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"命"を人間が作り出すことは不可能だ。
どんなに技術が進化しても、"心"を作り出すことはできない。
そんなことは誰だってわかっていた。
永遠に謎のままの生命の神秘。
…なら、この俺は一体どんな存在なのだろう。
振り返れば、それは数年前の出来事。
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『緊急事態発生ッ!!緊急事態発生ッ!!』
『試作品No.329に異常発生ッ!!』
『制御不能ッ!!制御不能ッ!!』
『直ちにNo.329を捕獲ッ!!』
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鋭い機械音やサイレンが室内に鳴り響く。研究所内中の赤いランプが輝き、事の重大性を示している。
試作品…とは、この研究所で生み出された、新たな"生命"の塊。
ようは、未完全な人造人間だ。
未完全な人造人間は、その名の通り未完全であり、
軍事改良され、様々な危険な能力を生まれながらに持っているという。
完璧な人造人間は、その危険な能力を自分で調整することができるが、試作品は、調整することができないのだ。
今回、試作品に何らかの原因があり、制御不能に陥り、大変な事態になったというわけである。
研究所はパニックに陥った。
研究員たちは自分の命の安全を図ろうと、一斉に走り出し、ある者はある者の下敷きになり…。
浮き彫りになった人の性は、まるで亡者のようだ。
そんな頃、
試作品No.329の部屋では
熱を含んだ気体が一気に噴き出され、重い鉄の扉がゆっくり開かれていた。