表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おいしいご飯が食べたいので、この縁談は無かったことにして頂けないでしょうか?  ~辺境伯令嬢の夜な夜な背徳飯ライフ~  作者: 糸音
第4章 同じ鍋にも味2つ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/44

大切なお話

 

「……カノン。本日も野菜料理ですか」


 翌日、昼食の場に用意された食事に、フェルティナが思わず苦い顔をした。

 昨日の晩も野菜料理だった。

 夜に鍋を挟んだとはいえ、屋敷での料理は朝食を除けば、野菜料理が連続したことになる。


「お嬢様の健康を思ってのことです。それに、野菜料理もおいしいですよ」


 昨日見せた優しい顔はどこへやら。

 いつもの動きが少ない表情のまま、それでいて淡々とフェルティナのわがままを付き返す。

 少し離れてその様子を見守っていたアルマも、可笑しそうに笑うしかない。




「……」


 野菜のソテーをフォークで口に運ぶ。

 相変わらず、控えめな味付けなのに味は美味い。

 口にした後では文句を言う気にはならないので、そういった言葉は食事の前に吐き出すようにしていた。




「……とはいえ、流石に同じような料理が続きましたね。ご希望であれば、夜食はリクエストを受け付けますが」

「え?」


 食事の途中、急に見せた甘さに、フェルティナが思わず驚きの声を上げた。


「……どうしましたか、急に」

「……どうしたもなにも、たまにはいいでしょう。調理長のモチベーションにも関わるみたいですので」


 あくまで自分の感情は表に出さないらしい。

 そんなカノンの様子を見て、アルマがくくくと笑い声を堪えている。


「では、今日の夜食はビーフシチューを所望します」

「料理長にお伝えします」

「ええ。ところでカノン」


 ナイフとフォークを動かしながら、フェルティナが更に顔を向けたまま続けた。






「私、あなたのことも大好きですからね」






 急に告げられた言葉に、カノンが一瞬だけ目を丸めた。


「……どうしましたか、急に」

「……どうしたもなにも、感謝を伝えることは大事かと思いまして」

「……もったいないお言葉です」


 カノンがフェルティナから、ほんの少しだけ顔をそらした。

 少しだけ横目で様子を伺うと、彼女の顔が若干赤く染まっていた。

 どうやら、自分の熱は、鉄仮面の奥にもしっかりと届いたようだった。


「ところでカノン、食事の後、少しつきあってくれませんか?」

「はい。どのような用件でしょうか」


 内容を聞く前に肯定するあたり、自分は信頼されているらしい。

 カノンからの信頼に安心感を覚えながらも、少し真剣なまなざしになって、フェルティナはカノンに告げた。




「お父様に、大切なお話をしようと思うの」




 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢




 セルヴァラント邸、その領主室。

 その作業机にて書類に印を押す父のもとに、フェルティナが改まった様子で現れた。


「それで、私に話とは、いったい何かな」


 娘の顔を見て、何かを決心した顔だと悟った父が、作業を止めてフェルティナに向かい直った。


 話を切り出す前に、罪悪感が胸を刺す。

 これから話すことは、自分のわがまま以外の何物でもない。

 でも、自分は領主の娘。この家の主の一人である。


 仕える者たちや領民たちが具材とすれば、自分はそれらを纏める鍋。


 そんな鍋に、ひびが入ったままではいられない。


 ひびを修復するにも、壊れて新しく作り直すにしても、決断をしなければならない。



 小さく息を吸ってから、フェルティナは低く、芯の通った声で、自分の胸の内をさらけ出した。




「私は、ヴァレンシュタイン公爵からの縁談を、断りたいと思っております」


第4章、これにて完結です。

次回より最終章。最後までお付き合い頂けますと幸いです。

( ノ;_ _)ノ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