。キャベンディシュ(アボンリー)は今でも本当に何もない所だったので、モンゴメリーが生きていた当時はもっと店も何もない田舎だったのだろう。そこに住んでいる人から見たら、シャーロットタウンは途轍もない町に見えたのだろうな。


まずは海沿いのウォーターフロントに向かって、カラフルにペイントされた家々を眺めながら町の中を歩く。風が強くて寒いのでダウンジャケットを出して着る。旅行中でこの日が一番寒かった。しかし途中の公園ではチューリップが色とりどりに咲き乱れていて、こんなに寒いけれどこの地では今は春なんだろうなと思わせてくれる。歩いていると歩道に引き出しがいっぱいついている一回り小さな自動販売機のようなものがある。これは郵便の受け取り所らしい。ここでは郵便はアパートのように集合配達されるそうだ。


ウォーターフロントに来てみると何件かの店が立ち並んでいたが、寒いせいか人がほとんどいない。店の人たちもマイペースで、自分がトイレに行ったり所要を済ませるために出かける時には店を閉めて鍵をかけて出かけている。今日はもう休みなのかと思っていると、何分かして帰ってきて平然とまた店を開けている。日本では考えられないのんびりさかげんだ。


世界一美味しいアイスクリーム屋さんに選ばれたことがある「COWS」という店もあったので、寒いけれど食べてみることにする。ここは注文するとコーンを目の前で焼いてくれるのだ。中国人のアルバイトのお姉さんが焼いた平べったいコーンを不器用にコーン型に巻き付けて、アイスクリームコーンを作りそこにアイスをスクープですくって入れてくれた。フミくんは「プリンスエドワード島ラズベリーアイス」私はこのアルバイトのお姉さんお勧めの「キャラメル・チョコチップバニラ」にした。

フミくんのアイスは濃厚なミルクの味がする爽やか目のストロベリーアイスという感じの味で、私のアイスは一口目から甘さに衝撃を受ける癖になる感じの味だった。コーンは焼き立てなので確かにサクサクして美味しかった。


アイスを食べ終わって、ここで綾香や麻巳子たちのお土産も買っていくことにする。海賊をテーマにした服飾雑貨の店があったので入ってみると、なんと昨日のアンツアーで一緒だったトロントの女の子二人にばったり出会った。まさか再び会うことになるとは思っていなかったので、大興奮で今日の予定やお店などの情報交換をした。

「私達はビクトリア公園に行って、帰りにここに来たんですよ。きれいな景色でした。お姉さんたちは?」

「私達はこれからビクトリア公園に行く予定なの。さっき食べたんだけどヨーコさんが言っていたアイスが美味しかったよ。」

「わぁ、それも食べに行こうと思ってたの。ここにもあるんですか?」

「うん。繁華街の通りだけじゃなくてここにもあるみたい。」

二人は早速アイスに挑戦してみると言うのでここで別れたのだが、ご縁があるようなのでまた会うかもねと言いながら「さよなら。」じゃなくて「またねっ。」で別れる。その後は会っていないのだが、あの二人は今頃どうしているだろう。


ここの海賊の店で、綾香や麻巳子のTシャツをお土産に買う。フミくんは帽子が置いてあるところで暫く物色していたが、「これ買ってもいい?」と持って来たのはあのナイアガラで無くしたのと同じようなキャップ帽だった。余程、未練があったのね。大笑いでこの帽子も購入した。


リュックサックにお土産を詰め込んで、ビクトリア公園に出発だ。

途中、ダイアナの大おばさんの家に似ている家もあったので写真に撮った。アンはクイーン学院に行っている時にこの道を歩いたかしら・・。もう一度お話を読み返したら、この旅行で見て来た景色が頭の中に広がるような気がする。


海沿いにある公園に近付くと朝のジョギングをしている人たちとすれ違うようになった。「グッモーニン」「ハァーイ」通りすがりにお互いに声を掛け合う。こういうところはうちの田舎とよく似ている。でもこのジョガー達は皆ランニングシャツで走っている。・・・体感温度の違いに愕然とする。

前方に私達と同じようなダウンジャケットを着た五人のおばさまの集団がいた。道を渡るために立ち止まっていると、通りを走っていた車がすぐに止まってくれる。カナダでは人の横断が優先なのだ。「わー、止まってくれたっ。カナダ人、優しいー。」と賑やかに渡って行かれたので、日本の人たちだったらしい。


