やっぱり最後は中身です
「まさか……! まさか……!」
こんなサプライズが隠されていましょうとは‼
オムライスの底から現れたのは、肉厚のハンバーグ。
フォークの刺さった個所から、煌びやかな肉汁を溢す圧倒的な肉の塊に、フェルティナは再び理性が飛びそうになってしまう。
ナイフとフォークを差し出されたが、敢えてここはスプーンを差し込む。
大きくも柔らかいハンバーグは木製の匙でもたやすく切り分けられた。
匙でできた、弧の断面から肉汁と共に香草の香りが乗った湯気が上がっている。
鉄皿は、シチューの温度を保つためだけのものでは無かったということだ。
「こんなの……ずるではありませんか!」
好きなものランキング1位がビーフシチュー。2位がオムライス。
そして何を隠そう、3位がハンバーグなのだ。
1位と2位で手を組んでいたかと思えば、底から現れた3位の料理が、突然1位たちとで肩を組みだした。
美味しくない。……わけがない‼
ビーフシチューを少しだけ絡めながら、フェルティナはハンバーグを口に含む。
そして、
広がるのは、鮮やかな青い空が広がり、白い羽の天使たちが飛び回る一面の花園。
「はうあっ——」
いけません!
辿り着いてしまうところでしたわ! エデンに!
天に向かって飛び立つどころか、その先へ行きそうだったフェルティナが危ういところで我に返る。
我に返ったところで、改めてこのハンバーグを匙に取り、再びシチューに搦めて口に含みなおす。
お・い・し・い・で・す・わああああああああああああああああ‼
フェルティナは思う。
美味いものは何度口にしても美味い。
だが、ここまで濃厚な味が出そろう中、食嗜が減らないのには、きちんとしたロジックがあった。
このハンバーグ! あえて味付けは控えめに、シチューの付け合わせとして調理されておりますわ!
味付けは最低限の塩と胡椒、そして濃厚な味わいを適度に中和するための爽やかな香草。
そのまま食べれば、シチューとの味の対比が楽しめますし、一緒に合わせれば、別な旨味同士が絡み合って、一つの別な料理へと変貌を遂げます!
それぞれを楽しむもよし! 合わせて食べるもよし!
ソロでもトリオでも美味しいなんて、こんなの食が進まないわけないではありませんか‼
シチューの深く濃厚な旨さ。
ダイレクトに舌を刺激するハンバーグの肉の旨味。
その二つをまろやかに中和しながら、間で味を引き立てるオムライス。
大きい数字が足し算ではなく、掛け算で組み合わさってしまえば、その大きさは無量大数に匹敵してしまいますわ!
これは、暴力!
圧倒的美味しさの暴力に、ノックアウト寸前ですわ!
なんども脳を揺さぶられながら、フェルティナはとうとう料理を完食した。
空になった皿を見て、幸せそうに息を漏らす。
浮かんでくるのは、この店のビーフシチューオムライス様との馴れ初めと——
「やはり、最後は中身ですわね」
途中で現れた、ビーフシチューオムライス様が内に秘めていた真の魅力。
途中、私の勝手な憶測であなた様を愚弄してしまったこと。深くお詫びいたしますわ。
最後に強く残るのは、第一印象ではなく、その者の内なる魅力である。
そう思いなおしたフェルティナは会計表を手に立ち上がり、レジのスタッフに支払いを終えて、微笑んだ。
「今日の料理、めしうま、でしてよ」




