第5話 刹那の散歩と犯罪遭遇
あのお山バーン事件(カグヤ命名)から数日、刹那は周りに気をつけながらアテナ達と訓練に励んでいた。そんなある日、ことの始まりはアテナの言葉だった…。
「今日は散歩がてらに町に出てみましょう!訓練はお休みです。」
朝食を取り終わった刹那とカグヤにアテナは提案した。
「別に俺は構わないが、カグヤはどうだ?」
「私も刹那にリミッターを付ければ大丈夫だと思うよ~。」
「それでは早速行きましょう!」
こうして俺達は初めて転移装置以外の外出をする事になった。そして現在、町中を刹那が歩いていた。アテナ達はスタンバイフォームになり彼のアクセサリーになっている。そんな中、道行く人は皆刹那を見て小声に話していた。
「おい、なんだあの色の髪。」
「目も血みたいな色してるぞ。」
「こわーい。」
「でもかわいいよあの女の子。」
「そうだな。・・・・ジュルリ。」
皆刹那の容姿を見て見下したり、女の子と見間違えたりと各々の反応を示す。最後の方は寒気がしたが。
「「刹那・・・。」」
二人のパートナーが不安そうに刹那に声を掛ける。そして刹那は二人に軽く微笑み、
「大丈夫。俺は平気だから。見下されたり貶されたりするのは慣れてるよ。」
刹那は言うが二人にはそれが信じられなかった。なぜなら、刹那の腕や体が震えているからである。彼は前世でもそれが原因で捨てられ、拾われた後も虐められ続けたのだ。今刹那の頭の中では虐められていた時の光景がフラッシュバックしていた。
「大丈夫だ。怖くない。怖くない。怖くない・・・・。」
先程から刹那は下を向きながら同じ言葉を繰り返していた。
「今日はもう帰りましょう!さぁ!」
アテナの声に刹那は一目散に駆け出した。とにかく走った。彼は今、人の視線から逃れたかった。そして家の近くまで戻ってきた。
「ハア・・ハア・・。もういやだ。外になんて出たくない。こんなんじゃ幸せなんて無いじゃないか!」
「ごめんなさい・・・・。私があんな事言ったから・・・・。」
アテナは心の底から後悔していた。二度と悲しませない。そう決めていたのに少年を悲しませてしまったからだ。彼女の胸の中は後悔と罪悪感で押しつぶされそうになっていた。
「ふ、二人共とにかく今は家に帰r「キャア!」ふぇ?」
突然聞こえて来た声に目を向けると、覆面をした男達が二人の少女を無理やり車に乗せ、立ち去って行く所だった。
「あれって・・・・。」
「もしかして・・・・。」
「もしかしなくても・・・・。」
「「「誘拐?」」」
刹那達は急いで車を追い始めた。一方車の中では二人の少女が手と足を縛られ、口はガムテープで塞がれている。男達はその少女達を見てニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべていた。そして男達が嬉しそうに声を上げ始めた。
「いやー本当に君達だけでいてくれて助かったよ。普段は黒服のお兄さんがいっぱいだもんねー。」
「帰りたいか?お前等の親がいくら出してくれるかでお前等が帰れるか決まるよ。」
「おい、着いたぞ。ほら降りろ!!」
少女二人は男達に担がれて海の近くの倉庫に連れて行かれた。だが黒服の男達は気づかなかった。白き獣に見られていたと言うことを・・・・。
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