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最強二人、現着

 道中――北風の平原。

 ハイドラの洞窟へ行くまでの最短距離を俺とライリーは駆け抜けていた。日中ということもあって比較的魔物の数は少ない。夜なら戦闘は避けられなかったかもしれないが、これなら基本無視して通過できる。

「……」

 隣を走る剣闘士を見る。

 街からここまで直線距離にして約三キロほどを走っているというのに息一つ乱していない。いや、そもそも俺についてこられる速度というのも驚きではある。昨日から今日に至るまで彼の身体能力には目を見張るものがあると思っていたが、魔法の波状攻撃をその身に受け続けたその直後ですらここまで動けるとは……。

「……? 俺の顔なんかついてる?」

「……いや、何でも。そろそろ着くぞ」

 そしておよそ五分ほど会話のないまま平原を走り抜け。

 到着したハイドラの洞窟。

 入口は隕石でも降ったのかというくらい巨大な大穴が広がっており、中はたくさんの水晶に溢れている。光源となっているその水晶には微弱な魔力がこもっており、ハイドラの洞窟の魔物の中にはそれを食らうことで突然変異した魔物もいるとか。

「気をつけろよライリー。試合とは違ってやつらは容赦なく首を取りにくる。それにここの魔物はセレモニーのやつとは比にならない厄介さだ」

「? そんなにか」

「ああ。なんせここは奴らの主戦場だ。戦い慣れた闘技場とは違って、魔物がもっとも力を発揮できる場所なんだ」

「なるほど。ここがあいつらのリングってわけね。ま、兄ちゃんもいるし大丈夫だろ?」

「……油断だけはするなよ」

 最後にそう念押しして、俺たちはハイドラの洞窟へ足を踏み入れる。





「らあっ!」

 ライリーの掛け声と鉄拳がフロストスパイダーに振り下ろされる。

 フロストスパイダーは死滅と同時に体内に濃縮されている冷気を破裂させ、その相手を凍結させる。フロストスパイダ~自体群れを成さなければいけないほど単体の力は弱いため、その代わりに与えられた反撃の能力。

 しかして、その凍結反撃もA級剣闘士の前には大した意味をなさなかった。

「つめて」

「……やっぱりあんたも大概バケモンだな」

 氷蜘蛛の凍結は近距離で食らえば並みの冒険者や魔物であれば内側まで凍りつくほどの凶悪さ……のはずだが。

「なんか言ったか?」

 ライリーはピンピンして何でもないように手についた氷を払っている。

「いいや。そういや、今更だが武器は持たないのか? 魔物相手なら何かと便利だぞ」

「武器ねえ……俺の力を存分に発揮するならシンプルな打撃のがいいとは思うんだよ」

「ならナックル系はどうだ?」

「……ま、こういうとこ来るの今回が最後だろうし、いいさ」

「そっか」

 言われて見れば確かにそうかもしれないな。

 ライリーの本業は剣闘士であって冒険者ではない。基本的に相手するのは人間なのだ。魔物相手であれば必要以上の攻撃力が求められるが、人間相手ではそうはいかない。殺さず、しかし相手を戦闘不能にするにはライリーの素の拳が一番なのだろう。

 それからしばらく洞窟の下層に向かって歩くこと数分。

「おお。でっかいなこれ」

 洞窟の壁面に突き刺さるようにある水晶に目を輝かせていた。

 まるで虹色に輝く巨大な水晶。透明感を保ちつつ、これまでの道にあったものと同じように微弱な魔力と光を放つそれは外界にもそうはないほどの美しさである。

 しかし、今はその美しさに呆けている暇はない。

「おいライリー……」

「ああ、悪い悪い。でも初めてみたらそりゃ驚くだろ?」

「……まあな」

 俺も昔、ハイドラの洞窟最奥に巣食う魔物討伐依頼の時にこれを初めてみた時はそれは驚いたことだ。あの時は冒険者になってだいぶ経ち経験値も見てきたものも無数にあったが、それでもこの綺麗に輝く美しさには目を奪われた。

「だが、遊んでる暇はない。もう後少しだ。行くぞ」

「あいよ」

 今更だが記憶を思い返してみればこの水晶の奥すぐ後。

 ハイドラの洞窟最奥はほぼ目の前なのだ。

「――」

 およそ三メートルほどあった洞窟の通路が、奥へ奥へと進んでいくにつれて徐々に狭くなってくる。間違いない。奴らはこの先にいる。

 そうして俺とライリー、二人が並んで通れるほどの道を抜け、とてつもなく広い空間が広がっていた。



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