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おいしいご飯が食べたいので、この縁談は無かったことにして頂けないでしょうか?  ~辺境伯令嬢の夜な夜な背徳飯ライフ~  作者: 糸音
第3章 中身も外も大事です。人も。オムライスも。

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真・違和感の正体

 ガタン、と椅子を鳴らしながらその場で立ち上がったフェルティナに、周囲の者たちの視線が集まった。


 その視線に我に返り、「失礼いたしましたわ」と上品に頭を下げ、椅子を正して座りなおす。


 しかし、内心はとても落ち着いてはいられなかった。





 ああああああ、げげげげげげ。

 あげ、あげあげ、あげげげげげげげげ。


 あげ、ぞこ? 上げ底? アゲゾコ? 

 お父様が治める領地で? 食の中心地であるこのセルヴァラントで?

 食と平和の発展を願う、この賑わいのど真ん中で?


 いけませんわ。いけません。


 あってはならないでしょうそんなこと‼


 フェルティナが怒りで静かに顔を赤く染め、わなわなと体を震えさせ始めた。


 いくら中身が素晴らしいと言えども!

 必要以上に外見を偽ればそれは詐欺‼

 幸せは幸せな食事から! あろうことか、その食事の場で人を貶めるなど!


 それも、私の一番の大好物であるビーフシチューオムライス様を使って‼


 あってはならないでしょう‼ そんな愚行(こと)‼‼



 フェルティナはカウンターの奥を見渡し、厨房の奥で料理を作るシェフの姿を見つけ、邪悪な笑みを浮かべ始めた。




 あなた。平和な時代に生まれてよかったわね。

 生まれる時代が違えば、打ち首でしてよ。一族もろとも。




 すると、圧をはらんだフェルティナの視線に気が付いたのか、シェフが食べ終えた皿を戻しに来たスタッフに何かを伝えていた。


 スタッフが慌てた様子で、速足でフェルティナの元に向かってくる。


 ええそうですね。まずは謝罪をいただきましょうか。

 私の大切なビーフシチューオムライス様を、罪の泥で汚した愚行を。

 第一声には、十分に気を付けてくださいませ。

 たとえ謝罪の場であろうと、エリがおっしゃったとおり、第一印象は大事ですからね。




 気分はさながら、罪人を捌く審問官。

 弁明によっては、減刑を考えてやらないこともない。


 さあ、この罪人の刑はいかがいたしましょう。

 机の上で手を組み、汲んだ両手の上に顎を乗せ、スタッフが来るのを待っていた時、



「すいません。ナイフとフォークが必要でしたね。失礼いたしました」

「へ?」




 スタッフが謝罪と共に、料理の横に木製のナイフとフォークをそっと添えた。

 予想外の対応にフェルティナが目を丸くしてしまう。


 え? ナイフ? フォーク?

 オムライスに? ビーフシチューに?


 どうしてそれらのものを渡されたのか分からず、困惑しながら、とりあえずオムライスの底にフォークを刺してみる。


 するとどういうことだろうか。

 先ほどまで上げ底と思っていた、台の底にフォークが刺さる。

 そして、確かな厚みを持って、フォークを押し返してくるこの感触は……




「お肉……?!」




 何度も夜中に食べた素材だ。よもや間違うはずもない。

 思考を興奮が飛び越して、底をスプーンで掘り進めると、チキンライスとシチューの海の底に眠っていたのものは、




「ハンバーグ……?!」




 上げ底ではない。オムライスは宝箱だ。

 ビーフシチューの海の底から突如として現れた財宝が、フェルティナの瞳に再び宝石のような輝きを灯すのだった。



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