さよなら「ジャイロダイン」
小学校の卒業記念企画で、クラス全員でスケートに行くことになった。山の中にある、屋外スケート場だった。
当日は快晴で、初めてだったが下手なりに十分に楽しめた。
そこの休憩所にゲームコーナーがあった。テーブル筐体がいくつか並んでいたのだけれど、その中に「ジャイロダイン」があった。そのきれいな青と緑のグラフィックが印象的だった。ファミコン版が発売予定であると知っていたけれど、ゲームセンター版があったろは知らなかったので、発売前に遊べる機会に興奮した。まよわずに100円を入れてプレイ開始。とはいえ、多分、企画のルールとしてゲームで遊んでいいのかは灰色だったのではないだろうか。
ゲームスタート。綺麗な大海原。自機も敵もかっこいい。操縦するだけで愉しかった。ミスった後の再開デモが上から画面が落ちてきて、それもかっこいい。とにかくかっこいいゲームだった。
あまりにむつかしいのですぐに終わったように思う。1人で遊んだので誰とも話をした記憶もないが。やっぱり1人だった。
時はすこし流れて、中学に進学して少したった春も過ぎたころだっただろうか。幼馴染のY君から電話があった。
「Kがジャイロダインを買った」
正直、すっかり忘れていたのだが、その一言でスケートの日のゲームを思い出した。
「やられたあと、上から画面が落ちてくる?!」
まっさきに聞いたのはそれだった。とにかくそこが気になったのだ。ゲームセンターからの移植だ。まず気になるのは、どれくらいゲームセンターに似ているのか、ということだ。ゲームセンター主義者のあきらめと期待が入り混じった気分だった。
「うーん? なんかそうみたい」
なんともあいまいな答えだった。結局、K君の家まで自転車を走らせた。
5分くらいだ。息せき切ってK君宅に上がり込む。K君とY君がいた。
そしてテレビにジャイロダイン。
なんか赤い……。青くない……。
初めて見たのは砂漠だった。そしてミスからゲームセンターと同じ再開デモ。
ゲームセンターと同じだ! それだけでうれしかった。しばらく2人のプレイを見続けた帰宅した。新しいカセットを貸してというのは無理だとわかっていたからだ。
このあと移植ゲームにはいろいろ考えさせられる事故が多いのだけれど、ジャイロダインはいい思い出となった。とはいえ、ゲームセンターで遊んだのはあの1回だけなので、徹底的に比較できなかったのもいい思い出の理由だろう。