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奪われたものを取り返す



「俺一人で行く」

 警察署内作戦会議室。

 剣や軽装を身につけた俺はレストレードたちに告げる。しかし、その発言は当然のように却下された。

「ダメに決まってるだろ銀狼。相手の戦力や狙いが全くわからねえ以上いくらお前さんでも単独で行くのは危険だ」

「悪いが銀狼さん。俺も警部の意見に賛成だ。あんたらしくもない、一旦頭を冷やせよ」

 レストレードとライリーの言葉で頭にのぼっていた血が少しだけ冷めやむ。

「……ああ、すまない」

 引き止めてくれた彼らに頭を下げ、とりあえず会議を進めることにした。

「とりあえず情報を共有しよう。銀狼、例の女……仮面の魔女リリスについて教えてくれ」

「……あの女は魔女。文字通り、さまざまな魔法を扱う。喧嘩祭りで見たのは、氷、炎、風、雷、どれもかなりハイレベルな練度だった。おそらくA級冒険者並みの実力は最低でもあると思う。それと、最後に見せた黒い霧を用いた空間転移系の魔法。あれに関してはさっぱりわからん」

「要約すると化け物並みに強い魔法使いってことか。だが魔法だけなら銀狼で十分相手できるか?」

 レストレードは俺の魔力特性を知っている。莫大な魔力故に魔法攻撃を無効化する不可侵を展開できるということを。

「……いや、そうとも言い切れない」

「どういうことだ?」

 知っているからこそ、俺の言葉にレストレードは疑問を抱く。

「あの女に一撃浴びせようとした瞬間、見えない衝撃波みたいなものが俺を吹っ飛ばした。幸い大した威力はなかったんだが、俺の不可侵が機能しなかった」

 ただの打撃とも考えにくいからおそらく魔法の類なのは間違い無いのだが、いかんせん俺の不可侵で防げなかったのだけがどういう理屈なのかわからない。

「なるほどな。だが、お前さんが大した威力じゃないと判断するならそこまでの脅威と思わなくてもいいんじゃないのか」

 まあそれはそうなのだが、不安要素はできる限り消しておきたいという冒険者の性が出てくる。

 すると、話を聞いていたライリーがスッと手を挙げる。

「なあ、横から悪いが、お客さんを庇ったあれは違うのか?」

「……ああ、そういえばそうだな。あれもか」

 あの時は必死で気づいていなかったが、確かに今思えばあの火球も不可侵を破ってきた。

「あのレベルの魔法に俺の不可侵を破る謎の術も混ぜてくるとなると、流石にまずいかもしれないな」

「そうか……。まあどのみち戦闘に関してはお前さんに任せる他ない。頑張ってくれよ英雄さん」

「ああ。もとよりそのつもりだ」

 奴らの狙いがなんにせよ俺がどうにかしないといけない。切り裂き魔の一件に片がつき、しばらくは休めるだろうと勝手に判断して油断していた。

 その驕りがアイリスを人質に取られるという結果を生んだ。完全に俺のミスだ。そのツケを払わなければならない。

 決意と覚悟を新たに、自然と拳に力がこもる。すると、ポンっと俺の肩に誰かが手を置いた。振り返ると、

「なあ銀狼さん。俺にもお嬢ちゃんを救う手伝いさせてくれないか?」

「あんたがいたら百人力だが……先に言っとくぞ、奴らは人の命を簡単に奪えるような外道だ。人の心なんて持っちゃいない。当然、死ぬ可能性だってある。それでもいいのか?」

「あの魔女は俺の大切なお客さんを危険に晒したんだ。そのツケを払わせるくらいはしないといけない。それがチャンピオンとしての義務で責務だ」

「……ふっ、かっこいいな。さすがチャンプだ」

「よし。ならハイドラの洞窟に向かうのは銀狼とライリーの少数精鋭でいこう。お前ら最強の二人ならまず負けないだろう。俺たち警察部隊は街の警備と警戒を強める。転移系の魔法の使い手相手に意味あるかはわからんがな」

「いいや、警部たち警察のおかげで住民は安心できるってもんだよ。街はまかせた」

「ああ。警察の威信にかけて必ず」

 二人は言葉と共に互いの拳も交わす。俺はレストレードとの関わりも以前の切り裂き魔事件の時とこの前の一件、その程度だしライリーとは殴り合っただけの関係性だ。小闘技場での会話から、俺の知らないところでもこの街の住民、剣闘士と警官としての関わりがあるんだろうとわかる。

「よし、じゃあ行くぞライリー。ハイドラの洞窟の詳細は向かう途中で話す。今は少しの時間も惜しい」

「ああ、わかった。行こう」


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