8話〜護衛依頼・小休止①〜
久々の投稿です!
スランプにさらに色々重なってしまい申し訳ありませんでした……
夕暮れ前に街に到着した一行は道中の疲労の回復と物資の補充の為、再出発を明後日とすることにした。これは主にマオシャへの配慮だ。
冒険者として活動しているミアル達の体力ならば翌朝にでも出発は可能なのだが、道中馬車に乗っていたとはいえ商人の娘として育ってきて人並みの体力しかなく、そもミアルよりも年下のマオシャにそれは酷な話だ。
そこでマオシャは父ケビンスと共に翌日は子爵領の市場を見て回る勉強とすることにした。
よって、ミアル達も明後日の朝までフリーとなる。
「はい、メガディノラプターの討伐を確認しました。こちらが報酬金です」
まず最初に一行が向かったのは冒険者ギルドだ。道中で子爵家令嬢セリア一行の馬車を襲っていたメガディノラプター率いる群れの討伐報告とその素材の換金が目的である。
「少々前になりたての盗賊と思われる者達の遺体が纏まって発見されていたんです。損傷具合からしてディノラプターの餌になったと考えられていたのでそろそろメガディノラプターに成長しているのではとギルドも警戒していました。この一体だけとは限りませんが討伐されててよかったです」
さらりと述べる受付に顔を引き攣らせるミアルだったが、ここでベニーライン辺境伯領にまつわる、とある話がある。
『辺境には盗賊がいない』
これは治安が良いという話ではない。単に盗賊に身をやつす様な者は大半が辺境に隣接している魔の森から出てきた魔獣の餌となってあっという間に死ぬからである。時折魔獣の出没する辺境の村や街の外で野宿できる者ならば真っ当に冒険者として魔獣を狩ったり護衛するなりすれば生活に困らないだけの金は稼げる。
それすらできず生活に困窮し他者から盗むという考えを持つ者が街の外で行商人、あるいは村を襲おうにも潜伏中にディノラプターやゴブリンに襲われるのが殆どだ。また、村にも冒険者業を引退して故郷に戻った者が狩人や自警団として残っている場合が多く碌に戦闘経験も積んでいない小悪党なぞ返り討ち。例えばミアルの故郷ニオクス村に手を出そうものなら村に踏み込む前にミアルの母ルルに毬栗の如き矢だらけのオブジェになるか彼女が外出中でも元冒険でもあった村長(婿入り)ロンヌに休耕地の肥しにされること間違い無しだ。おかげで自警団の立つ瀬が無いとぼやかれたりしている。
閑話休題。
そうして大きくふるいにかけられ運良く残った一握りの実力を持った者、主に犯罪行為によって冒険者としてのライセンスを剥奪された者が殆どだが、それはかなりのレアケース。そして略奪に成功したとしても辺境伯お抱えの実力者揃いの騎士団や依頼を受けた冒険者によってすぐに討伐されることとなるのだ。
なので辺境では『カタギにならなきゃあとは肥やしか魔獣の餌しか未来が無い』という一見地球での『嘘ついたら閻魔様に地獄に落とされる』類の様な教えが脅しでもなんでも無く、ただの事実として認識されている。
よって辺境育ちのミアルにとってそのディノラプターの犠牲となったと思しき盗賊に抱いた感想はつまり
「本当にいるんだ盗賊になるなんてそんな阿呆な人」
「いやそっちなの!?」
思わず梓美がツッコむがこれが辺境での常識なのだ。目を丸くする梓美とそんな梓美に首を傾げるミアルのやり取りをフィリスは呆れた目で見つめている。
「一応言っておくが辺境が人にとって危険すぎる環境なだけだからな?いや、他のとこじゃその分盗賊の被害も出るしさほど変わんねえか?ともかく、魔の森とか他の魔獣の住んでる領域から離れればその分代わりに盗賊みたいな『人』と殺りあうし、依頼もそういうもんが増えてくることになるからな。そこは気をつけておけ」
「あー……道理で辺境のギルドに盗賊みたいな対人の捜索や討伐依頼が殆ど無いと思ったら」
フィリスの言に納得する梓美。辺境において盗賊は討伐される前に自然によって淘汰されていたのだ。
◇
換金を終えた頃には日もすっかり暮れており、何となしに目についた酒場で食事を摂ることにした一行。そこで梓美が先の冒険者ギルドで疑問を口にした。
「そういえば私達、こんな小娘だらけのパーティーなのにやっかみとか因縁つけて来る人いなかったよね?」
「え?そんな人いるの?なんかヒソヒソ話してた人はいたけど」
「ああ、確かに辺境じゃ実力さえ認めれば誰がどんなナリでも余程不自然な格好でも無ければ気にしないもんだからミアルは知らないか」
常に危険と隣り合わせの魔の森を活動場所とする辺境、特にアダマートの冒険者達は他の優れた功績を挙げた者をやっかむ暇があるなら自分が明日も生きる為に腕を磨くか自分達の戦力に取り入れるかを考えるだろう。しかし、それは世間では少数の部類だ。そのことをフィリスもアダマートに拠点を移す前に経験済みだ。
