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8話〜『二極』と『四元素』の魔法〜

属性の土属性を地属性に直しました。

 梓美がルート家の住み込みになって半月が経った。

 ミアルは庭の菜園で薬草の世話をしている。

 庭で栽培できる薬草は限られているが常に材料を確保できる利点は大きい。パンに練り込む薬草もこの菜園で育ったものだ。防犯も兼ねて菜園には養蜂箱を設置しており、巣に近づく者に容赦しない蜂から身を守る手段がないと立ち入りができなくなっている。

 飼われている蜂は基本大人しいものの、巣に近づく者に対しては苛烈な攻撃を加えるため飼育が難しい品種であり、養蜂箱の設置後暫くは薬草泥棒が襲われ、その治療の為に薬を売るという相手の自業自得ではあるもののマッチポンプじみた出来事が多発していた。


 ルルの提示した梓美の採集同行の条件の一つはこの蜂の巣箱から蜂に刺されることなく巣板を取り出して蜂蜜を採集することだった。

 蜂から身を守る為には何かしらの魔法を使う必要があり、ミアルの場合は風の魔法の防壁の展開と水の魔法で蜂の嫌う匂いの薬液を周囲に霧状に散布して寄せ付けない方法をとっており、菜園の世話をしている今も常に風の魔法で身を守っている。梓美も何かしらの手段で身を守る手段を身につけなければならない。なお、生きた動物が侵入できない"奈落"を用いて巣箱だけを回収する方法は禁止されている。


 その梓美は既に全身の"身体強化"を習得し、今は村中の走り込みを行っている。

 元々インドア派だったという梓美だったが目標があると変わる物で買い出しの日の晩から腹筋や腕立てを始めた。

 最初は各10回がやっとだったが「ウォーキングみたいに動かし続けた方がスタミナがつくのでは?」と考え一度に両腕等の2箇所以上への"身体強化"を身につけてからは強化した段階で負荷を減らしつつもその分ひたすら数をこなす方針に変えた。


 これは梓美のステータスが身体能力より魔力が優れているため鍛えるなら"身体強化"により補える筋力より持久力に比重を置く方が有意義だと感じたためだった。

 常に魔法を使い続けるため長時間の魔力コントロールの訓練にもなる一石二鳥の訓練方法を確立させ、全身に"身体強化"をかけられるようになってからはその状態で朝はランニングをするようになった。


 ミアルが菜園の世話を終えた頃、急に薄暗くなる。空を見上げると巨大な魔法陣が浮かんでいる。


「あ、梓美帰ってきたかな」


 梓美の太陽光を魔力に変換して補充する"陽光変換(ソルコンバート)"だ。何度も使ううちに使用時の魔力の流れを覚え自力でも魔法陣の構築ができるようになったためスキルの構築能力だけでは遅かった発動までの時間を短縮できるようになっていた。流石に半月も晴れる度にこんな魔法を発動していれば他の村人に気づかれない方がおかしく、村では周知されている。

 ミアルが魔法陣の中心の真下に向かうと走り込みを終えて全身汗ばんだ梓美が息を整えながら身体を拭いていた。


「おかえり梓美。もう"身体強化"は完全にマスターできてるね」

「ただいま。半月でこれくらいって習得早い方?」

「ボクは全身の強化に半年くらいかかったんだけどなぁ〜。《舞台装置》スキル便利すぎじゃない?」


 ミアルも一般からすれば習得はかなり早い方であったが梓美はそれ以上である。本来自分の感覚頼りに魔力を操作して魔法の完成度を上げなくてはならないところを梓美は《舞台装置》スキルの魔法構築を利用して魔力操作の手本にしているため常人より習得が早い。加えて"陽光変換"で魔力回復を図れるため練習量を多く確保できている。


