表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/38

第36話 帰りたくなったよ

だいぶ間が空いてしまいました。

すいません。

大丈夫です。エタりません。

へタレるだけです。

 麻雀。それは中国を起源とし、世界中で親しまれる牌を使った4人用のテーブルゲームである。

 牌は34種類ある。萬子、筒子、索子が1〜9まであり、字牌が白、發、中、東、西、南、北とあり、これらは各4枚ずつあり、計136枚からなる。

 簡単に説明すると、牌を14枚『役』と呼ばれる決められた形に揃え、点数を競い合う。難しい『役』程点数が高い。そして、それを何回か何十回か繰り返し最終的に自分の持っている点数の高かった人の勝ちというゲームだ。


 まぁ『ドンジャラ』や『ポンジャン』を凄く難しい複雑な難しいゲームみたいなものだ。本当は逆なんだけどね。やべっ、あれ久々にやりたいかも。ネコ型ロボットのやつとか朝娘のやつとかさ。


 とまぁ、簡単に説明をいれて見たのだが、今回のルールは半荘アリアリ一人25000点の持ち点で開始した。メンツは俺、おじさん、クロ、ディーラーさんだ。

 意味が分からない人には、呪文に聞こえるだろう。詳しいルールが知りたい人はggるといいよ。今の時代は妖怪もggるらしいからさ。

 俺?俺は女の子を裸に剥きたいが為にルールを覚えた紳士(おとこ)だ。こう見えて超強いんだぜ!……って思う時期が俺にもありましたよ。


 そして、あっという間に最終局。


 今の段階でトップがおじさん、次にディーラーさん、クロ、俺の順だ。ちなみに今俺の持ち点は……100点だ。リーチすらできないよ。なぜだ!どうしてこうなった!?


 まぁ、その理由は簡単だったんですよ。もうね、完璧に遊ばれましたよ!圧倒的だよ!

 なんだ?俺の牌透けて見えんの?それとも、どこぞの麻雀大好き女子高生たちのような特殊能力持ちか?上手い事点数調整せれて100点で最終局だよ!畜生め!

 クロはルールをあまり理解せずに打っているが、動物的本能か絶対に振り込まない。ディーラーさんは堅実に打っている。

 俺は来た牌によって読まれないように、戦略を変えダマとかひっかけとかしてみるが、それを嘲笑うかのように、おじさんが俺から直接点数をかっさらっていく。

 もうね、この生かさず殺さずって感じをおじさんは楽しんでいるらしい。

 あの柔和な雰囲気に騙されたよ!あの人ドSだよ!絶対!

 くそっ!ゾクゾクするじゃないか!


 そうして、この最終局面オーラスで俺が親だ。つまり、ボーナスタイムだ。

 こうなったら最後の悪あがきで小さく上がって、できるだけおじさんから点数をむしり取ってやろうと思ったんだが、どうやらここでも俺の出番ではないらしい。


「にゃ!?ご主人のでロンにゃ!見て見てご主人!そろったにゃ!」

「……次はお前か。どれ見せてみろ」

「にゃははは!とっても綺麗にゃ!」


 クロが牌を倒すと同じ種類の牌が3枚、4セットずつ、そして今俺の捨てた牌で頭となるものが揃う。これは――


「四暗刻単騎!ダブル役満だと!?」

「にゃ?それは何点ぐらいにゃ?」

「うん。もうなんていうかこの勝負お前の勝ちってくらいすごい点数だな、本来ならな……そして、俺はトビですよ〜っと」


 今回のルールでは出ると思っていなかったのもあって、ロン上がりの四暗刻単騎スータンは無しだった。だが、それでも役満だ。俺がクロに払う点数は32000点。俺にそんな点数あるはずもなくトビ、つまりゲームオーバーだ。

 簡単に言うとオーバーキルだ。とっくに俺のライフはゼロよ!と杏子ちゃんじゃなくても叫びたくなる状況だ。


 俺は最近気付いた事がある。

 どうしてもその事を認めたくなかった……のだが、認めざるをえないだろう。どうやら、俺はギャンブルが弱いらしい。そして、『運』というモノが無いらしい。それも致命的に。

 地球でギャンブルした時も、まだ、いける。まだいける、まだいける、まだいけるまだけるまだいける……マイケルッ!って言いながら、結局は負けまくるというぐらいの運と実力の持ち主だった。

 大丈夫。今のは口に出さなかったらスベッたことに入んないよねっ!ドンマイケルだ!

 

 くっ!認めようではないか。自分はギャンブルが弱く『運』を持っていないことを。

 人は負けを認め、それを受け入れ、それを乗り越えた時に成長していくんだ。

 とか、いい話っぽく自分の中で完結させようとしていたら、声がする。


「私の勝ちだね?」

「……そのようですね」


 あーそうですよ。完全にしてやられた。絶対強いと思ったけど、まさかここまで遊ばれるなんて。クロの役満があっても一位って何それ?クソゲー?


「では、十分楽しんだことだし、そろそろ君の持っている荷物をいただこうか?」

「え?いえ、これは……ある方に渡すように言われた物なので……」

「はっはっはっ!そういえば、まだ名乗って無かったね」


 そう言い、おじさんは自分の前髪を両手でかき上げオールバックにし、また微笑む。


「では改めて、私の名前はヴィートという。ここらの若い者は、私の事を父親の様に思ってくれるのか『ファーザー』や『ボス』や『ドン・ヴィート』と呼ぶよ」

「え?えぇぇええええええ!?」

「はははっ。改めてようこそ!我がカジノ『BATTA COOL』へ!!楽しんでくれたかな?涼君。君の話はあの(・・)マスターから聞いているよ。よろしくお願いするよ」


 おじさんは初め会った時のように、にこりと笑い戸惑う俺に手を差し出した。

 やられた。俺がおつかいを放り出して遊ぶことまで予想してたのか。また、俺はあのおっさん(マスターさん)の掌の上で踊っていたようだ。


 でも、良かったよ。ファーザーことヴィートさんがめちゃくちゃいい人でさ!


