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おいしいご飯が食べたいので、この縁談は無かったことにして頂けないでしょうか?  ~辺境伯令嬢の夜な夜な背徳飯ライフ~  作者: 糸音
第3章 中身も外も大事です。人も。オムライスも。

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平和式典と立食パーティー

 セルヴァラント領の領主邸。

 そのエントランスホールで行われているのは、最後の戦争から100周年を記念した、平和式典だ。


 かつて戦乱が絶えない時代。

 国防の要として、他国からの侵略に抗ってきた歴史を持つセルヴァラント。


 戦争の歴史は飢餓の歴史でもある。

 敵味方問わず、飢えと常に向かい合ってきたこの領地では、食に関しては誰にも譲れない矜持を領民全員が持ち合わせている。


 そのため、式典の後は領地全土を上げての立食パーティーが行われる。

 食べる幸せを体に染み込ませ、後100年、さらに100年と平和を築くための、心の礎を皆に作ることが目的だ。


 経費のほとんどは領主が出す。


 領地全土が美味しい料理に舌鼓を打つ中、当然、その賑わいの中心地であるこのエントランスホールにも、様々な美味が所狭しと並べられていた。


 セルヴァラントは国内有数の貿易都市。その経済力は、国の中央部と比較しても見劣りしない。

 そんな領地の式典だ。各領地の要人や、国の有力貴族がパーティーに参列している。


 と、くれば当然、彼もまた招かざるを得ないということだ。




「素晴らしい式典にお招きいただき、感謝しているよ。フェルティナ」




 風邪でもひいてくれればよかったのに。


 にこやかな笑みを浮かべて現れたヴァレンシュタイン公爵に、フェルティナは声には出さず毒づいた。

 まあ、それも無理な話だ。優秀な使用人のおかげで、彼は生まれてこの方風邪などひいたことがないらしいから。


 精いっぱいの毒を心で吐き出すのがせめてもの抵抗。

 フェルティナがにこやかに微笑みながら「ようこそおいでくださいました」とヴァレンシュタイン公爵を会場へ案内した。


 そして、パーティー会場に着くなり、


「これはこれはヴァレンシュタイン公爵。お久しゅうございます。私目は——」

「初めましてヴァレンシュタイン公爵。私は〇〇領を治めている——」


 ヴァレンシュタイン公爵の元へ、貴族たちがあいさつ回りに伺った。

 呼んでいる以上、そういう場になるのは仕方がないのだが、立食パーティーの会場は、貴族たちの社会的な交流の場ともなっている。


「フェルティナ嬢も相変わらず見目麗しい。二人はいつ式をあげるのです?」


 ヴァレンシュタイン公爵側が諦めない以上、表上、二人は将来を約束した婚約者という扱いだ。

 貴族たちのあいさつ回りに、当然フェルティナも付き添わなくてはならない。


「王都では公爵家同士の派閥争いが落ち着かないからね。ことが収まり次第、すぐにでも式を挙げるつもりだ」

「そうですか。その時はぜひ私たちも読んでください」

「ええ。その時はお待ちしております」




 お願い他の公爵家の方々。もうちょっと争ってて。

 届くかどうかはともかく、祈らずにはいられない。


 挨拶に来る人々たちを捌き終えたのは、会場に来て1時間も経った頃だった。


「さて、声をかけるべき人には、一通り声をかけ終わったし——」


 ヴァレンシュタイン公爵が少し疲れた様子で息を吐いた。フェルティナも表情は崩していないが、疲れは確かに溜まっている。


 何より、今行われているのは立食パーティー。

 美味しい料理を目の前にお預けなど心に毒である。


 料理にさりげなく視線を寄せたフェルティナに、公爵が優しく微笑んで——


「——踊ろうか。フェルティナ」

「ええ。リードして頂けます?」



 ち・が・う・で・しょ‼



 ご・は・ん・が・さ・き・で・しょ‼



 そんな怒りが届くことなく、フェルティナはホールの中央でヴァレンシュタイン公爵の手を取り華麗なステップを披露した。

 二人が踊り終えたと同時に拍手が起こったが、空腹のフェルティナの耳には届かず、彼女は虚ろな目で視界の奥に移る、ローストビーフを眺めるのだった。


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