第1話 ラブストーリーは突然に
この作品は下の前書きにある通り、少しばかり悪ふざけを含む『紳士淑女』向けの作品です。合わないという方は、ブックマークに登録してから戻るボタンを……
おっと、すいません。思わず欲望ががががが <(_ _)>
「しょ、処女だもん!」ということで処女作になります。皆さんお分かりいただけると思いますが『初めて』なので色々と拙い所もあると思いますが、優しくして下さいね?
では、どうぞ!
ラブストーリー。
それは心ときめく愛の物語。
それを語るには『運命』のような出会いが必要だろう。
まるで、はじめからその人に会うために生まれてきたのだと。
そう思うほどの出会い方が。
――この話はそんな恋に憧れ夢見る純粋な女性と
ちょっぴりエッチで馬鹿な冴えない主人公を描いた物語だ――
すいません。嘘です。
青春をするには年をとり過ぎた気がしますよ。
でも、運命の出会いには遭遇したいのは本当ですよ。
あーどうも。はじめましての人は、はじめまして。
お久しぶりの人は、ちーっす。
とりあえず、自己紹介からしておきましょうか。
我が名は、リョー=タナークトゥス。
階位はアラウンドサーティ。
孤高なる武士である。
あ、すいやせん。また、ウソでげす。
ふひひ。さーせん。
では改めまして、俺の名前は田中涼。
年齢は四捨五入したら30歳、25歳、34歳かもしれないね。
嗚呼……年は取りたくないものだ。
まだ『おにーさんだよっ♪』と言い張りたいお年頃だ。
職業はアレだ。アレだよ!
自由を愛し貫く者……うん……バイト戦士だ。
俺の勤め先は、自宅から徒歩15分と割と近い所の喫茶店で、そこで日々お客様に料理を作っている。
大学生の頃バイトをしていた店で、就職活動の為と卒業論文を理由に一度辞めたが……もう一度バイトをしている。
理由は学校を卒業はできたものの就職活動に失敗して、お金なくてそのまま……ねっ。
後は察して。皆なら簡単だろ?
ずっとバイトでキッチンをしてきたこともあり、調理師免許も取ったし、経験積んだし、金も貯まってきた。
これはそろそろ自分の店を出してやろうか?なんて甘いことを考えていた、今日この頃。
――突然、俺のラブストーリー(笑)が始まった――
えっ?そんなこと聞きたくない?
そんなこと言わずに!ちょっとだけ、ちょっとだけ話を聞いてほしいだけなんだ。
うん。すぐ終わるさ。
まぁ、よくある話かもしれないけどさ。
ほ〜ら、そこにあるベッドに寝転んで、天井の染みを数えているだけで聞き終わる程度の話さ。
あっ、待って!行かないで!
本当にちょっとだけ。先っぽだk……
今思うと、朝からツイていなかった。
どこか俺の行動がおかしかったのは、テンションが上がり過ぎているせいだろう。
きっとそうだ。もしくは、何もかも神のせいだ。
まあ、言いたいことはホントいっぱいあるけどさ。
一言だけ言わせてもらえるならさ……
とりあえずは『現実は小説よりも奇なり』だ。
○●○●○
ただいまの時刻8時20分。
「ぬぅああああああああああ!!マジか!?後一分じゃん!お前ならまだやれるって!頑張れよ!根性見せろよ!もっと熱くなれよぉぉぉおおおおお!」
朝、いつも甲高い声で起こしてくれる、マイスイートハニーこと目覚ましちゃんは、7時29分で針を止めていた。
我が麗しの君は、かまってちゃんなのかしら?
起きるはずだった時刻7時30分。
バイト開始時間8時30分。
後、10分しかない。
これ即ち……このままでは遅刻だ。
「くそっ、なぜ今日に限って……今日はマズイ。マジでヤバいって。店長に殺される……」
今日は休日で普段より忙しい。
更に、今日は昼から団体さんの予約があり、夜には結婚式の二次会となる予定だった。
予約いっぱい胸いっぱい。
想像しただけで泣けてくる。
「いや、昨日の夜のうちに仕込みはある程度したから……まだいけるか!」
そんな希望的観測をしながら準備を始める。
今までにない素早さで着替えを済ませる。
急いでいた為か、着替えと準備をしていると、タンスの角に足の小指をぶつけ悶絶し、タンスの上に乗っていた小物が散らばるといった、ベタで悲惨な出来事だった。
そこで終ってくれたらまだ良かったのだが、極めつけは、落ちた小物を回避しようとした際に、友人からもらった誕生日プレゼントの有田焼のコーヒーカップを割ってしまったのだ。
泣きそうになりながらも、準備にかかった時間は5分だけだ。大切なものを失ったが大切な時間を得たはずだ……きっと、これが等価交換なのだ。
どれだけ俺を追い詰めれば気が済むんだ、コンチキショウ(死語)め。
ただいまの時刻8時25分。
アパートの玄関から出ると曇り空が広がっていた。
ひと雨きそうな空を「傘いるか?」なんて呟きながら、確認のために身を乗り出して、見上げると奇跡が起きた。
俺は、べちゃっと言う音と共に鳥の糞を顔面にかぶるという偉業を成し遂げてしまった。
やったねっ!べらんめい!