「自分の魔力感覚は初日の同調のおかげで感じやすいのもあるかも。それにミアルが《魔力知覚》で魔力の扱いが変なところは指摘してくれるのも大きいよ」

「そうだね。ちょっと悔しいけど梓美が力をつければ一緒に採集行けるようにもなるしそれは嬉しいかな」


 あっという間に自分に追いついてくる梓美に多少思うところはある。しかし、一緒にいられる時間が増えることが喜ばしいのも本当だ。

 それに今やっているのはあくまで基礎であり、そこからの経験と発展こそが大事になるだろう。


「さて、それじゃミアル、お願い。今日こそ避けきってみせるから」

「そう簡単にはいかせないよ。ボクだって先輩の意地があるからね」


 そう言って2人は距離を置く。ミアルが手を前に突き出すの複数の小さい魔法陣が構築され"風弾"の発射準備を整える。

 これはミアルから放たれる"風弾"を1分間回避なり防御なりする攻撃への対処や瞬発力を鍛える訓練だ。これまで終わらせて梓美の朝の鍛錬は終わる。




 ◇




「また駄目だったー!」

「段々避けれるようになってきて悔しいのはボクなんだけど!"風弾"蹴り飛ばすって"身体強化"じゃないでしょ!」

「あれのこと?"身体強化"の魔力を身体の表面を装甲のようにして纏ってみたらできたの。まあ蹴った後の隙をボコスカ撃たれて駄目だったけど」

「直接手足で打ち返すのは良くないわね。それが毒や呪いの塊なんてこともあるから危険よ」


 そして朝食時に反省会を行う。元冒険者のルルの意見も交えることで改善点を洗い出す。


「さて、そろそろ梓美ちゃんに魔法の扱いについて教えましょうか」

「本当ですか!」

「ええ、もう"身体強化"を物にしているから魔力コントロールは大丈夫でしょ。とはいっても私もミアルも光と闇の属性適性はないから実演はできないけどね」


 魔法には6つの属性がある。火炎や熱を司る『火』、液体や冷気を司る『水』、大気の流れを司る『風』、大地や鉱物を司る『地』の『四元素』とも呼ばれる四属性と、互いに対となる『光』と『闇』の『二極』と呼ばれる二属性である。

『二極』は精神や魔力等に作用する特性も持つ。光は文字通り光を操る魔法だけでなく活性や回復の特性を、闇は直接魔力を操ることに長ける他沈静や再生等の特性がある。

 しかし物理的な効果は『四元素』に劣るとされており、直接戦闘向きな属性ではないとされている。


「単純に光をを収束させて熱線にする人もいたけど速度以外なら火属性の方が魔力に対しての熱量の効率は良さそうだったわ。『二極』って光なら武器に纏わせたり自分や他者を強化したり、闇なら精神干渉で敵を弱らせたり取り乱した味方を落ち着かせたりってのが多かったわね」

「所謂バフやデバフ寄りなんですね」

「時折複数属性を組み合わせた魔法の使い手とかいるけど基本的に『四元素』のどれかに『二極』を組み合わせるとかなり強力になるって話よ」

「冒険譚によく出てくる光で伸びた剣ってのも火、あるいは風の属性との組み合わせだって聞くよね」


 ルルの話にミアルが付け加える。『二極』、特に光属性で強化された魔法やスキルは冒険譚の決め技として定番だ。多少脚色はされていても『二極』による『四元素』の強化は強力だ。しかし、『二極』はただでさえ適性持ちは『四元素』のそれより少なく、しかも一つの属性しか適性がない場合が多い。

 だから『二極』と『四元素』の両方の適性を持つ者は単体で攻撃にせよ治癒にせよ強大な力を振るえる可能性を持つ為時に『英雄の素質』と呼ばれる。

 その点で言うならば梓美の『二極』の両方のみというのはかなり希少な適性であるものの、『英雄の素質』足る力を振るえるほどではない。


『私見事に『四元素』に適性ないんだよね。ちょっと残念。派手な魔法でジャイアントキリングってちょっと憧れてだったんだけど」

「梓美は人間族だから適性がなくても『四元素』を使えないことはないとはいえ元々『二極』と『四元素』両方を持つ人には劣るだろうね」

「まずは梓美ちゃんが適性魔法を十分に使えるようにすることを優先するわ。『四元素』はその後、やるにしても1つに絞るか浅くかのどちらかね。器用貧乏を悪く言うつもりは無いけど長所を伸ばさないのは良くないことよ」


