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まるで闇を思わせる、さらりとした黒髪。
肩あたりまで伸びたソレは、彼の白い肌を一層に際立たせる。
「誠」
育ての親に、呼びかけられ振り向くと共に明るい笑顔を見せた。エメラルドをはめ込んだような、深緑の瞳は思考を覗かせない。魅惑的な声は甘い毒のように、どこまでも彼を引き立たせる。
「どうしました?お母さん」
「また、行かなければならないんだね…」
悲しげな表情をする婦人。
婦人はやつれたような表情で、顔中の筋肉をひきつらせていた。
肩にかけているブランケットを細い指で引き寄せ、涙を押し殺す。
そんな婦人と打って変わり、誠と呼ばれた彼は、また笑った。
「大丈夫ですよっ。いつもちゃんと貴方の息子は、こうやって無事に帰ってくるじゃありませんか」
「でも、また凄い子供が出来たっていうじゃない。なんだっけ?カナ‥」
「貴方が心配することは何一つありません。」
ピタリと言い切り、彼は母親の頬に優しくキスをした。
「必ず帰るよ」
ウインクをして優しい母にいつもどおりの約束をして、彼は手を振り部屋を後にした。
新たに成功した命。
名は"要"
その命もまた、自分が生きのびるための駒であり、いつか自分が壊すものだ。
これから先、もし彼が生き残るのであれば同じチームで活躍していかなければならないときがくるだろうが…そういった感情は割り切っているつもりだ。
早くここから抜け出すためにも、犠牲を出さなければいけないことを何とも思わず、彼はまた"戦場"に向かった。