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挿話 ~二人の宝石選びその3~

前二つ分の長さになってしまった……

 なんとかターシャを再起動させて改めて隕石内のマギキウムライト、便宜上『メテオマギキウム』と呼ぶことにしたそれの価値を確認して貰ったところ、透明部分もダイヤに匹敵し、色の濃い箇所は希少性や美しさだけでなく、マギキウムライトとしての魔力貯蔵量、そして一定量魔力が貯まった時の色の変化から最上級クラス、特に『ネビュラマギキウム』と呼称することにしたインクルージョン入りの物は白金貨単位の価値は下らないとのことだった。

 なお、梓美達が加工した二層構造の宝石は中心に大きくネビュラマギキウムを用いており、それを保護する高度な魔力操作による錬成によって不純物を取り除かれた透明部分といういいとこ取り、さらに台座は隕石内の希少金属による合金を用いた特別製な為に価値が上がり過ぎて逆に売り物にならないレベルと化しているというのがターシャの見立てだ。無論、梓美は手放すつもりは無いのだが。


 同サイズでネビュラマギキウムと同等の価値がある鉱石はターシャには思いつかず、マギキウムライトとしての魔力貯蔵性を無視すればなんとか並ぶ鉱石は数種類上げられる程度、例を挙げるなら太古のドラゴンの甲殻や鱗が化石化、さらに何かしらの影響でオパールの様な輝きを持つに至った『竜骸玉』、シメレア帝国からは離れた深層に住むという巨大な鳥類の魔獣ヴェズルフの胃石から稀に見つかるという『ヴェズルフパール』、深海に生息しているというサンゴ『アビスコーラル』等があるが、いずれも魔の森深層や海の底等、到底人の入り込めない領域でのみ発見例のある幻の宝石だという。


 しかし、ミアル達は冒険者で、深層に踏み込めるだけの力量がある。探しに行くこと自体は不可能ではない。


「それで深層に踏み込むあたしらも大概な気がするんだが」


 現在、ミアル達はネビュラマギキウムに匹敵する鉱石を探し深層に向かっている。移動に一日、二日目を鉱石探し丸一日使い、翌日にアダマートに戻る二泊三日プランだ。無論、宝石探しの為だけに深層に踏み込んでいるわけではない。


「それが梓美の新しい装備?」

「うん、須藤のガントレットに使われていた技術を基に私専用に作って貰ったんだ。まだ試作段階だけど」


 梓美の右腕には銀色の手甲が装着されていた。これは須藤の手甲に用いられていた技術を応用し改良したことで、地属性どころか梓美に適性の無い四元素の発動補助に対応している。大きさも梓美に合わせてダウンサイジング、さらに梓美の防具に使用するのと同様の合金製という豪華仕様ではあるが、これでもまだ試作品だ。今回の探索はこの手甲及び用いられた技術の使用テストも兼ねている。


「というか、梓美が来たら宝石がボク達が採った感無くなっちゃうよ」

「何言ってるの。深層に二人だけで行かせられる訳無いでしょ。それに、メテオマギキウムだってミアル達がいたから隕石を持ち帰れたようなものだし私にも協力させてよ。……それとも、ミアルは私が一緒は嫌?」

「うぐぅ……そりゃ、とても心強いし嫌じゃないけど……」


 少し眉尻を下げて首を傾げる梓美。そんな寂しそうな顔をされてはどんな宝石かを渡す前まで内緒にしていたかったミアルもあっけなく陥落してしまう。


「お前ら、あたしを放置するな。……じゃなくて、気を抜くな!まだ中層も深層の魔獣が出没してるんだぞ!」


 二人が甘い空気になりかけたところでフィリスが喝を入れる。が、つい最初に本音が零れてしまい、なんとか取り繕うもミアルと梓美にニマニマとした表情を向けられる。


「……何だよ、その目は」

「遠慮しないで。ほら、フィリスもおいでよ」

「フィリスも、私がいた方が嬉しいよね?」

「だーーーーーーっ!!あたしをからかうなーーーーーーっ!!」


 その後、すっかりへそを曲げてしまったフィリスの機嫌は夜に梓美が添い寝をするまで治ることはなかった。



 ◇



 魔の森には木々や緑の生い茂るばかりではなく岩山の様な地形や洞窟も存在している。宝石となりうる鉱石を探す一行の目的地はそこだ。幸い二日目に深層に入って早い段階で岩石質な崖を見つけることができた一行は早速採掘に取り掛かることにした。


