超ステキな催眠占い。
超ステキな催眠占い。
そんな看板に引かれて戸口の小さなドアを開けた。
その店は場末の居酒屋の隣にあった。
夜中の11時。
私は、初めはその居酒屋で彼氏のアキオとお酒を飲んでいた。
いつものように和気藹々と飲み始め、いつものようにムキになり喧嘩になった。
「死ね、この能無しのどエロ」これもいつもの私の捨て台詞。
自分が飲み食いした金額をざっと暗算して、それよりも少し少なめのお金をテーブルに叩き付けて店を出た。
携帯で時間を確かめた、それが11時だった。
『超ステキな催眠占い・・・2000円から』
2000円か、高いな。
不思議なことにそう思いながらも、その店の安物の取っ手ノブを引いた。
ドアを開けると真四角で真っ白な小さなテーブルと、その椅子に腰仕掛けている初老の男が、ドアからわずか1mも離れていないところに見えた。
「座って」
男の何の挨拶もないままに、私は背もたれのない椅子に腰を下ろした。
「では、さっそく」
こんなお店に来た事は一度もない、何処でもこんな一方的な流れなのか。解らない。
腰掛けての束の間、男は五円玉に糸を通したものを私の目の前にぶら下げた。
「これを良く見なさい」
その男の指から垂直に下がる糸、その先には五円玉が漫然とぶら下がっている。
男は五円玉を揺らし始めて
「心を落ち着けて、この五円玉のゆれを良く見てください、あなたはだんだん眠くなる」
『ばかばかしい』内心そう思った。
「いいですか、あなたは段々と眠りに落ちてゆく、ほーら、ほら。眠くなってゆく。
そしてあなたは今やっていることが段々バカバカしくなってゆく」
「あのう、最初からばかばかしいんですけど」
「いや違います。これは催眠術のお陰です」
信じられない。
「そして段々腹立たしくなってくる」
当っている。
「帰りたくなる」
また当った。
「当ります、2000円を払いなさい」
「いやです」
「2000円を払えばあなたはさっさと帰れるんですよ」
確かにこんなところに長居はしたくない。
「でも、2000円は高すぎます」
「では1000円におまけします」
「300円にしてください」
「いいでしょう」
私は300円を払うと居酒屋を覗いてみた。
アキオはまださっきの席に座っていた。
「なんだよ、帰ったんじゃなかったのか?」
それが実はと、『超ステキな催眠占い』の話をした。
「で、結局300円払ったのか」
「そうよ、損した」
「そうでもないだろう、お前の支払い、300円足りなかった。これでチャラだ」
私はまたばかばかしくなって腹が立って、さっさと帰りたくなった。
占いが当ったのかな?解らなかった。




