第7話 春に
お盆は客がパないですね。ありがたいんですけどね……稼ぎ時だから。
おっと、今回は能力検証です。
俺の魂の叫びは、神には届かなかったのか、きっと前回のお話は変わっていないのだろうな。
くっ、やはり爽やかイケメンでなければ届かないのかっ……orz
閑話休題
では、俺のステータスについてだ。よし、上からツッコんでいくか?いや、きっと各々がツッコんでくれているのだろうか?俺はこのふざけた――モチロン悪い意味で――ステータスについてマスターさんに質問しなければならないのだ。
「マスターさん。これは……どうなっているのでしょうか?」
「あー、たまにあるんだ。『呪文』を聞いたろ?涼君の心の奥底に眠る情報、つまり、魂の情報を引き出すんだ。この世界にふさわしいものを。多分神が」
「つまり、私は田中涼ではなく。リョー=タナークトゥス……だと……」
「気にするな。こっちでは俺も石橋悠里ではなく、ユーリ=A=ブリ○ストンだ……なんか放送禁止用語じゃないのに著作権的なアレで、下手したら名前にモザイクが入りそうだろ?」
「……い、良いタイヤ作ってそうですね」
「まぁ……な……涼君も、頑張れば、ほら、タナトスだっけ?死の神みたい……だな……」
「……」
「……」
がしっと。俺とマスターさんは握手を交わし頷き合う。この気持ちはなんだろうか?俺の中に、目に見えないエネルギーが溢れる感じ。人はこれを怒りと呼ぶのだろうか?きっと、マスターさんもいつか神に反旗を翻すことだろう。なぜなら、これは自分の誇りをかけた聖戦なのだから。
「では、気を取り直して。≪種族≫もツッコミたいんですけど、もうそれはいいとしてですね≪魔核≫≪職業≫≪技能≫≪称号≫について教えていただけませんか?」
「ああ。この魔法を創って広めたのも、どうせ転移者だから、ゲームにある設定とそう変わらんと思うが。≪魔核≫はそうだな、その人が持つ魔核の大きさ、まぁレベルだと思ってくれたらいい。≪職業≫は簡単に言うとガチの職業と一緒だ。例えば、剣を使って生活するものは『剣士』と。この国の兵士で新兵なら『アストルダム兵:新兵』みたいに。昇進したら、成長するから結構楽しいぞ。涼君の『バイト戦士』は涼君だけの職業かもな。後で確かめてみるといい」
キターーーーーー!!ユニーク職業とかチート臭がするぜ!!プンプン臭う……匂うぜ。
「次が≪技能≫か?これは自分がどれほどその技能を習得しているか、または使用できるかを表すものかな。横に付いているアルファベットは、下から順にFからA、さらにS、EXとなっている。Fが初心者に毛が生えた程度、Eがひよっこ、Dが半人前、Cが一人前、Bが玄人、Aが天才・達人、Sが伝説級・英雄・超越者、EXが神ってところかな。最後に≪称号≫だな。こっちの人間は『祝福』なんて呼んでるな。これこそ、その者を表すものだな。例えば、俺なら『マスター』だな」
俺が最初にマスターさんを『マスター』って言ったのはこのせいか!?
え?しつこいうえに違う?知ってるよ!ばーか、ばーか!
「この宿の酒場で働いて長いからか、皆から『マスター』と呼ばれる。皆俺のことを『マスター』として認識している。俺も気づいたら称号が表れていた感じだな。他には、その人の生き様だったり、自分の魂の形だったりだな。正確には分かってないから、神からの贈り物となっている。偶に技能か能力にプラス補正が付いたものもあるから、これもまた面白いな。どうなってんだろうな?この世界」
おいおい。やっぱこれはチートなんじゃないか?俺≪称号≫持ちまくりだしな。ふははっはーはっはっはっはーーーーーーー!!!!!!笑いが止まらんよ。殲滅か?俺TUEEEEEE!!!!!か?また、二つ名が増えちまうぜ!!