地図によるとおばさまたちが出てこられた方向にビクトリア公園があるようだ。

道を曲がると、広い遊歩道のついた湾岸道路がありその道沿いがすべて公園になっていた。手前にある緑に囲まれた大きな建物は、カナダを統治している副総督の家らしい。なかなか立派な家だ。ここもホワイトなハウスである。


湾の向こうにある家々がカラフルでおもちゃの国に紛れ込んだみたいに感じる。遊歩道に設置さているベンチに腰掛けて、しばしの休憩だ。かなり歩いたので足が怠くなってきた。これから繁華街まで歩いて昼食にする予定なので、ここで英気を養っておかないと・・。フミくんはアウトドアに慣れているので、平気な顔をして湾岸沿いの綺麗な景色をビデオに収めている。波の音のする公園って素敵だね。しかし海風が寒い。ビデオ収録が終わったので、街に戻ることにする。


舗道の真ん中に深い森に生えているような大きな木があったり、家々の庭は法律で決められている芝生になっているし、目に優しい街並みだ。建物も高いビルなどはなく、大きくても三階建てだ。

繁華街と言っても両側に店があるだけで、五月蠅い音もしていない。静かな佇まいだ。「すしレストラン」というのがあったので入ってみる。・・・しかし中は中国風。案の定店員さんたちは中国語らしきものを喋っている。私はアボカドの巻きずし、フミくんはNABEうどんと書いてあるものを頼んだ。


「これ寿司って言っていいと思う?」

フミくんにも食べてもらったが、油粕のようなものが少量のアボカドと一緒に入っていて、油っぽくて食べられない代物だ。フミくんの鍋うどんは、鍋でも何でもない普通のどんぶりで出て来た。ムール貝やイカなどが入っている野菜海鮮うどんといったところだ。「キュウリが入ってる!」とフミくんが驚いていたが、なかなか斬新な取り合わせのようだ。海鮮の出汁が出ているのでお汁の方は美味しかったが、これを日本料理と思ってもらっても困る・・・。潔く中華を出せばいいのにどうしてこういう可笑しなことをするんだろう。首をひねってしまう。味と言うよりも海外ならではの驚きを味わえた昼食だった。


近くに本屋があったので行ってみる。

品揃えが良くて眺めているだけでも楽しい。奥の方には塗り絵のコーナーが作ってあった。こっちでも大人のぬりえが流行っているんだね。フミくんが「絵美、こっちに来てみて。この奥の方が凄いことになっている。」と言うので行ってみたら、最奥の方で商店街が繋がっていてアウトレットモールのようなビルの一部になっていた。何だこりゃの展開である。魔法の町に紛れ込んだような気分だ。


急に最新式になった商業ビルの中にサンドイッチやサラダを売っている店があったので、そこで夕食を買って帰ることにする。お姉さんが「このソースは美味しいわよー。」と言って勧めてくれたバルサミコ酢のドレッシングもつけてもらった。フミくんはがっつりとローストビーフのサンドイッチを選んでいた。さっき食べたばかりだけど、肉は正義なのよね。


ホテルに帰って、ベッドに横になったと思ったらうとうとと寝てしまっていた。夕方に目が覚めたので、「フミくん、赤毛のアンのミュージカルを見に行く?」と声を掛けたが、フミくんも軽い鼾をかきながら爆睡していた。私も疲れていたので、また寝てしまった。


二人とも夜中に目が覚めて起きだして、買ってきていたサンドイッチと日本から持って来た味噌汁を作って夕食にする。サンドイッチはハーブが大量に入っていたので、変わった味。バルサミコ酢も本当にすっぱい。でも、味噌汁は美味しかった。私は普段あまり味噌汁を飲む方ではないのだが、じんわりと染み渡るインスタントの味噌汁の味は、この旅行中で一番美味しいと思った食べ物だった。私ってやっぱり日本人なのね。


フミくんはアンのミュージカルに行けなくてごめんと気にしていたが、お互いに疲れて寝ていたのだからこれで良かったと思っている。ここまで怒涛の観光をしてきたので今日は良い骨休みになった。夜中にテレビを観たりフミくんとゆっくり話が出来て、よい気分転換ができた。





疲れが取れてよかったですね。

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