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絵美 ロブスターを食べよう

赤毛のアンツアーの後半です。

 昼ご飯を食べるためにシーフードレストランに行く。

ツアーメイトたちは、ヨーコの説明もそこそこに皆、紙のエプロンをよだれかけのように首につけて臨戦態勢で茹で上がったロブスターを見つめている。ヨーコが七歳から十歳もののロブスターだと言っているが、自分の顔より大きなロブスターにみんな顔が笑っている。先が二股にわかれたロブスター用のフォークでみを取り出す。何もソースをつけずに一口そのみを食べるとぷりぷりしてて甘くておいしい。今の時期はプリンスエドワード島のあるカナダの北海岸がロブスター漁を許可されているそうなので、新鮮なものを食べられたようだ。私はカニは三杯酢だよねっと思って、日本から三杯酢を作って持って来ていたのでよりおいしく頂けた。満足である。私の用意の良さにみんな感心して笑っていた。一舐めずつ皆さんにもお裾分けする。現地では溶かしバターに浸けて食べるのが基本なので、フミくんは郷に入っては郷に従えで断固として溶かしバターで食べていた。こういうところは頑固な人なのだ。


私は付け合わせのポテトにそのロブスター用のバターをつけたのだが、なんとも水っぽい。北海道から来た女の子が、「みなさん、ポテトには胡椒をかけるといいですよっ。」と教えてくれたので、みんなそれに従う。確かに塩だけの時より味にアクセントがついて食べやすかった。ただニンジンとビーツはぐちゃぐちゃドロドロで味もなく水っぽいだけで何とも食べられた代物ではなかった。申し訳ないが残させて頂いた。

多分野菜の方は去年の秋から冬越しをしたものなので、繊維が凍った末に破壊されていたのではないかと推察する。


昼食の後は、またマイクロバスに乗り込みモンゴメリが生まれた家へ向かう。道中、カナダグースの夫婦が五、六羽のヒナを連れて歩いていたり、リスが道を横切ったりして、皆で声を上げて写真を撮りながら旅は続く。車窓には赤土の耕されたばかりのジャガイモ畑が続いている。ジャガイモは連作を嫌うので、広い畑を三等分して順繰りに休耕させながら作るらしい。


バースプレイスと大きな看板が掲げられた家は、とても小さな家だった。モンゴメリが寝たゆりかごがある隣の部屋には結婚式で着たウェディングドレスもあったりして感慨深い。

ここで誕生にちなんで「赤毛のアン」の初版本の復刻版を買うことにする。「もう私は一生でこの瞬間が一番幸せですっ。」と思わずレジのおばさんに叫んでしまった。おばさんは私の勢いにたじろいでいたが、「良かったですね。この島に来てくださってありがとう。」と言ってくれた。


次に向かったのがフレンチリバーだ。湾岸沿いの家や漁師小屋がカラフルにペイントされている景色が美しいことで有名な場所だ。

「この景色は僕らの部屋にあるジグソーパズルの絵と一緒じゃないかっ。」

フミくんはあの景色がプリンスエドワード島のものだとは知らなかったようだ。いやに興奮している。

ここでツアーメイト全員の集合写真を撮った。みんないい笑顔で写真に納まっている。風が強かったが、緑の草原に黄色い花が一面に風に揺れながら咲き誇っている。青い春先の空に薄く白い雲がたなびいていた。


ここで写真を撮るために車を停めた場所は、アメリカの大金持ちであるホステスターさんという人が無償で提供してくださっているそうだ。この人は一年のうちに一週間ほどこの地に休暇で滞在するために広大な土地と家を所有しているらしい。道沿いに車を停めてこの美しい景色を写真に収める観光客が後を絶たないことから「危ないから、うちの土地の一部を均して駐車場を作ってあげるよ。」と広場を作ってくださったそうだ。なんとも太っ腹な話である。まるで何かの物語のような話だ。事実は小説より奇なりである。


バスは次にシルバーブッシュに向かう。

ここはモンゴメリのおばさんの家で、モンゴメリはここで結婚式を挙げて、新婚の二か月をこの家で過ごしたそうだ。モンゴメリの従妹の孫であるパム・キャンベルさんが現在この家に住んでいる。この家の庭の向こうにアンの物語の中に出て来る「輝きの湖」のモデルになった池がある。シルバーブッシュの居間の窓からこの池の水がキラキラと陽光に輝いているのを見ることが出来た。


この家は半分がモンゴメリ博物館のようになっていて、モンゴメリが作ったクレージーキルトやドレス、直筆の手紙などが飾られている。新婚の時に使ったベッドを見た時は不思議な気持ちになった。まさかモンゴメリも自分が死んだ後にこういう品々の展示があるとは思ってもみなかっただろう。ここでフミくんが興味を示したのが、重さが14kgもある女性の力では持ち上げられない正味鉄のアイロンと、マスタッシュ(口ひげ)がある人専用の髭を乗せられる場所の付いたティーカップである。「人間というのは究極の道具を作りだすもんだねぇ。」と感心していた。私が感動したのは居間に置いてあった当時から動き続けているという時計である。時を刻むということはどういうことなんだろう・・・と深淵なる思考に嵌りそうになった。


この場所を舞台にした「パットお嬢さん」というアンとは別のシリーズがモンゴメリによって書かれているので、ここでは「パット・オブ・シルバーブッシュ」の本を買う。これにパムさんがサインをしてくれた。「フミヤとエミ、私達の家を訪れてくれてありがとう。」というサインだ。そして、シルバーブッシュの家のハンコを押してくれた。嬉しくてパムさんにその感動を熱く語っていると、「絵美は英語が上手だけど、どこで勉強したの?」と聞かれたので、「アンが私の先生なのです。」と言うと、とても喜ばれた。


最後にブライトリバー駅のモデルになったケンジントン駅に行く。駅の中がお店になっていたので、フミくんがここでお酒を買った。カナダではどこでもお酒が買えないので、こういう機会でもないとビールなどが手に入らない。「大草原の家」のローラのお母さんもお酒を嫌悪してたので、宗教的なものなのだろう。

プリンスエドワード島には今はもう鉄道が走っていない。駅の前にポツンと残っている短い線路の上にはタンポポが咲いていた。




ここには書きませんでしたが、結婚式の当日に新郎にふられたというモンゴメリの親戚の女の人の長持ち(ドレスなどを入れていた物入れ)が、本の販売台になっていたりして・・・本当に事実は小説より奇なりですよね。

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