 そして、梓美の装備試験もここで行われることになった。


「梓美ー!一通り調べ終わったよー!」

「りょーかーい!次は義姉様の使ってた紫電を試すねー!」


 宙に浮いた梓美の手甲から放たれた紫色の電が崖の岩肌に突き刺さると着弾地点が吹き飛び大小様々な破片を飛び散らせる。威力こそ及ばないがヴァイラナが使っていた風属性と闇属性を組み合わせた魔法だ。

 そして落下して地面に散らばった破片をミアルとフィリスが検分し、岩石とは異なる鉱石が混じっている物を離れた一ヶ所に集める。大きい岩はフィリスが砕いた上でもう一度調べ直し、残りはミアルが風で崖の麓に吹き飛ばす。

 この梓美が手甲を用いて発動させる四元素主体の魔法で崖を破壊、落下した破片の中からミアルとフィリスが鉱石を探すという一連の作業によって梓美の手甲の運用テストと鉱石探しを一挙に行っているのだ。一ヶ所に集めた鉱石混じりの岩は梓美の"解析"も使いつつ改めて調べる予定である。


「案外色々見つかるもんだね。いい鉱石はあるかな?」

「ここまで踏み込んで採掘する人なんて滅多にいないだろうから手つかずなんだろうな。お、この石もいい感じの赤いのが混じってるな。こいつ気に入ってるし後で梓美に見て貰うか」


 そう言ってフィリスは手に取った石を"収納"の魔道具のポーチにしまう。気に入った鉱石はこの時点で各自でキープするようにしているのだ。調査依頼と素材売却で得た収入でミアル、フィリスの二人も自分用の"収納"の魔道具を購入、装備のメンテ用品や個人的な嗜好品、自分が見つけた素材等は自分で管理できるようになったのだ。内部の時間を止める機能は無いので鮮度や状態を維持したい物は変わらず梓美の"奈落"頼りではあるが。

 一ヶ所に集められている鉱石は一目見た感じだとピンとは来なかったが、もしかしたらいい鉱石かも、という物だ。特にめぼしい物が無かったら売却予定である。


「ボクは中々ピンと来る鉱石が見つからないなあ。それにしても、このあたりは魔獣があまりいないね?これだけ音を立ててたら気付かれるとは思うけど」

「さすがにこの轟音と崖崩れが起きている場所に近寄ろうとはしないだろ。まあ、警戒は怠るなよ?」


 ミアルが頷く。いくら深層の魔獣とは言えども崖崩れが起きている場所にわざわざ近寄ろうとはしない。彼らからしてみれば人サイズの小さい獲物を襲ったところで(魔獣達にとっては)いつ落ちてくるかわからない土砂や岩に押しつぶされては本末転倒なのだ。


「二人ともー!ちょっとこっち来れるー?」


 そんな折、上空から破壊した跡に鉱石が出てきてないか確認していた梓美の声がかかる。二人が見上げると幾度となく繰り返された破壊の結果、崖の斜面の途中に突き立った足場ができており、そこに梓美は立っていた。どうやらそこで何かを見つけたらしい。そんな梓美をフィリスは少し呆れた目で見る。


