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思い出

作者: 山野いもお

私は一目見た時からくらっとした。


入学式で目に留まったルイくんという男の子は、猫目で、いたずらっぽくて、人形みたいにまとまった顔だった。

情報通の小学生時代からの友達にそのことを話すと、あんなに綺麗な顔でも、今の年でお酒を飲むんだと言う。私には、ルイ君が時々見せるニヒルな表情と未成年飲酒という冷たさのギャップがたまらなく思えたのだった。


ーーーー


四時ごろに散歩をしていると、がらんとした公園で、屋根付きの休憩ベンチにすわるルイくんを見かけた。なんでか分からないけれど気分が浮いていた私は話しかける。


「ハロー!なにしてたの?」

「おっ、はろ。ぼーっとね。してたんだ」

ルイ君はぼーっとしたまま、でも目をぱっちりさせて答えた。

「へー。私は散歩だよっ」

「このへん、いつも通ってるの?」

ルイ君は、また猫目をぱっちりさせて聞いた。

「ひっさびさに通ったとこ。毎日行き当たりばったりなんだー。」

「へー。なんか楽しそう」

「楽しいよ!ルイ君は時々ここに来るの?」

「うん。家じゃ落ち着かないときにね」


それからしばらく話した。学校のことや、少し昔のこととか。

ルイ君は水筒をベンチに置いていて、ちびちびと飲んでいる。飲み口から運ばれる甘酸っぱい匂いの記憶に、ルイ君が結びつく。


しばらくしてルイ君がトイレに行ったとき、魔が差した。

水筒を私の口に近づけて、さっきルイ君がしていたようにちょびっと飲んでみた。


ブドウグミを液体にしたようなその味の飲み物は、たぶんワインだったんだろう。

今でもワインを飲むと、その甘い思い出にくらくらする。

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