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おいしいご飯が食べたいので、この縁談は無かったことにして頂けないでしょうか?  ~辺境伯令嬢の夜な夜な背徳飯ライフ~  作者: 糸音
第3章 中身も外も大事です。人も。オムライスも。

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やっぱり最後は中身です

「まさか……! まさか……!」


 こんなサプライズが隠されていましょうとは‼


 オムライスの底から現れたのは、肉厚のハンバーグ。

 フォークの刺さった個所から、煌びやかな肉汁を溢す圧倒的な肉の塊に、フェルティナは再び理性が飛びそうになってしまう。



 ナイフとフォークを差し出されたが、敢えてここはスプーンを差し込む。

 大きくも柔らかいハンバーグは木製の匙でもたやすく切り分けられた。


 匙でできた、弧の断面から肉汁と共に香草の香りが乗った湯気が上がっている。

 鉄皿は、シチューの温度を保つためだけのものでは無かったということだ。


「こんなの……ずるではありませんか!」


 好きなものランキング1位がビーフシチュー。2位がオムライス。

 そして何を隠そう、3位がハンバーグなのだ。


 1位と2位で手を組んでいたかと思えば、底から現れた3位の料理が、突然1位たちとで肩を組みだした。


 美味しくない。……わけがない‼


 ビーフシチューを少しだけ絡めながら、フェルティナはハンバーグを口に含む。


 そして、






 広がるのは、鮮やかな青い空が広がり、白い羽の天使たちが飛び回る一面の花園。




「はうあっ——」


 いけません! 

 辿り着いてしまうところでしたわ! エデンに!

 天に向かって飛び立つどころか、その先へ行きそうだったフェルティナが危ういところで我に返る。


 我に返ったところで、改めてこのハンバーグを匙に取り、再びシチューに搦めて口に含みなおす。







 お・い・し・い・で・す・わああああああああああああああああ‼


 フェルティナは思う。

 美味いものは何度口にしても美味い。

 だが、ここまで濃厚な味が出そろう中、食嗜が減らないのには、きちんとしたロジックがあった。


 このハンバーグ! あえて味付けは控えめに、シチューの付け合わせとして調理されておりますわ!

 味付けは最低限の塩と胡椒、そして濃厚な味わいを適度に中和するための爽やかな香草。


 そのまま食べれば、シチューとの味の対比が楽しめますし、一緒に合わせれば、別な旨味同士が絡み合って、一つの別な料理へと変貌を遂げます!

 それぞれを楽しむもよし! 合わせて食べるもよし!


 ソロでもトリオでも美味しいなんて、こんなの食が進まないわけないではありませんか‼


 シチューの深く濃厚な旨さ。

 ダイレクトに舌を刺激するハンバーグの肉の旨味。

 その二つをまろやかに中和しながら、間で味を引き立てるオムライス。


 大きい数字が足し算ではなく、掛け算で組み合わさってしまえば、その大きさは無量大数に匹敵してしまいますわ!

 これは、暴力!

 圧倒的美味しさの暴力に、ノックアウト寸前ですわ!



 

 なんども脳を揺さぶられながら、フェルティナはとうとう料理を完食した。

 空になった皿を見て、幸せそうに息を漏らす。


 浮かんでくるのは、この店のビーフシチューオムライス様との馴れ初めと——




「やはり、最後は中身ですわね」




 途中で現れた、ビーフシチューオムライス様が内に秘めていた真の魅力。


 途中、私の勝手な憶測であなた様を愚弄してしまったこと。深くお詫びいたしますわ。


 最後に強く残るのは、第一印象ではなく、その者の内なる魅力である。

 そう思いなおしたフェルティナは会計表を手に立ち上がり、レジのスタッフに支払いを終えて、微笑んだ。




「今日の料理、めしうま、でしてよ」



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