「今梓美が言ったみたいに自分より若い、弱そうな奴を威圧したり蹴落とそうとする連中も辺境の外じゃそれなりにいるな。自分達より成功するのが気に食わなかったり依頼を持ってかれるのが不都合だったりとかな。あと自分より弱そうな異性にちょっかいかけたりとかな」
「?異性?女に手を出すんじゃなくて?」
「そっか。同じ種族間なら女の方が力が弱いけど種族が違えばそれも逆転するから組み合わせ次第じゃ女が男に手を出したりするんだ」
梓美の疑問にミアルが先に気がつく。同じ種族間なら基本的に筋力で劣る女性が弱者と見られ被害者の場合が多くなるが、これが多種の種族となるとやや異なってくる。例えばエルフや兎系の獣人族の様な筋力に乏しい種族、個体差によっては人間族も例え男だろうと爬虫人族や獅子や虎、熊系の獣人族、竜人族や背丈の都合上難しくなるがドワーフ族も女性側が相手を力ずくで組み伏せることはできる。
人型種族はやはり同種族の種族を性的対象に見るのが多いがあくまでその傾向が強い程度。特に命のやり取りの場面が多い冒険者が昂りを鎮めようとするのに男も女も無いのがこの世界だ。
もっとも、欲求が強いのは男性に多く、なおかつそれ以上に精神的抵抗が強い女性の方が被害者となる場合が多いのは間違い無いが。
「まあそんな感じだ。とはいえ熊はともかく獅子や虎みたいなでかい獣系の獣人族とか竜人族は貴族階級の血筋に多いらしいからあまり冒険者では見ないけどな。で、腕っ節の強い爬虫人族のあたしを狙う奴は種族レベルで限定されることになる。抵抗されて怪我しやすい奴に手を出すくらいなら自分より弱い奴を狙うのは狩りでも同じことだからな」
「あー、フィリスは一見手を出したら怪我しそうだしむしろ襲って来そうな威圧感出す時あるもんね。実は打てば響いて可愛い」
「何か言ったか?」
「何も言ってません!」
ギロリと睨まれて発言を取り下げる梓美。
「とりあえずフィリスがちょっかい出されにくいのはわかったけど何でボク達は問題無し?フィリスと一緒にいたから?」
ミアルが疑問を述べたタイミングで料理が運ばれてくる。給仕は先程も少し話題に出ていた熊の獣人族の女性だ。
「それはお二人の装備を見たからでしょうねえ。何の魔獣を使ったかまではわからないけれど魔獣の素材を多く使うのは辺境で狩りができる奴に多いんです」
ミアルの防具、梓美の外套には獣王竜の毛皮が使われている。並の獣のそれとは一線を画するそれを見れば少なくとも魔獣の素材で作られた物とわかる者は多い。それこそこうして隣領の酒場の給仕でもわかる程度には。
「辺境の冒険者は魔獣ばっかり相手するからやることが大げさなんですよ。女性に酔った勢いで手を出したらその女性も酔ってて風魔法でうっかり店ごと吹き飛んだ事件もあるし見た目非力そうなエルフ族の女の子に手を出そうとした爬虫人族の大男が何軒も先まで"身体強化"で殴り飛ばされたり、ね?他にもチンピラ撒く為に魔獣素材で作った催涙煙幕を街中で容赦なくぶっ放して被害が拡大したこともあったっけ?皆口を揃えて言いますよ?『地図ごと消されたくなかったら辺境出身に手を出すな。装備以外で判断してはならない』ってね。はい、注文の品ですよ。どうかこの店周りで騒ぎを起こさないでくださいね?」
ごとごとと三人の料理を並べながら前例者の所業を語って去っていく給仕。地図ごと消される、というのは周囲の被害で地図を描き直す必要があるかもしれないという意味だ。
「つまり、私らヤベー奴認定?」
ふと、ミアルが周囲に耳を済ませてみると「いいか、目を合わせるな。特に酒を飲んでたら気をつけろ。何が連中の気に障ってこの店が瓦礫の山になるかわかったもんじゃねえ」とか「今でも簡単に思い出せるわい。あの目と鼻と口の中に残る悪臭と激痛とえぐみと苦みは。うっ、食事時に思い出すなんて……もう二度とあんな物を撒かせちゃいかんしバカ共のせいで撒かなきゃいかん状況にしてもならん。だからこの街の治安はしっかり守るんじゃぞ」といったヒソヒソ話ばかり耳に入ってくる。思えば冒険者ギルドでのヒソヒソ話も何か近くに猛獣がいるかのような内容ばかりだったことを思い出し、それが自分達のことだと理解してしまう。
「先輩は一体何してくれてるのかな!?」
「それで余計なちょっかい出されないと考えればいいだろ」
ちなみに、辺境出身の冒険者の所業は色んな人が色んな場所で起こしているのだが先程給仕が述べたのは全て同一の人物による物であり、今はとある村で薬師を営む母親だったりするのだが、それを知る者はこの場にはいない。
勿論、普通に大人しい辺境出身もいます。個人毎の振れ幅は大きいですが。
『面白かった!』
『続きが気になる!』
『もっとバトルを!』
『もっとイチャイチャを!』
他諸々という方がおられましたら大変励みになりますので感想やブクマ、広告下の評価(⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎になってるやつ)を是非宜しくお願いします。感想貰えたりブクマが増えていると大変励みになります!




