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3話〜護衛依頼①〜

 魔獣と一般的な獣の違い。それは魔力を扱えるという一点に尽きる。

 魔力を用いて自身の肉体の強化、あるいは魔法による攻撃を行う等の魔力行使によって生存競争を勝ち抜けるよう進化したのが魔獣なのだが、引き換えに魔力保持の為に同系統の獣よりも多くの食料、あるいは魔力を含有する食料を必要としている。魔の森の植生は深層に進むにつれて魔力を多く含有するからこそ深層で竜を含む大型の魔獣による生態系が保たれているのだ。

 つまり、魔の森から離れれば魔力を含む餌にありつける機会は減ることとなり、強力な魔獣にとっては棲みにくくなる。そして、魔の森の外の街道くらい離れてしまえば、


「あまり強い魔獣来なかったね?ちょっと意外」


 雑魚しか現れないのである。

 アダマートを出発して半日、現在は日も沈んで来た頃合い。ミアル達は野営の支度を進めているが、日中に馬車を襲って来たのは魔獣では無い普通の狼や熊ばかり。魔獣もディノラプター程度であり馬車の上から警戒しているミアルにすぐに感知されては魔法による威嚇射撃で退散していった。これにはミアルも少し拍子抜けである。

 もっとも、初の魔の森で中層クラスのシェルヘッドベアに遭遇し、その後も何かと大物を相手しているのでミアルと梓美の感覚がおかしくなっているだけなのだが。


「いやいや、こんな街道に君達が普段狩っているような魔獣に来られては辺境での輸送は成り立たないよ。最悪でもメガディノラプターやホブゴブリンといった所だよ」


 朝から現在まで馬車を引き続けた馬を御者と共に労っているケビンスが苦笑いしながら肩をすくめる。

 魔力を有する餌が少ない魔の森の外ではメガディノラプターやホブゴブリンまで成長してしまうとその体に十分な魔力を摂取できるだけの餌にありつくのが困難になる。殆ど魔力を有さない羊や馬等の家畜では食事で得て回復した体力を魔力に変換するという、直接魔力を含む食事を摂るよりもかなり効率の悪い手段でしか魔力を回復できず、仮にその手段をとるにしても消化が間に合わない程の量が必要となる為現実的では無い。

 意外にも人の方が魔力を保有しているので、成長前に魔の森の外に進出、上位個体に成長したそれらは少しでも効率の良い餌として人を好んで襲う傾向が強く、凶暴性も上だ。それでも慢性的に餌の質が良くない環境の為か魔の森に生息する個体より戦闘能力はいくらか弱いとされているが。


「魔の森の外の安全が確保されているのは帝国、特に魔の森側の辺境が魔獣狩りに力を入れているからですね。他の国ではシェルヘッドベアや中型ワイバーン程度なら普通に魔の森の外で被害が出るそうですよ」

「ああ。今じゃどうか知らないが、あたしがムロアウィールドで冒険者始めた頃は魔の森の外でもシェルヘッドベアが出るくらいだった。とはいえ魔力を含む餌は外縁部で最低限摂って腹は弱い獲物が多い魔の森の外で満たすから気の荒さはともかく強さはアダマート(こっち)の魔の森にいる奴の方が上だな。ムロアウィールドの街道付近に出てくる奴に慣れてるとこっちの奴の首を切るつもりが全然刃が通らなくて死にかけるってのはよく聞く話だ。あの時はあたしも肝が冷えたな」

「成程、道理で普通の獣が駆逐されてないわけね。魔力を含む餌を十分に摂れないと魔獣は弱体化しちゃうから、物さえあれば特に質に拘らない獣の方が有利な場合もあるのね」


 マオシャとフィリスの説明に梓美は合点がいったという風に頷く。魔の森の様な魔力を補うのに困らない環境ならば強い力を持つ魔獣が有利だが、逆に限られた環境下でしか生存できない欠点も抱えている。だからこそ、この世界の動物全てが魔獣という訳では無いのだ。

 その点で見るなら小型だが、それ故にゴブリンを一体仕留めればそれで十分過ぎるほどの魔力を補うことができ、その脚力から並の獣では狩ることの難しいククラプターは生息域を広げる上では中々理に適った進化を遂げていると言える。惜しむならばその肉が美味し過ぎるので見つかり次第人に狩られ、思うようには数を増やせない点か。


「ところで梓美さん、今作っている料理は一体?」


 パーティーの料理担当である梓美が煮込んでいる鍋からはスパイシーな匂いが漂っている。根菜や肉、豆類を煮詰めている様だが、マオシャにとっては初見の料理である。鍋の脇で火にかけられている壺の様な調理器具も目を引く。


「カレーっていう料理よ。香辛料を組み合わせてスープに味付けした感じの料理なんだけど、私はそのスパイスに色々混ぜてペースト状にしたのをスープに溶かして全体的にとろみをつけるタイプが好きね」

「ほう?異国の料理かね?」


 商人としても何かを嗅ぎつけたケビンスが梓美が木べらでかき混ぜている鍋に近づき、手で仰ぐ様に匂いを嗅ぐ。


「んん?なんか薬草の匂いも混ざっていないか?確か薬草には無資格で扱ってはいけない物もある筈だが……」

「香辛料の調合はボクがしたから大丈夫だよ。御察しの通り梓美が薬草も使おうとするからちょっと危なっかしくて」


 地球でも香辛料の一部には漢方薬としての用途があるようにこの世界でも香辛料に使えそうな香りを放つ薬草は存在する。しかし、扱いには薬師の資格が必要な薬草もある為、スパイスの調合はミアルの担当だ。


「それならば安心して食べれそうですな。効能は如何です?」

「今回のは味と香りを優先してるから微々たる物だけど滋養強壮に血行促進。一応解熱作用もあるけどそれ以上に刺激物のレッドチリを使ってるから胃が弱ってる場合の多い風邪の時には不向きかな。ケビンスさんは見たところ大丈夫そうだけど、辛いのは問題無いかな?」

「ええ、大丈夫ですとも。楽しみにしていますね」


 にっこりと微笑むケビンス。しかしその目は未知の存在の商業価値を見定めんとする商人のそれだ。あれ?ちょっと面倒くさいことになる?とミアルは内心で思うのだった。


『面白かった!』

『続きが気になる!』

『もっとバトルを!』

『もっとイチャイチャを!』


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[一言] カレー万能説。 カレーで異世界無双やーw
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