第0.5話 プロローグ6
そして少年達は戦場に到着した。その瞬間、突然の衝撃に少年達は吹き飛ばされた。運が良かったのか少年は瓦礫にぶつかり大して飛ばされなかった。
「何なんだ一体!?」
少年は素早く体を起こし、衝撃のあった場所を見た。其処には大きな穴が空き、焼け焦げた跡が有り、沢山の少女達の焼死体が転がっていた。少年はそれを見て恐怖した。そして改めて知った。
「これが・・・・戦争?本当にこんなのが聖戦なのか?」
少年は少し男の考えに疑問を持ったがすぐに振り払い、ナイフと銃を持って戦場の中心へ走り込んでいった。その中で少年は作戦を思い出していた。
「他の人達が時間を稼ぐ間に僕が基地へ侵入、そして其処の隊長と指揮官を殺す。本当に一か八かの作戦だな・・・・僕にできるのか?いや、やるしかない!」
そして少年は基地の中へ侵入して行った。だが少年は先程から少し気になっていた事があった。
「おかしい・・・・、人が少な過ぎる・・・・。」
そう、人が少ないのだ。基地の筈なのに先程から人が30人程しか居なかったのだ。しかも全員弱く、少年の敵では無かったのだ。そして遂には誰一人居なくなった。少年はまさかと思い急いで敵の指令室へと駆けていった。
「頼む!間に合ってくれ!」
少年は息を切らしながら指令室へ駆け込んだ。だがそこには誰一人居ない部屋が只広く広がっていた。少年はもぬけの空になった指令室を見て絶望した。
「そんな・・・・。奴らはどこに?」
少年が足を踏み入れた時、何かを踏んだ感触が有り足下を見ると一つの書類が落ちていた、少年はそれを手にとり読み始めた。そして少年は衝撃の事実を知った。そこに書いてあるのは、少年の父の様な存在の男の事だった。
[ケルビム・テイラー 26歳 宗教の教祖で過激派テロリストのリーダー、その手口は孤児を洗脳し己の兵士に育て上げ戦場で戦わせている間に逃亡、またテロを繰り返し孤児を捨て駒にする。彼はすでに逃亡していると思われ我が本隊は数人をこのウェサリア基地に残し、彼の身柄を拘束に向かう事とする。]
書類を見た後、少年は全てを理解した。何故あのような場所で訓練を受けたのか、名前では無くコードネームを貰ったのか。全てはケルビムが逃げる為だけの捨て駒だったという事だ。その時少年の胸に付けていた通信機がなり少年は通信機のスイッチを入れた。そこから聞こえてきたのは今にも消えそうなあの隊長の声だった。
{今から言う事は君が生きていると想定して話す。いいか?君が居る基地から南の方向に私達の別働隊が居る。君は其処へ向かい、別働隊と合流しろ。そして別働隊に合流した時、この作戦は失敗だ撤退しろと伝えてくれ。その時にお前は別の安全な場所へ逃げろ。}
少年は隊長にケルビムの事を話した。
「もう逃げたって意味なんか無いよ。僕達はとんでもない事をやらされていたんだ。何人も殺した。女子供関係無く、只々殺し続けたんだ。今更生きたってしょうがないよ・・・・。」
少年の話しに隊長は・・・・。
{そうか、・・・・。だがそれでもだ。君は逃げて生きろ。君がここで死んで良いが筈が無い。まだ君には未来が沢山有るだろう。}
尚も少年に生きろと進言してきた。
「15歳の未成年に未来なんて言われたく無いんだけど。」
少年は隊長の言葉に少し苛立ちを感じて言った。
{その様子なら大丈夫そうだなハッハッハ!}
隊長は元気そうに笑った。というよりさっきの今にも消えそうな小声は何だったんだ?
{いやぁ~実は今敵に囲まれていてねぇ。両足が無い上に右腕と左目も無いんだよね~。バレないように気をつけていたんだけどバレてしまったよ。もう正直死にそうなんだよね~。意識もクラクラしてるし。}
少年はその瞬間指令室から駆け出していた。彼女の元へとひたすらに。
「通信機から声と一緒に聞こえてくるのは風の音だからあんたは今風の強い所にいるな!?」
{そうだがまさか助けに来るつもりかい?もしそうなら止めなさい。君が私の為に命を懸ける必要は無いしもう私は生きられ無いよ。}
隊長は真面目な声で少年に言った。その言葉に少年は・・・・。
「断る!!」
大声で叫んだ。
「あんたふざけんなよ!いつもいつも好き勝手言いやがって、何?馬鹿?馬鹿なの?死ぬ?死ぬの?」
少年は隊長にこれでもかと罵声を浴びせながら隊長が居る場所を予想し走り続ける。
{その言い方は無いだろう!?まあ君の言うように今にも死にs「わかった僕も言い過ぎた。だからまだ逝くな。もう少し待ってろ!」・・随分と無茶言うね君は!?}
少年はとにかく走った。そして少年は街の風力発電所に着いた。そこには発電所を囲む敵兵の姿が有り、発電所の窓には血を流した隊長が見える。
「見つけた!お前等、邪魔だー!そこをどけ!」
少年は敵兵の中にナイフ一本で進撃して行く。そして二分も立たない内に敵兵は全員肉塊に変わっていた。少年はすぐに隊長の所へと向かって行った。そして少年は隊長を見つけたが彼女は血の流し過ぎか顔が真っ青になっていた。
「まさか本当に助けに来るとはね。馬鹿だよ君は。」
隊長は弱々しくそう言った。
「わかったから喋るな。死ぬぞ!」
少年が焦りながら言うが隊長は首を振りまたしゃべり始めた。
「私はね本当はこんなキャラじゃ無いんだよ?皆のリーダーをやるより下っ端でお花とか積んでたかったなぁ・・・・。」
彼女は自分の後悔を話し始める。まるで死ぬ直前に未練を言うように。
「まだ諦めるな!僕が助ける!だから!」
少年は必死に語り掛ける。今にも消えそうな彼女を引き留めるかの様に。もうケルビムの事などどうでもよかった。今目の前に有る命が助かればそれでよかった。
「お願いだから死なないで!僕を1人にしないで!」
少年は只ひたすらに声を掛け、涙を流す。
「こら、男の子がそんな簡単に泣かないの・・・・。大丈夫、君は1人なんかじゃ無いよ?私が死んでも君を守るから・・・・。だから・・・・最後に笑って?君の笑顔を見せて?」
彼女は少年の涙を残った左手で拭い頬に手を添えた。
「わかった。僕・・いや、俺はもう泣かないから、だから・・・俺を見守っててね?」
少年は精一杯の笑顔を彼女に見せた。そして彼女は
「死ぬ前に良いもの見せてもらったかなぁ。//////」
幸せそうに微笑み息を引き取った。
この後少年は彼女の墓を作り発電所を後にした。彼は歩き続けた。例え生きる意味を失っても、彼女との約束を守る為に死んだような目をしながらも、自分が殺してきた屍を踏み越えながらも、少年は歩き続けた。だが、。
「まだ生きていたかこのガキ共!死ね!」
突然敵兵の残党が飛び出して来た。少年はとっさの事で少しパニックになり屍につまづいた。そして、腹部に何か熱く広がっていく感覚と共に意識が遠くなって行く。敵兵は少年に銃を向けて笑っていた。
「ごめん・・・・。約束・・・守れなかった・・・・。」
そして少年の残酷で苦しい人生は終わりを告げた。
はずだった。
「どこだ・・・・・・此処?」