第百十六話 ガルディ・フォン・スペルビア
つまらない。
そう感じる時が、幼い頃から何度もあった。
一流の物や人に囲まれ何不自由なく育ってきた俺は、優秀な成績と有能な部下を得て学園を卒業。そのまま絵に描いたような出世街道を歩み、若くして近衛騎士となった。その後もまた順調で、アラン様や陛下より王の離宮を任せられるまでの信頼も得た。
勿論、相応の努力はしてきたつもりだ。
実際、貴族としても騎士としてもその辺りの人間には劣らない自負がある。これで無能だったのならまた違ったのかもしれないが、生憎十分過ぎる資質を俺は両親から受け継いでいた。
それ故に、俺は本当の意味で困難や挫折を味わったことがない。
家柄、環境、家族、己の資質。どれを顧みても挫折や苦悩を味わう可能性が皆無なのだから仕方ない。正直、俺の人生は超楽勝だった。
これが戦時真っ盛りを生きた祖父や、復興に汗水を垂らした父の時代であったならそんなことを考える暇も余裕もなかったのだろう。しかし、生まれた時代もよかった俺は祖父のように命を懸けて戦う必要も、父のように寝る間も惜しんで駆けずり回る必要もなく、ただ毎日を無為に過ごすだけ。
目標も目的もなく生きる日々は、酷く退屈で。
贅沢なことだと知りながらも、俺は祖父や父が羨ましかった。
足を止めることなど許されず、我武者羅に英雄達の背を追ったのだと祖父は言う。
能力の出し惜しみや怠惰など許されず、毎日時間が足りないと思っていたと懐かしそうに父は目を細める。
辛い経験もしたが、その分沢山のものを手に入れたと二人はいつもいっていた。なにより、家族や仲間達と平和な時を噛みしめる二人はとても満ち足りた表情を浮かべていて、この上なく幸せそうだった。
恵まれた安穏な暮らしに不満はなく、国を乱したいと思ったこともない。しかし満ち足りた表情で過去を語る二人を見る度に、俺もそう生きたいと思った。
この人の為ならば命を賭してもいいと思う主君に出会いたい。
背を預けられる仲間が欲しい。
感動でも恐怖でもいいから心震わせる経験をしてみたい。
腹の底から、生きていてよかったと叫んでみたい。
贅沢な我儘をいっている自覚はある。
復興が一段落した平和なご時世とはいえ、未だ明日食べる物に困っている者達がいる。満足な教育を受けられず、成人前から汗水たらして働いている子供達もいる。下を見ればきりがなく、自身の生まれに感謝したことは数えきれない。
しかし人とは欲深いもので、衣食住が満たされれば今度は自己の存在意義を満たしたくなる。俺もそうだ。
家族、恋人、仲間、主君。なんでもよかった。
とにかく俺は、命をかけられるほどの何かが、この世を生きる意味が欲しかった。
そして訪れたあの日。
王城の敷地内の一角で青白い光を放つ、セルリー様がお書きになった巨大な転移陣。魔王の転移中に不備がないよう、魔法陣を取り囲む数多の騎士と野次馬達。
成人したばかりの少年が魔王を討伐したという噂で人々がざわめく中、徐々に明るさを増す光の奔流が広場を埋めつくし、魔法陣を囲む騎士達の視界を奪う。
青白い光と共に膨れ上がっていく命の危険すら感じる魔力が、魔王の強さを示しているようで、俺の心がざわめいた。
そして膨らんだ魔力が弾け、ドンと強い衝撃が体の芯まで響いた次の瞬間。
ひんやりとした空気が頬を撫でる感覚を感じながらそっと目を開けた俺は、死してなお感じる魔王の威圧感と致命傷となった一撃の名残に、どくりと己の心臓が脈打ったのを感じた。
