表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おいしいご飯が食べたいので、この縁談は無かったことにして頂けないでしょうか?  ~辺境伯令嬢の夜な夜な背徳飯ライフ~  作者: 糸音
第4章 同じ鍋にも味2つ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/44

小さな亀裂

 改めて二人に向かい直るフェルティナに、先に切り出したのはカノンだった。


「料理長が私のレシピを独断で変更し、主菜を変更いたしました」

「……どうしてそのようなことを?」


 フェルティナがアルマに顔を向け、発言を促す。


「……最近の献立が健康に偏重し、お嬢様の食の楽しみを軽視している印象がありました。この屋敷の調理長として、食事を召し上がる皆様に、幸せな気持ちになっていただきたい。そのような動機から、私個人の判断で行いました」


 アルマが頭を深く下げると、後ろに控えていたシェフたちも一様に深く頭を下げる。

 個人の判断で、などと言ってはいるが、厨房の意思は一つのようだ。


「献立を侍女たちと共有する重要性は理解しておられますか」


 疑うのではなく、理解を確かめる聞き方だった。


「はい。使われた食材や調理法を、複数の者で管理することで、毒や遺物の混入を防ぎます。万が一誰かがそのようなものを盛った際に、発見の可能性が上がります」

「よろしい。以後、変更を加えるときは侍女たちに確認を取るように」

「申し訳ございませんでした」


 アルマが謝罪し、その態度に反省の色が見えたことで、注意はここで終わった。

 頭を下げたままのアルマに、フェルティナが優しく笑いかける。


「……でも、今日のステーキは美味しかったわ。機会があれば、また頂けるかしら?」

「……! はい!」

「お嬢様」


 フェルティナのフォローにアルマが表情を明るくしたところ、割って入ったのはカノンだ。


「甘やかさないでください。この者がしたことは規律違反です」

「甘やかしてなどおりません。必要以上に注意をしないだけです」

「お言葉ですが、少し調理長に寄っているのでは?」

「私は常に中立ですよ」


 フェルティナがカノンを制すも、立っている場所が若干アルマに近い。

 久しぶりに、昼に肉が食えて満足しているのであろう。

 本人は気が付いていないが、体がアルマを尊重したいと、脊髄で動いてしまっている。


 若干遠い位置にいるフェルティナを見て、小さくため息を吐いてからカノンが歩み寄り、


「では、夜の献立はこちらでお願いします。中立と仰るなら、夜は侍女側を立ててもらいましょう」

「わかりましたわ」


 破り捨てられたメニューをフェルティナに差し出した。




 ……あらやだ、野菜ばっかり。




 メニューを一瞥し、心の中で涙を流すも、カノンに痛いところを突かれたので頷くことしかできない。


 そんなフェルティナに「それでは失礼いたします」と言い残し、カノンは厨房を去ってしまった。


「……」


 ……珍しく、怒っているように見えましたわね。


 いつもなら、どんな時でも去る時に一礼をするのだが、今日は言葉だけ残して消えていった。

 去る時の足取りもいつもよりも速足で、歩幅も広かったような気がする。




「……」


 言い争っていたアルマも、少し居心地が悪そうだ。

 二人の応酬を派閥に分かれて見守っていた使用人たちも、いつもと違う様子のカノンを見て、心配をしているように見える。


「カノン……」


 少し、アルマをフォローしすぎたかしら。


 引き裂かれた紙には、今日の献立が綺麗な文字で、詳細に記されている。

 渡されたレシピを見つめた後、フェルティナは少し寂し気な、申し訳なさげな眼差しでカノンの消えていったドアを見つめた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