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南の蛮族料理人少女【カリュード】が戦斧を振り下ろして調理する  作者: 楠本恵士
第四章・異界大陸国の南方料理はとっても、ワイルドでデンジャラス
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第十一話・次の料理テーマは『恋する乙女の肉料理』

 次の第二戦料理バトルは四日後──テーマは【胸キュン♪恋する乙女の肉料理】カリュード側からは炎樹が出場して、コアゲハ側からは肉食のライオン獣形人『ミート・レオ』が出場した。


 ミート・レオが自信たっぷりな口調で、カリュードに言った。

「オレさまは草原や山を駆け巡り、さまざまな肉を食べて肉の味を知り尽くしている男……せいぜい、ムダな足掻きをするんだな……ガオォォ」


 ミート・レオが去ると、炎樹がカリュードに耳打ちする。

「……と、いうワケで今言ったモノ、バトル日までに用意できる?」

「エルフのマスターに頼めば、なんとかしてくれると思う」


 そして四日後の料理バトルの日がやって来た。料理バトルの円形闘技場(コロシアム)に、進行役の南方仮面少女の声が響く。

「先手、カリュード側の燃える炎の料理人、炎樹。自慢の料理、引っ提げて出てこいやぁぁ! カモ~ン」


 炎樹が作ったのは、巻き肉が皿に乗ったカレー料理だった。

 皿の中央に、パイ生地で作った固めのパンのようなモノを巻き込んだ赤身の肉ロール。

 まるで、マンガに出てくる原始肉のようにも見える。

 その原始肉が二種類の、カレー池の中に浸っている。

 レッドカレーの上に描かれた。甘めのホワイトカレーの渦巻き模様……まるで、ワイルドな見た目の原始肉と対比する、フランス料理を彷彿させる繊細さも兼ね備えた、肉料理だった。

 つけ合わせに、レザリムスで採れた、季節の温野菜も添えてある。


 長々と熱い口調で、料理説明をする炎樹。 

「料理名は『恋する乙女の肉々しいほど好きなカリー』──ライスを追加で盛って、肉ロールとカレーでボリュームを演出するコトも、五種類のカレー。

『イエローカレー』

『ブラックカレー』

『レッドカレー』

『グリーンカレー』

『ホワイトカレー』

と用意して、注文に応じて一種類や数種類のカレーを店やお客の自由な発想で、日替りで組み合わせるコトも可能だ……

もちろん、カレー以外にもホワイトシチューやハッシュドビーフのバリエーションも有り得る……揺らぎ形を変える炎のように変幻自在な肉料理、それが──あたいの『恋する乙女の肉々しいほど好きなカリー』だぁ!」

 仮面少女も、炎樹の勢いに押されてテンションMAXでしゃべる。

「実食! 審査員ども熱い魂の肉料理を喰いやがれぇぇ!」


「はふぅ……辛いけれど美味しいばぶぅ……ママの甘い母乳を飲みたくなった……ばぶぅ」


「この骨型をした、パイ生地のパンも面白いですね。崩してカレーと一緒に食べるのですか……少し辛口ですね、口の中が心地よく辛いぞぅぅ」


「ガガガ……肉も柔らかい、この肉はなんの肉?」


 炎樹が、取り出したパネルを見せる。そこには、背中を向けて肩ロース筋肉の誇示ポージングをしている二足立ちをした牛が写っていた。

「ガガガッ……筋肉(マッスル)牛でガガガ……筋肉トレを毎日している鍛えているレザリムスの牛だ、ガガガッ」

 炎樹が説明を加える。

筋肉(マッスル)牛の代わりに、筋肉(マッスル)豚、筋肉(マッスル)鳥、筋肉マッスル羊の肉を使う選択肢もある」


「続いては後手、ミート・レオ。カモ~ン、出てこいやぁぁ!」

 ミート・レオが出してきた肉料理は、煮込み料理だった。

 

 丸ごとの骨付きのリブ肉を、さらに肉で巻き。

 ゴテゴテの肉が山盛りの二郎系で、真っ赤くマグマのように煮えたぎる脂が浮かんだスープ。

 ニンニク集とハーブ集が、闘技場(コロシアム)に漂い、強烈な臭いに気分が悪くなった観客が、次々と医務小屋に運び込まれる者が続出する。


 会場が地獄絵図の中、ミート・レオが自信満々の口調で言った。

「料理名は『女は黙って喰え!オレの熱い肉の棒』だ! どうだ、ワイルドな肉料理だろう」

 口元をタオルで押さえた炎樹が、ミート・レオに訊ねる。

「その骨付き肉は、なんの肉?」

「知りたいか、北方地域に生息する雪アザラシの肉だ」

 水犬が、紙袋の中から雪アザラシの愛らしい姿を映したパネルを選び出して、ミート・レオに手渡す。

「おっ、気が利いているじゃねぇか……敗北を悟ったか、これがオレが調理した雪アザラシだぁ」

 

 ミート・レオが頭上に掲げたパネルには、雪上で寝転がっている。愛らしい目の生き物が写っていた。

 途端に、円形闘技場に沸き起こる大ブーイング。

「ブーッ、なんて可哀想なコトをするんだ!」

「ブーッ、その料理食べれない……ヒドイ、そんな可愛い動物を食べるなんて」

 大ブーイングの中で怒鳴る、ミート・レオ。


「ちょっと待て、おまえら! 調理される前の生きている肉は【可哀想】で、調理されて料理になった肉は【美味しそう】かよ!」


 審査員の評価も最悪だった。

「臭いを嗅いだだけで、胃もたれと胸やけがする……ばぶぅ」

「料理のネーミングが、どことなく下品です……見た目でも食欲が削がれます」

「…………ガガガッ……グェェ」

 食肉植物のラーメン屋店主は、強烈な臭いに枯れはじめる。


 審査員がジャッジする必要もなく、ミート・レオと『女は黙って喰え!オレの熱い肉の棒』は、円形闘技場から外に出されて強制退去させられた。

「ショクウゥゥだ! ガオォ!」

 必然的に炎樹の『恋する乙女の肉々しいほど好きなカリー』が勝利した。


 第三戦のテーマがコアゲハから発表される前に、風紋が全力でカリュードの挑戦を辞退させ。

 カリュードに、アチの世界での試験勉強を約束させた。


  ◆◆◆◆◆◆


 試験前日──息抜きではじめたゲームに、カリュードは、またしてもドハマりしてしまい。

 気づいた時には窓の外は明るくなっていた。


 そして、徹夜状態で挑んだ試験開始、数分でカリュードは爆睡した。


 試験の結果は、当然悲惨な結果になってしまい、カリュードの追試が決定して、ファースト料理人の風紋は頭を抱えた。


次の料理テーマは『恋する乙女の肉料理』~おわり~

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