お爺様には四英傑が、父には雷槍の勇者がいたように、俺にもその背を追うべき英雄が現れたのだと思った。
そして生きがいになりうる人を見つけた高揚感のまま、その姿を求めここまで追ってきた。
実際目にしたドイル様は生い立ちの影響か、今一つ権力と立場の使い方がなっていない人だった。
グレイ殿下とクレア王女の幼馴染という最強の手札を持ちながら、権力を振りかざそうとしない姿は好ましくもあり、じれったく。他人への甘さが目立つ人だが、ゼノ様と拮抗する実力も、陛下やアラン殿の目を掻い潜ろうとする行動力も悪くない。いつも誰かが側にいて、人を引き付ける人だった。
そんなドイル様の姿を見て、まだまだ未熟さが目に付く人だが、この人なら生きがいにできると、確かに思ったのに。
それなのに、俺はドイル様を信じきることができなかった。
……俺も、部隊長のこと言えませんね。
浅はかだった己を思い出し自嘲する。
騎士団本部の二階にある取調室の一室。現在、第八取調室と呼ばれるその部屋には、俺が取り逃がしてしまったゼノスを追う為、ドイル様とその部下達が集まっていた。
「それではラファール、バラドとソルシエ、ナディ達を頼んだぞ」
「任せて!」
「後は大丈夫だな?」
「「はい」」
「楽勝」
「大丈夫よ」
「平気です」
部下を気遣うドイル様の言葉に、集まった彼等は笑みをみせる。彼等はこれからドイル様と共にゼノスの後を追うそうだ。
しかし俺はそんな彼等の姿を、黙って見送ることしかできない。
ドイル様のこれからの行動を思えば、騎士団の連中の足止めは必須。ドイル様を止めるだろう騎士達の中には近衛部隊長もいるので、身分や実力を考えれば俺以上の適任はいない。
そして何より。ドイル様と一緒に行きたいという資格が俺にはない。
こんなはずじゃなかったんですが……。
部下達に指示を出すドイル様達の姿を眺め、心の中で後悔してももう遅い。
ドイル様に付き従う者達は総じて身分が低い。一番位が高い者でトレボルの子爵位だ。ドイル様の主人が王太子殿下であり、ご本人が公爵位と高い位を持つ故に高位の貴族子弟を部下にする必要がなかったのだろうが、それでも身分の高い部下はいたらいたで役に立つ。王城や国外に出た時、それはより一層顕著に感じるだろう。
そこに俺が付け入る隙があると思った。一度懐に入ってしまえば、ドイル様に手放し難いと思ってもらえる自信があった。実際、途中までは上手くいっていたはず。
しかしその折角の機会を、俺は無駄にした。
ゼノスという薬師をドイル様から任されたのは昨日のこと。
ドイル様が薬師達を通し、何を調べているのか俺は知らされていなかった。しかし、材料と顧客の一覧表、また無名の薬師ばかりを巡っていたことから、最近増えた傭兵達に関して調べているのだと推測するのは容易く。傭兵達が購入した薬品の種類から仕事内容や頻度、人数を探っているのだろうと俺は結論付けた。
随分遠回しな調べ方をしているように感じられたが、陛下やアラン様達の目を盗んで調べるなら、そのくらい遠いところから攻めなければならないのだろう。難儀なことだなと思いながら、この機会に俺の評価を高めようとゼノスから情報を搾り取ろうとした。
しかしゼノスをただの薬師と侮っていた俺は、なんの情報も得ないまま逃走を許してしまった。
その上、状況が状況だったとはいえ、ゼノスを逃がした責任の所在をドイル様本人に求めた。俺が勝手に主と定めドイル様のもとに押しかけたというのに、少しばかり望みどおりにいかなかったからといって、その心を疑った。