 俺が頭の中でも外でも、パニックで呆然としていると、突然横から声がする。


「おいっ!いつまで呆けている!ボスが手を出しているだろう!」


 その怒鳴った人は対面に座っていたディーラーさんだった。先程の柔らかい雰囲気はなく、表情からは怒りが滲み出ていた。


「あっ!ええ、すいませ――」


 我に返り謝ろうとした時、遮るようにバァンと俺の隣から、まるで銃声らしき音がし、どさっとディーラーさんが倒れた。


「おい、お前はいつから私の客人に意見できるほど偉くなった?」


 その銃声らしき音の後に低く重い声がした。

 先程までのファーザーとの声色と違ったので一瞬ファーザーが言っているとは気付かなったぐらいだ。ファーザーの右手には銃の形をした物が握られており、その先端から煙のようなものが出ていた。

 

「…………」

 

 俺は驚愕してファーザーを見ていると、銃のような物を撫でながら困ったような顔をして、俺に謝ってきた。


「いや、すまないね、涼君。うちの若い者にはしっかり教育した筈だったんだがね。どうもまだ、礼儀を知らないのだよ。こんなのでも息子のようなものなんだ。これぐらいで許してやってくれると嬉しいのだが……どうかね?」

「……いえ……こ、こちらこそ……お互い様ということで……」


 もうね、この言葉をひねり出せた俺を褒めてやりたい。

 マジ怖すぎ!これがあっちの世界なのか?というか、銃で撃たれるより酷い罰って何?

 コンクリか?埋めちゃうのか?沈めちゃうのか?それとも、舗装工事しちゃうのか?

 

「そうか、そうか。ありがとう。だが、ここはひとつ別に何かお詫びをしておこうか……どうだね?この後、時間があるのなら私が経営する風呂屋・・・にでも?」

「そ、それは!?ま、まさか、その風呂屋・・・というのは……そういう(・・・・)お店ですか?」

「まぁ、そうなるね」


 ここで俺は先程まであった恐怖心など無くなり、ピンク色のことで頭が埋め尽くされた。

 いやほら、ね?こういうお付き合いは大事だよね?ボスが直々に誘ってくれているしさ?お付き合い、お付き合い!!


 俺は椅子から立ち上がると、ファーザーの前で胸に手を当て、地面に片膝を立て、頭を垂れこう言うのであった。


「どこまでも貴方について行きましょう、ドン・ヴィート!」




 欲望に素直な自分が……誇らしいぜ!






 こうして、俺はファーザーについて行こうとした時、急に首飾りがブルブルっと反応した。俺はファーザーに断りを入れ、少し距離を置き首飾りに魔力を送る。


「はいはい、こちら涼です」

『おう、涼君。首尾はどうだ?』

「丁度『ブツ』をファーザーに渡したところですよ」


 通信はやはりマスターさんだった。

 もう何さ?見てたの?

 こちとら、今から至福の一時を過ごす予定なのに。


『そうか、なら一度宿に戻ってくれんか?』

「いや〜それは~~」

『ん?何か都合が悪いのか?』

「えーっと、まぁなんといいますか……ええ……」


 俺はつい口ごもってしまう。まぁ、ほらね?

 今からシケコモウとしていた時にこの呼び出しだ。正直、おっさんしかいない宿になんて帰還なんてしたくない訳ですよ。


『そう……か……今、アテナが……いや、気にするな!悪かったな!』

「え!?なんですか?アテナちゃんがどうしたんです?気になるじゃないですか!」

『ああ、まぁ涼君には伝えておくべきかと思ってな。よく聞けよ?アテナが……アテナが今メイド服を――』

「今すぐ帰ります!!」


 俺は前言を撤回して、マスターさんの言葉で俺は条件反射のごとく返事を返す。俺には『アテナちゃん』と『メイド服』この2単語だけで帰るには十分な理由だった。

 俺の心からもう邪な思いは消えた。

 そして、思うのはただ一つ『帰ろう、我が家に』と。


 俺は通信を切ると、直ぐにファーザーの元へ向かい頭を下げた。


「申し訳ありません、ドン・ヴィート。誘っていただいた事は大変嬉しく思います。ですが……ですが!悔しいことに、至急帰らなければならなくなりました」

「ああ、話は大体分かったよ。気にすることはない、帰るといい。風呂屋(例の件)はまたの機会にでも」

「ええ、是非!!」


 俺はファーザーと握手して別れを告げる。


 そして、俺は歩き出す。

 カジノを出て北区の人混みをくぐり抜ける。

 焦る気持ちを必死に抑えるが、歩幅は次第に大きくなり、ついには走り出す。



 今、帰ります!




 君が待つ家に――












 あっ!クロをカジノに忘れてきた!







クロ「ご主人?お風呂屋さんって何かにゃ?」

アテナ「お兄ちゃん、なーにー?」

涼君「……せ、銭湯の事かな~?(震え声)」

マスター「ああ。それはな、ソー」

おやっさん「教育的指導(物理)!!!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