 とはいえ、とルルが付け加える。


「私もミアルも適性がないし適性者が少ない『二極』に関する教材ってうちには無いのよ。だからどういう魔法があったかを教えてそれを《舞台装置》スキルで再現して使い方を知ってもらうつもりだけどね」



 ◇



 梓美がルルの見たことのある限りの『二極』属性の魔法を習得したのはそこからさらに二週間後だった。元々数が少なく魔力操作も"陽光変換"に比べれば容易な物が殆どであった。


「思えば"陽光変換"って結構難易度の高い魔法だったんだね」

「真っ当な手段で完成させようとしたらどれだけかかるかわからない魔法だと思うよ、あれ」


 魔法の難易度はその術の規模とその術内で行われる工程によって決まる。太陽光を吸収し収束、術者に合わせた魔力に変換、供給する"陽光変換"は初心者が覚えるには規模、工程共に本来難易度が高すぎる魔法である。それをスキルの補助をなぞりながらとはいえ繰り返し行使したおかげで複雑な魔力操作を身につけることができていた。


「さて、あとは()()をクリアすれば一緒に採集に行けるんだね」


 そう、これから梓美が挑むのは薬草菜園の養蜂箱である。菜園に近づけないほど巣の防衛の為に凶暴化する蜂から魔法で身を守りながら巣板を取り出さなければならない。

 かなり物騒な蜂だが巣に近づかなければ非常に大人しいので特に嫌われることなく村中から花の蜜や花粉を集めてくる。そして様々な花の香りが複雑に混ざった濃厚な蜂蜜はとても美味であり、蜜が詰まったままの巣を丸ごと食べるのはミアルにとって極上の贅沢である。


「梓美、絶対成功させてね!」

「よだれ垂れてるよ?」


 ここ最近はそろそろ蜜が貯まってきたころなのだが梓美の試験の為に蜂蜜を採ることを許可されてなかったのでミアルも成功を祈っている。

本音は一つ。はやく巣蜂蜜食べたい。


「・・・よし!」


 気合を入れて菜園に踏み込む梓美。


 ーーーーブゥン!


 一斉に蜂が羽音を立てて威嚇する。これを無視すれば容赦無く襲ってくるだろう。

 羽音に一瞬怯むが、すぐに魔法を発動させ、庭園全体に魔法陣が展開される。


("眠りの帳"!)


 発動したのは闇属性の魔法。特定領域内の生物の意識を奪う魔法だ。本来は一人が入る程度に発動範囲を狭くして発動する魔法であり、ここまで広範囲だと人間どころか野ウサギにすら効かないだろう。ネズミやモグラに通用するかどうかだが、3cmにも満たない蜂には十分であり、次々に蜂は静かになっていく。

 後は念のために自分の身体を覆うように魔力の障壁を展開して巣箱から巣板を取り出す。

 今日まで梓美が巣箱への挑戦を見送ってたのはこの全身を覆う魔力障壁と"眠りの帳"を同時に維持するのに技術的に不安があったからだ。二種類の魔法を同時に発動し続けるのは難度が高く、もし"眠りの帳"の維持を失敗すれば意識を戻した蜂に群がられてしまう。女子にしては珍しく虫そのものは大丈夫な梓美だが蜂の大群に襲われるのは勘弁なので練習を重ねていた。


「ミアル!これで私もやっと採集に行けるよ!」


 満面の笑みで梓美が駆け寄ってくる。ミアルも笑顔で、


「やったね!それじゃ、早速戦利品をいただこう!」


 視線がちらちらと巣板に向いている。


「ミアル〜〜〜?」


 ジト目で睨む梓美だったがこの後梓美も巣蜂蜜の美味しさに陥落するのであった。


巣蜂蜜、某鬼退治漫画で知った方も多いのではないでしょうか。蜂蜜商品を扱うお店で巣蜂蜜が一欠片乗ってパフェ並みに値段が上がってるソフトクリームが売ってたので気になって買ってみたことがあります。本当に食べる蜂蜜ですあれ。


『面白かった!』

『続きが気になる!』

『ミアルと梓美をもっとイチャつかせろ!』

他諸々という方がおられましたら大変励みになりますので感想やブクマ、広告下の評価(⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎になってるやつ)を宜しくお願いします。

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