ドイル様は俺の身を案じてくれていたのに、だ。
ちらりと背後に目をやれば、扉どころか壁が半分以上切り崩されているのが目に入る。その太刀筋と破片の大きさからいってドイル様がやったのだろう。
恐らく、室内の異常を知り中に入ろうとするも扉が開かず、扉を切り崩そうとしたが焦るあまり勢い余ってやり過ぎてしまったと推測される。出会って一日しか経たない部下を、勢い余って壁まで破壊するほど心配してくれる上司がこの世にどれだけいるのだろうか。
すっかり見通しがよくなった扉の惨状に驚くと同時に、頭が冷えたのは記憶に新しい。
そうして冷静になった俺が次に思い出したのは、俺を呼ぶドイル様の必死な声だった。
どう見てもゼノスはあの穴から逃走したのだから、俺達など放置してゼノスを追う選択肢もあったはずだ。集めた部下などシオンか風の精霊様に伝言を残して、後から連れてきてもらえばいい。
しかしドイル様はそうはせず、俺達を起こし体調を確認すると状況説明までしてくれた。
心配してくれたのだと思う。それなのに、俺はそんなドイル様を信じられなかった。
ぽっと出の人間にいきなり部下になりたいと告げられ信じられないのは当然だし、信頼してない部下にまで重要な情報を与える上司などただの愚か者である。
だからドイル様が虫の一件を秘匿したところで、非は無い。重要な情報を与えてもらえるほど俺に信頼がなかっただけだ。
そもそもドイル様は「疑わしきは罰せず」といって、ゼノスを見逃す気だった。シオンとの出会いがなければ捨て置く気だった存在が、これほど危険な者だとはドイル様も思い至らなかったはず。
冷静に考えれば、そう思える。そして湧き上がるのは後悔だけだ。
主人の言葉を信じず、斬り捨てる覚悟をさせるほど手を煩わらせる騎士に価値などない。
「いってくる」
「お気をつけて」
「ああ」
背に隠した拳を握りしめ、出発を告げるドイル様を見送る。
そんなドイル様の後にはローブ家の息子を筆頭に、幾人かの生徒が付き従っていた。
大半は今回の実習で初めて顔をみたような身分の低い者達だが、その名はよく聞く学生達だ。商家、魔道具、鍛冶、薬と分野に違いはあるが、それぞれの分野で名を馳せる家の子息達に、学園でも指折りの戦闘能力を持つ者達。
何処の家を仕え先に選んでも歓迎されるだろう彼らは、飛び降りたドイル様の後を迷いのない足取りで追う。ドイル様の命に黙って従う彼らは、程度に違いはあるものの全員ドイル様を主人とすると心に決めているのだろう。
迷いなく、疑いなく、躊躇いなく。
ドイル様を信じてその背を追う彼らの姿が、俺には羨ましく眩しい。
「お前はいかなくていいのか? ガルディ」
いける訳がない。
同僚の騎士からの質問に心の中で答え、俺はドイル様達が飛び降りた穴に近づく。
そして全員に怪我の有無を確認しているドイル様を見て、胸が痛んだ。
何故俺は、あれほど甘い人が俺を嵌めたと思ってしまったのだろうか。
騎士が捕えた容疑者を騎士団本部内から取り逃がすなど、とんでもない不祥事である。勿論この不祥事はしばらくの間、俺達の評価に響くだろう。
そのような策をドイル様が講じるとは考えられない。ドイル様は己の為に人を陥れるような真似ができる人ではないと、俺はわかっていたはずだ。
それに一歩間違えれば、俺と同僚の騎士は死んでいたかもしれないのだ。
使われた薬が違う効果のものであったなら。
逃亡の際ゼノスが俺達の命を奪っていたなら。