いや待て待て。これを物語に例えるとしたら、今はストーリー序盤。そう簡単に力が手に入るのか?あのバスケ漫画のライバル校のイケメンも言っていたじゃないか「まだ慌てるような時間じゃない」と。
それに、それにだ。俺は経験してきたじゃないか。
『運命の出会いフラグ』だと思ったら『死亡フラグ』。
改造人間や高性能の義手で無双しようかと思ったら、魔王様にエンカウント。
これも期待し過ぎたら、またへし折る――否、回収することになる筈だ。三度目の正直?そんな言葉知らないな。二度あることは三度あるんだよ!フラグ回収に定評がある涼君だ。
そうだ。期待しないようにしないと。むしろ、「あげちゃってもいいさ」という気持ちが大事だ。冷静にだ。そう。KOOLにだ。すっきりメンソールだ。
「どどど、どうしたら。そ、それ分かりまちゅか?」
どうやら俺は落ち着きがないらしい。異世界に来てまた発見される新事実だ。
「ああ。まずそのスキルや称号を強く意識し『知りたい』と念じるんだ」
「やってみます!」
え〜っと、まずは一番しょぼそうな『異世界人』からだ。
む〜〜〜〜〜。
おっ!なんか頭に浮かんできた。
『異世界人』
ようこそ!『アヴァン』の世界へ。異世界から『アヴァン』へ来た者。
効果:
まあ、そうだな。こんなもんだろ。これに、なんかあったら異世界人がチートだらけだもんな。
次だ、次。
『バイト戦士』
バイトをして生計を立てている者。就職すると消える。戦士ではない。そう、戦士ではない。
効果:時給アップ補正。店長と要相談。
戦闘職じゃないのかよ!てか、なんで二回言った。大事なことだからか?ああん?
ただ、最後の時給アップ補正はありがたいな。今後のためにも。
くっ、まだだ。俺は負けない。次。
『孤高なる武士』
魂に刻まれた二つ名。あれは……中学二年の時だった。我は強さを求めた。そして、ひと振りの木剣に出会う。その魔剣は修学旅行で訪れた、宮島のお土産コーナーの一角で寝むっていた――
効果:
「やめてーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
それ知ってる!俺の黒歴史だから!購入したその後は、木剣片手に抜刀術(居合)の練習したり、素振りしてたんだよ。ひとりで!いや、独りでなっ!!
おっと、冷静になれ。まだある。俺にはまだある。次は、『仮面○イダー涼』だ。来い。
『仮面○イダー涼』
生死の淵より改造手術により復活を遂げる。人間を辞めた証。
効果:空高くジャンプしてから、一回転してキックした時にのみ攻撃力プラス補正。
使えるかっ!あほかっ!誰がこんな攻撃できるんだよ!てか、これそのまんまライダーキックじゃねーか!特撮か?いくらファンタジー世界だからって、俺の身体能力でできると思ってんのかっ!?
ええい!次ぃぃいいいいい!!
『真理を追いし者』
真理を追究する者。君は覚えているだろうか?死にかけになりながらも消そうとした、あの2テラバイトの情報量を……
効果:スキル『賢者タイム』が使える。
覚えてるよ!まさかとは思ったけど、俺のHDにあるフォルダ名が『真理を追いし者』だもんな。なんかこのスキルは使ってはいけないような気がする。
ラストぉぉぉおおおおおおおおお!!!!!!!
『賢者(笑)』
偉い人ではない。エロい人である(←ここ重要)桁外れの知識や見解、それを集め理解し、人に教え導いたりできる人、賢い人のことを賢者という。あっ、モチロンあっちの方の知識だね。
効果:スキル『賢者タイム』が使える。
「くっそがーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
俺の魂の叫びが酒場に響きわたる。
てか、スキルがカブっとるやないかいっ!
「どうだったよ?まあ、叫び声聞いたら分かるがな……」
「……少し泣きたい気分ですね。えっと、スキル?みたいなのが使えるらしいんですけど、どうやって使えるんですか?」
「ほう?スキルが付いた称号か。レアだな」
レアか?いや、このスキルって、きっと男なら誰でも持っているさ……
「スキルも同じように見れるぞ?」
「わかりました」
『賢者タイム』
ある行為の後、ふと冷静になる。まるで賢者の様に悟りを開く。同時に何か心になんとも言えない気持ちが残る。
発動条件:ある行為をするor発動を強く念じる。
やはりか!想像通りか!いや、だが……
「……使ってみます。『賢者タイム』」
まあ、今回の〆の言葉は皆さんも察しがつくだろうが。
「……この気持ちはなんだろう」
A:それは罪悪感だよ。