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超ステキな催眠占い。

作者: 石山ウルマ
掲載日:2010/11/13

超ステキな催眠占い。


そんな看板に引かれて戸口の小さなドアを開けた。

その店は場末の居酒屋の隣にあった。

夜中の11時。

私は、初めはその居酒屋で彼氏のアキオとお酒を飲んでいた。

いつものように和気藹々と飲み始め、いつものようにムキになり喧嘩になった。

「死ね、この能無しのどエロ」これもいつもの私の捨て台詞。


自分が飲み食いした金額をざっと暗算して、それよりも少し少なめのお金をテーブルに叩き付けて店を出た。

携帯で時間を確かめた、それが11時だった。


『超ステキな催眠占い・・・2000円から』

2000円か、高いな。

不思議なことにそう思いながらも、その店の安物の取っ手ノブを引いた。


ドアを開けると真四角で真っ白な小さなテーブルと、その椅子に腰仕掛けている初老の男が、ドアからわずか1mも離れていないところに見えた。

「座って」

男の何の挨拶もないままに、私は背もたれのない椅子に腰を下ろした。

「では、さっそく」

こんなお店に来た事は一度もない、何処でもこんな一方的な流れなのか。解らない。

腰掛けての束の間、男は五円玉に糸を通したものを私の目の前にぶら下げた。

「これを良く見なさい」

その男の指から垂直に下がる糸、その先には五円玉が漫然とぶら下がっている。


男は五円玉を揺らし始めて

「心を落ち着けて、この五円玉のゆれを良く見てください、あなたはだんだん眠くなる」

『ばかばかしい』内心そう思った。


「いいですか、あなたは段々と眠りに落ちてゆく、ほーら、ほら。眠くなってゆく。

 そしてあなたは今やっていることが段々バカバカしくなってゆく」

「あのう、最初からばかばかしいんですけど」

「いや違います。これは催眠術のお陰です」

信じられない。

「そして段々腹立たしくなってくる」

当っている。

「帰りたくなる」

また当った。


「当ります、2000円を払いなさい」

「いやです」

「2000円を払えばあなたはさっさと帰れるんですよ」

確かにこんなところに長居はしたくない。


「でも、2000円は高すぎます」

「では1000円におまけします」

「300円にしてください」

「いいでしょう」

私は300円を払うと居酒屋を覗いてみた。

アキオはまださっきの席に座っていた。


「なんだよ、帰ったんじゃなかったのか?」

それが実はと、『超ステキな催眠占い』の話をした。

「で、結局300円払ったのか」

「そうよ、損した」

「そうでもないだろう、お前の支払い、300円足りなかった。これでチャラだ」

私はまたばかばかしくなって腹が立って、さっさと帰りたくなった。

占いが当ったのかな?解らなかった。






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