非力な薬師だろうと、眠りこける騎士など簡単に始末できただろう。命の危機だった。しかしそれは、外見と職業で相手を判断し油断した俺達の慢心が招いたもの。
あれほど甘いドイル様が、故意に他人の命を危険にさらすなど出来るはずがない。
どうしてもそれができない人だから、この人ならば己を犠牲にしないと信じられる。だからドイル様の周りには人が集う。
いくら想定外の展開に混乱していたとはいえ、そんなことさえ思い出せなかった俺に側にいる権利などないだろう。
……散々疑っておきながら、それでも信じて側に置いてほしいなど調子がよすぎる。
ドイル様は十分誠意を見せてくれていた。その誠意を見ようともせず疑った俺が、あの背を追いたいと口にするなど、到底許せることではない。
ドイル様の側にいられたなら、俺も祖父や父のように生きられたかもしれない。いや、生きられただろう。この場にいないだけで、ドイル様に付き従う者はもっといる。その中には、ローブのようにドイル様に仕えることを生きがいに思っている者もいるだろう。
確かに、ドイル様は生きがいになりうる人だった。
その未来を閉ざしたのは俺自身だ。
二、三言葉を交わした後、ドイル様を先頭に走り出した彼らを後悔と諦観、羨望を胸に見送る。しかし最後まで見送るのが嫌で俺が踵を返そうとした瞬間、ドイル様がふと足を止めこちらをみた。
穴から身を乗り出した訳ではない。下からでは薄暗い部屋の中にいる俺など見えないだろうに、何故かドイル様は俺を真っ直ぐ見上げている気がした。そんなはずはない、目が合っているなど気の所為だと思うものの、紫色の瞳が動くことなく俺を見据えているものだから、思わず息をのんだ。
そして。
「ガルディ! 俺達は今からゼノスを追う! まだ、俺の部下になりたい気持ちがあるのなら、お前もついてこい!」
かけられた言葉に俺も飛び降りたくなった。
二階にいる俺からは夕日に照らされたドイル様がよく見える。しかしこちらを見上げているドイル様からは、薄暗い部屋にいる俺など影くらいしか見えないだろう。
見下ろしているのが俺かどうかもわからないはずなのに、それでもドイル様は俺が見ていると疑っていない様子で叫ぶ。
「お前は俺の部下になりたいのだろう? あの言葉が偽りで無いのなら、今ここで力を貸してくれガルディ!」
俺などいなくても問題ないだろうに、力を貸せといってくれる優しさが嬉しい。
だからこそ、俺は本当に行ってもいいのだろうかと逡巡する。
もう一度チャンスをくれるというのなら、行きたい。こんなところで部隊長の相手をするよりも、ドイル様の側にいる方がいいに決まっている。ドイル様の活躍が見られるかもしれないし、汚名を返上できるかもしれない。
でも、そんなこと許されるのだろうか?
生きがいになってくれることを求めながら、俺はドイル様を信じきれなかった。自分で部下にしてくれと売り込んでおきながら、主の言葉を疑う中途半端な覚悟しかない騎士など俺だったらいらない。
それにドイル様からしたら、俺がここで騎士団の動きを封じる方が動き易いはずだ。ドイル様について行くなど、自分本位な行動でしかない。
「――らしくないぞ、ガルディ。折角御指名いただいたんだから、ドイル様をお待たせするなよ」
「なっ!?」
「ここは俺に任せてあっちで頑張れよ、っとぉ!」
様々な考えが浮かんでくる中、すぐ側から聞こえてきた声に驚くが、振り向くよりも先に突き落とされる。考えに耽るあまり、同僚の騎士が接近していたことに気がつかなかった俺は、激励の言葉と共に感じた衝撃になす術なく一階へと落ちた。
――あの野郎!
