第12話 紅と刹那と焔の剣
刹那サイド
蓮花に殺される直前に死にたく無いないと思った俺は突然焔に包まれ、思わず目を閉じた。そして恐る恐る目を開けると、昨夜夢に見た一面炎の世界に立っていた。
そして目の前には夢で会った赤髪の少女が立っていた。
「また会ったわね。出来ればこんな形で再会したく無かったんだけど。」
彼女は少し呆れた様子で俺を見る。
俺はそんな彼女に疑問をぶつけた。
「お前は一体何者何だ?何で俺の夢に出てくるんだ?」
「わかったから落ち着いて。一つ一つ答えてあげるから。」
彼女はそう言いながら説明を始めた。
「まずは私が何者かね。私は精霊王と呼ばれる者よ。」
「精霊王!?」
俺は思わず驚いた。
前に家にあった書物を読んでわかったのだが、人々がそれぞれの属性魔法を使えるのは、各属性に存在する精霊王と呼ばれる存在が与える精霊の加護によって使えると書いてあった。
そんな高位の存在が目の前にいることに俺はビックリしてしまった。
「まぁ驚いてもしょうがないわね。」
と精霊王の彼女は言い、説明を続ける。
「何で私が貴方の夢に出てくるかというと、私を含めた全ての精霊王が貴方の中に眠っているからよ。」
赤髪の精霊王の言葉に俺は再び驚愕した。
「どういうことだ!?何で俺の中に精霊王が全員入っているんだよ!」
「まぁ落ち着いて。今から説明するから。」
赤髪の精霊王は俺を宥めるように話し掛ける。
「貴方達が属性魔法を使えるのは私達の加護があるからっていうのは知っているわよね?」
彼女の言葉に俺は頷く。それを見た彼女はよろしいとでも言いたげに言葉を続ける。
「私達は精霊界って言う所で精霊王をやっていてそこで人々に加護を与えていたの。元々は精霊神という精霊にとっての神様が数千年前からやっていたのだけど体調を崩してしまって代わりに私達各属性の精霊王が代わりをやり始めたのよ。」
王と呼ばれる彼女達にも上がいるのか。て言うかやっぱり脆い!脆すぎるよ!神様!何でそんな凄い方々が体調崩したり食中毒で死んじゃうんだよ!
そんな事を思いながら俺は再び彼女の説明を聞き始めた。
「そんな中、精霊神様の体調が治って私達に代わりをやってくれたお礼にこれから先、好きに生きていいって言われたのよ。私達は喜んだわ。だって私達は精霊王として生まれてからずっと加護の代わりだけやってたから自由に外の世界に何ていけないんだもの。だから精霊神様から自由にしていいって言われた時は精霊王全員が喜んだわ。」
彼女は嬉しそうに語る。彼女達は人より長い人生を生きて来たのだからずっと同じ仕事は暇だったのだろう。彼女は言葉を続けた。
「そして私達は全員人間界に行くことにしたの。でも私達が人間界に行くには人の中に入って一度転生しなきゃいけないのよ。普通の精霊はそんな事しなくても精霊界から人間界に出入り出来るけど私達のレベルの精霊になると、そのまま出た時に魔力が溢れて人間界に大被害が出るの。だから人の中に入ったのよ。此処まではよかったんだけどな~。」
彼女は少し困った顔をする。
「実はね?転生する時に入る体はランダムで決まって、決まった相手はマスターとして契約しなきゃいけないのよ。そして私達は偶然貴方の中に全員が入り、転生したって言うわけ。貴方六十億超の確率で全員当たったのよ?凄いとしか言えないわ。そして此処は火の精霊王の私と会話する特別な空間よ。これで説明は終わり。」
彼女の説明に俺は開いた口が塞がらなかった。俺の中には、精霊王全員がいて、その中の一人がこの少女という時点で驚愕だと言うのに、その全員を使役するというとんでもない事実が追い討ちを掛け、もうついて行けなくなった。
「ちなみに、私達がいるから貴方の属性魔法は普通の人より強力よ?」
魔力の量で既にチートだと言うのにこれ以上強くなってどうすればよいのだろうか。そんな事を考えながら俺は自分に呆れていた。
「説明が終わった所で聞くけど、貴方、まだ死にたくないのよね?」
彼女の言葉で刹那は思い出した。自分が殺され掛けていた事に・・・・。
「そうだ!こんなに長く話してたけど俺って大丈夫なのか?」
「問題無いわよ。この空間での出来事は全て元の世界では一瞬の事だもの。」
彼女の言葉に俺は安心した。俺はまだ生きているのだ。そして彼女は俺に言った。
「ねぇ、力が欲しい?今の状況を打破し、彼女に勝つ力が。」
彼女は俺に聞いて来た。その言葉に俺は、
「欲しい。今アイツに勝てる力が欲しい!」
俺は力強く答えた。そんな俺に彼女は、
「そう、なら私が力を貸してあげる。私の手を握って。」
そう言いながら彼女が差し出して来た手を握った。その瞬間彼女の姿は消え、俺の手には紅蓮の剣が握られていた。その剣の中からは赤髪の少女の声がする。
「これが私達人と契約した精霊の戦闘形態、精霊武具と言うものよ。これを手にし、戦うと言うことは私達精霊と契約するという事。貴方にその覚悟はある?」
「あぁ!俺はあんた達と契約する!その覚悟はあるさ!」
「なら私の剣の真名を言いなさい!名前は貴方の心の中に浮かんでくるはずよ!」
彼女の言葉に俺は応える。彼女の剣の真名は・・・・
「レーヴァテイン!」
そして俺はこの空間から現実に戻った。新たな剣を手にしながら。
刹那サイド終了