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第6話 君に届け

 俺とマスターさんはお互いに満足して宿屋の中に入ると、おやっさんがテーブルにご飯を並べていた。


「おら、お前ら朝飯だ。席に座って待ってろ」


 俺のお腹も思い出したかのように「ぐー」と飯を催促した。並べられた食事は、パン、オムレツ、サラダ、ウィンナーといかにも朝食のメニューだった。


「おしっ、じゃあ食うか?」

「「「いただきます」」」


 俺はまず、サラダを口にする。ドレッシングが野菜本来の味を殺すことなく、それで尚且つ絶妙な酸味を醸し出す。次にウィンナーを食べる。パリッといい音がして、そして口の中いっぱいに溢れんばかりに広がる肉汁。そしてパンにかぶりつく、その瞬間焼きたてのいい香りが鼻をくすぐる。今、口の中にあるウィンナーの肉汁と合わさり、俺の口の中では絶賛革命中だ。極めつけは、このオムレツだ。外見はふんわりとしていて、中は半熟でとろりとした食感を楽しめる。味は至高と呼ぶに相応しく、ケチャップなどを必要としない、これだけでいい。むしろ、他の調味料をかける事が侮辱であるかのようで、まさに完成された料理であった。


「うまいか?」

「うまいです。特にオムレツですが、今まで食べてきたオムレツの根本を揺るがしかねない美味さです」

「そうか、まだあるが食うか?」

「え?あ、はい。是非いただきます」


 俺は、いつの間にか無くなっていたお皿に目をやり、おやっさんからおかわりをいただいた。三回ほど。







「ごちそうさまでした」

「おう、良い食いっぷりだったな」


 俺は必死に食い過ぎたのか、おやっさんはもう厨房に引っ込んでおり、酒場には俺とマスターさんだけだった。マスターさんはコーヒーカップを持っており、そのまま持っているカップを上げ尋ねてきた。


「コーヒー淹れたが飲むか?」

「ええ、いただきます。コーヒー好きなんですよ」


 俺はマスターさんからカップを受け取り、鼻に近づけ匂いを嗅ぐ。まず華やかな香りが鼻をくすぐる。次に口に含むと柔らかな酸味、きめ細やかなコク、長く続く後味。とても上品な味わいだった。


「これは!凄い!」

「ほう?このコーヒーの味が分かるか?このファンタジー世界で、コーヒー豆を集めるのには苦労したんだ」

「ええ。初めて会った時に言いましたが、私は喫茶店で働いていたんですよ。そこでコーヒーの味と淹れ方の勉強もしていたのですが、これは……素晴らしいですね」

「まぁ、人によってコーヒーの好みも変わるからなんと言えんが、やはり同業者に褒められるのは悪い気はしねぇな」


 マスターさんもご機嫌になり俺もこんなに美味い食事が食べれて、コーヒーが飲めてご機嫌ですよ。WIN−WINの関係というか、俺の一人勝ちだな。てか、この人たち本当にすごい。おやっさんの料理、マスターさんのコーヒー、共に高い技術が必要だろう。


「そうだ。魔法についてもう少し教えてもらっていいですか?」

「ん?なんだ、何が聞きたい?」

「先程使っていたのは、風の魔法なんですよね?」

「ああ、そうだが」

「他にも種類があるんですか?」

「そうだな、さっき俺が見せたようにひとえに魔法といっても属性や種類がある。代表というか最も多く使用されているモノが、火、水、風、土の四大魔法と言われるものだ。他にも光や闇、無といった属性や、種族特有の固有魔法、失われたとされる古代魔法などなど挙げていったらキリがないな」

「へーいろいろあるんですね?」

「まぁな。涼君もゲームのRPGやったことがあるなら、知っている魔法があるかもしれんな」

「えっ?まさか?」

「なんか魔法って、転生者か召喚された人が新しい魔法作っちまうからな。俺みたいに」


 あー、さっきのパンチラ魔法ね。


「あの、本当に今さらですけど、マスターさんや俺以外にも地球からの転移者っているんですか?」

「ああ、いるぞ。この街にも探せば結構いると思うぞ。というか、この街を作った勇者ってのが、地球からの転移者なんだよ。まぁ、正確には『勇者召喚』っていう誘拐の被害者だがな。だからかな?地球の転移者や転生者の多くが、地球が懐かしくてこの街に集まるんだよ。」

「……」


 どおりで、この街の『アストルダム』って名前、なんか聞き覚えがあったんだな。確かオランダの都市の名前だったか?なんか似たような名前があった気がするわ。

 

「じゃあ、最後に涼君のこの世界における力を見てみるか?これから何をするとしても、自分の能力を知っていて損することはない。こっちの世界に来て何か変化したかもしれんからな」

「おお!」


 これは期待できる。なんたって今の俺は改造人間。俺の中に眠っていた真なる力が……フッ、ついつい中二病(持病)の発作が。


「まあ、いきなり『全ての力』を使えないと思うがな。とりあえず、いくぞ?『彼の者の力、彼の者の魂、彼の者の全てをここに』開け≪情報開示ステータスオープン≫」


 マスターさんは俺の額に手を添え、今後を左右する魔法を唱えた。すると、俺の頭の中に自然と浮かんできた。





≪名前≫ リョー=タナークトゥス

≪種族≫ 人造ライダー(多分人間)

≪性別≫ 男

≪魔核≫ アラウンドサーティ

≪職業≫ バイト戦士、料理人

≪能力≫ 魔力:お前、使い方わからんだろ?

     筋力:貧弱貧弱ー

     敏捷:ふっ、やはり犬には勝てぬか……

     器用:自分不器用っすから

     精神:豆腐のほうがまだマシじゃね?

≪技能≫ 調理C、主夫C、剣術E、武術F、魔力回復E

≪称号≫『孤高なる武士もののふ』『賢者(笑)』『真理を追いし者』

    『仮○ライダー涼』『異世界人』

≪装備≫ 魔義眼、魔義手、魔義足、翻訳の指輪、庶民の服セット、革の短靴





「……」

「どうだ?」


 どうだ?と言われても。いろいろツッコみたいことが多すぎる。




 そうだった、忘れていたよ。言葉にしないと伝わらない気持ちや、届かない思いもあるんだったね。そうだな、あえて言わせてもらえるなら……







「こんな伏線回収は俺が認めねーぞ!!」












 俺は()への復讐を誓ったのだ。




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