同僚に突き落とされる形だったが、日頃の訓練の成果か無様に転がることを回避した俺は、同僚の暴挙に文句をいう為に顔を上げた。
その途端目に入ったのは、頬を緩めたドイル様で。
心の準備をする暇もなく、無理矢理ドイル様と合流させられた文句をいおうと開いていた口は、気が付けばその名を呼んでいた。
「――ドイル様」
降りてきた俺を見て笑っていたドイル様は、俺の声にますます笑みを深める。そして満足そうな表情で一度頷くと、学生達に向きなおり声をあげた。
「行くぞ!」
「「「「「はい(おう)!」」」」」
「なんで俺を呼んでくれたのか」とか、「本当について行ってもいいのか」とか言いたい言葉は沢山あった。しかし、名を呼んだ俺にドイル様が満足そうに頷き、出発を告げるものだから口を挟む暇がなくて。
力強い返事をする学生達に混じって、思わず俺も了承の返事をしていた。
そんな俺達に小さく笑い、ドイル様は走り出す。
まるで「俺についてこい」とでもいう様に、確かな足取りで迷いなく。
俺は何の結論もだせぬままだというのに、ドイル様が振り返らずにどんどん進むから。他の奴らに混じって、俺も慌ててその背を追いかけた。
疑問を問う暇も与えられず、本当にこれでいいのかわからぬまま、走り続けるドイル様を追いかける。
俺の複雑な心境など気にも留めず、風の精霊様と姿の見えないもう一人の精霊様と会話し、時折降りてきては並走するように飛ぶ青い鳥に指示を出しながら、ドイル様は走り続ける。学生達はそんなドイル様に慣れているのか、邪魔することなく黙ってその背を追いかけていた。
「今からでも俺は戻って足止めした方がよいのでは?」という考えが頭を過る中、ドイル様を追いかける学生達の姿に、祖父の言葉を思い出した。
『今でこそ四英傑なんて言われているが、彼奴らは揃いも揃って身勝手でなぁ。誰一人儂らの意見など聞きやせん。その上「ついてきたい奴は勝手についてこい」が口癖で、己が信じる道を振り返ることなく突き進む癖に、いざ離れそうな奴とか置いていかれそうな奴がいると、手を差し伸べてくる。普段は我武者羅に追いかける儂らなんて気にも留めない癖に、弱っている時や迷っている時は必ずだぞ? あれが中々ずるくてなぁ。迷って足をとめそうになる度に「とりあえずこい」と手を引かれて。気が付けば何を迷っていたかも忘れ、再び我武者羅に追いかけて。そうこうしているうちに、駆け抜けていたわ!』
そういって楽しそうに笑い合う祖父達の姿が思い浮かんだ。
そして俺は再び、こちらを振り返ろうとしないドイル様を見る。
……考えても仕方ないのかもしれませんね。
中途半端な覚悟しか持てなかった俺が追いかけていいのか、側にいていいのか。そう聞きたいのに、聞く暇を与えてくれないドイル様にそんなことを思う。
そんな状況ではないとわかっているが、ドイル様の様子を見る限り、あの一件はこのままなかったことにされそうな雰囲気だ。
今追いかけているゼノスを逃したら、捕える為に再捜査。捕まえたらその処理に追われるだろう。もしかしたらもっと大きな事件へ発展するかもしれない。そうこうしているうちにクレア王女との婚約式準備が始まる。
そうやって、次から次へとやってくる事柄に身を任せているうちに、今回俺がドイル様を疑ったことなど記憶の彼方へ追いやられていそうだ。
そんなことでいいのかといいたくなるが、祖父もそんな感じで我武者羅に追いかけたといっていたのを思い出してしまった。祖父のあの言葉が本当ならば、英雄と呼ばれる人種は、懐が恐ろしいほど深いのかもしれない。
――許してもらったと考えていいんですか? ドイル様。
「ついてこい」ということは、そういう意味だと解釈していいのだろうか?
同僚に突き落とされた俺を見たドイル様の表情を思えば、いいのかもしれない。
――貴方がついてこいと仰るのなら、黙ってついて行けばいいんですかね?
ドイル様の真意はわからない。
しかし迷う俺の手を引いたのはドイル様だ。
ならば、深く考えず黙って従えばいいのかもしれない。どうせ考えたところで、追う資格はないと思う理性と追いかけたいという本音で揺れ動き、答えなど出せやしないのだから。
訳も分からないまま我武者羅に追いかける人生も、そう悪いものではない。
祖父や父の顔を思い出し、そんなことを思う。
祖父がなんだかんだと言いながら戦乱を駆け抜けたように、こうやってドイル様の背を追いかけているうちに、俺も激動の人生を駆け抜けているかもしれない。
そんなことを考えながら、迷うことなく走るドイル様を俺は追いかけ続けた。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。