「いや、傘……がさ、いるかな……って。……いる……かなー、ってさ……」
再び家に入り洗面所まで行き、鏡の前の自分の姿を見た。
あーこれが巷で話題のレイプ目か。
とか、他人事のように自分の姿を見ながら、俺は瞳に色が戻るまで待った。
「くっそがーーーーーーーーーーーーー!!!」
と叫びながら、鳥の糞を取り除いた俺を誰が責めることができようか。
できる奴がいたらかかってこい。
まとめて相手になったらぁぁぁぁあああああああ。コンチキショウめ。
しかし、この瞬間俺の頭に天啓が舞い降りた。
そう、俺はこの時『あること』を思い出しのだ。いや、思い出してしまったというべきか。
『あること』それは以前俺が読んでいた、テンプレとギャグを詰め込んだ、学園モノの小説にこんな展開があった事を。
確か俺の記憶ではこの後、主人公は朝から起こる不幸にもめげずに、食パンを口に咥えながら登校するんだ。そして、道の角を曲がると運命の出会いを――
随分めでたい頭なのだが、ツッコミは受け付けない事にしておこう。
ただいまの時刻8時32分。
俺は遅刻を覚悟で、パンを焼きジャムを塗り、いつもはするはずもない食パンを咥えて出勤という暴挙に出た。
まさにやけくそだ。
てか、咥えるって単語にエロスを感じるのは俺だけなのだろうか?
おっと、話がそれたな。
俺は道路を全力で走る。
きっと、今の俺は周りから見たらおかしく見えるだろう。
分かっている、愚かだと。
知っている、滑稽だと。
だがそれでも、俺は信じているんだ。
これが天啓だと。フラグだと!
この機会を逃したら次はないと、そう思わずにはいられないのだ。
ただいまの時刻8時35分32秒。
人の目も気にしないで、全力でバイト先に走る。
ただただ、走る。
俺はもう一陣の風である。
途中で黒猫が横切るが関係ない。
靴の紐が切れるが問題ない。
そう!もうすぐで待ちに待った、運命の曲がり角だ。
ヤバいな!だんだん楽しくなる自分がいる。
新しい自分が勝手にデビューしてるぜっ!ひぃやっはー!
神よ!俺は会うぜ!会ってやるぜ!このフラグはいただいた!
まだ見ぬ運命の美少女よ!さあ、俺の胸に飛び込んでこい!
ほら、曲がるぜ!曲がちゃうぜ?
確かこの後のセリフは――
「遅刻!ちkおおおおおおおおおおぶううおおおおおおおおおお」
ただいまの時刻8時35分52秒。
その瞬間、右側から聞こえる轟音と、ものすごい衝撃が全身を襲った。
すると、まるで俺の周りの時間が圧縮されたかのように、ゆっくりと時間は流れた。
だが、意識だけはなぜだかはっきりとしている。
あれ?おかしくない?
え?何がって?
俺は宙に浮いているのだ。
そう、まるでコンビニの灯りに群がる蛾の様に。
喩えがおかしい?
いいえ、本当に舞っているんですよ、空を。
しかもこの時、俺の頭にはあの有名なラブソングが「あ〜のひ、あ〜のとき」と流れてる。
意味不明だ。いや、本当に分からないんだ。
今なら、彼の有名なポルナ○フ氏が言っていた、あの名言の気持ちだって理解できる。
ただいまの時刻8時35分54秒。
そうだ!そういえば、俺は運命の美少女とぶつかってこうなったのだったな!
そう思い出した俺は、この状況を脱出するために、意識だけを周りに向ける。
すると、視界の端に何かが見えた。
それは、残念なことに遅刻しかけの美少女ではなく、100キロを超える美少女でもなく、トラックの擬人化した萌え萌えの美少女でもなく、2トントラックだった。
そう、ただの2トンを超える鉄の塊だったのだ。
ただいまの時刻8時35分55秒。
OH〜!なるほどね!
これは世間一般で言うところの『交通事故』だね!
理解したよ……嗚呼、理解したとも。
こいつは……まいったな。
今日俺に起きていたフラグは『運命の出会い』じゃなくて『死亡フラグ』の方だったんだな……
ただいまの時刻8時36分。
キイーーーーーーッ!というブレーキ音が鳴り響く。
「きゃーーーーーーーーー」
「おいっ!やべぇって!」
「うわっ」
「きゅ、救急車!」
音が鳴りやまぬうちに、宙を舞っていた俺の体は地面に打ちつけられた。
辺りからは叫び声やら悲鳴が聞こえる。
俺の意識は朦朧となり、瞼が重く感じる。
急な眠気に襲われ、目を閉じる。
眠いんだよ。
そして、俺は意識を手放す――
――ところをインターセプトする。
死ねない。まだ死ぬ訳にはいかんのだよ!
いや、この傷だ。
右半分感覚ないし、このまま死んでしまうかもしれない。
だが、死ぬのは今じゃない。今じゃないんだ!
俺にはまだ死ねない理由がある。
これだけは……いや、せめて言葉だけでも伝えなければならない。
そして、俺はもう一度目を開くが、右側だけ真っ暗だった。
「大丈夫ですか!?」
「いや、あれもう無理だろ」
「うわ?事故なの?」
「すぐ、救急車が来ますから!」
どこからか声が聞こえる。
野次馬の声なのか?なにやら騒がしい。
助けてくれようとしているのか、俺の左隣にいる青年が必死に声をかけてくれる。
世の中捨てたもんじゃないじゃん。
良い人はやっぱりいるものだな。
俺は霞む視界で青年を見ながら『この人ならば俺の願いを叶えてくれる』そう、今日ハズレたばかりの俺の当てにならない直感は言っている。
俺は最後の力を振り絞り、青年に話しかけた。
「ごふっ、お、おれの……ぱ、パソ……コンの、ごふっ、でー、た、を……ケシ、消して……くれぇ」
ただいまの時刻8時40分。
……
…………
………………
俺はそこで、やっと意識を手放した。
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