「いや、あたしはどうやってそこに行けばいいんだよ。ミアルと違って飛べないんだぞ」

「ボクが抱きかかえるとか?いつも梓美と一緒に高いところに登ってたみたいに」

「いや、待てそれって……」


 ミアルの提案にフィリスは記憶の糸を辿る。まだ梓美が重力を操る魔法を扱えない時にミアルはどうやって梓美を抱えていたか。それを思い出したフィリスの頬が朱に染まる。


「横抱きじゃねえか!あたしは御免だぞ!」

「あ、そっか、ボクじゃない方がいいか。梓美ー!フィリスが抱えて欲しいってー!」

「そういう意味じゃねえ!梓美も降りてくるなーっ!」


 結局、フィリスの抵抗もあり梓美はフィリスを後ろから抱きしめることになったのだが、その様子に自分でけしかけておきながら結局やきもちを焼いたミアルが背中に張り付き、梓美はその状態で二人を運ぶことになった。その際、ミアルとフィリスの二人にサンドイッチ状態な梓美の顔が緩んでいたのだが、幸いにもそれに気付いた者はいない。


「ほら、見てこれ」

「でかっ!?これって化石?」


 着地した梓美が足元を指し示すと、そこにあるのは鳥型の魔獣の化石だった。大半は地面に埋もれており、梓美と同じくらいの大きさの頭部と首だけが地面から露出している状態だ。


「色が変わってるから岩石質の部分を掘り返してみたんだけどこれが大当たり!大きさもだけどさ、ちょっと角度変えて見てみてごらん。すごいよ?」

「あん?角度?一体何が……え!?色が変わった!?」


 梓美に言われるままフィリスが首を傾けて化石を見ると僅かに緑色を帯びて見えた。この化石は光の反射具合で別の色に見えるのだ。その輝き方にミアルは先日宝石店で見たある宝石を思い出した。


「これ、アンモライトに似てないかな?ほら、貝の化石が宝石になったっていう」

「うん。宝石にするには輝きが足りないだろうけど似たような状態じゃないかな?」


 アンモライトはその名の通りアンモナイトの化石が特殊な条件で宝石のような輝きを持つに至った物であり、地球にも存在している。また、似たような事例で恐竜の化石がオパールに変質した状態で発見されている。この化石もそれらと同様の原理なのかはたまた別の原理化は不明だが何かしらの影響で宝石のような輝きを持つようになった物だと見て取れる。なお、厳密に述べるとアンモライトと恐竜の化石のオパール化は異なる原理なのだが、梓美達はそれを知らない。


「それでさ、これ、いいお土産になると思わない?」 

「ちょっと待て梓美、まさか丸ごと持ち帰る気じゃないよな?」


 フィリスの問いに梓美は満面の笑顔で頷く。


「先の襲撃とか隕石の影響でここのところアダマートに滞在する冒険者が減ってるってギルマスや領主がぼやいてたのを思い出してね。研究機関に一式丸ごと持ち帰れば研究資料にもあるいは観光資源にもなるよ。それにアダマートを拠点にすればこんなお宝が見つけられるって夢を追ってアダマートに来る冒険者も増えると思わない?ほら、なんだかんだ私達って気が付くと色んな人の胃を痛めてるらしいからここらで埋め合わせを、ね?」


 つまり、この化石を寄付という形で無償で提供してこれまでの胃痛案件の埋め合わせに使うつもりなのだ。梓美達も竜素材のおかげで金銭的には余裕があるのと、売却という形にするとただでさえ現在オーバーワーク気味の冒険者ギルドの財務部門が過労死しかねないので少し同情気味なのもある。さすがにギルドに来る度に一部の職員がまたとんでもない素材を売りつけるのではと怯えた目でこちらを見てくるのに申し訳ない気持ちになってしまうのだ。


「金はあるしさすがに連中が気の毒だとは思ってたから別にこれを寄贈するのは構わないけど、そう思うなら少しは自重しろよ。今回のメテオマギキウムやその手甲だって確実に胃痛案件だぞ?」

「倫理人道に反しているわけでも無いしそこは私達の戦力には代えられません!!とにかく、こんなお宝目の前にして、可能なのに持ち帰らない理由はありません!あと復元は研究機関にお任せして私は完成した骨格標本が見たいです!」

「それが本心か!」


 基本的に他者に対する倫理や人道は踏み外さないという線引き(自分自身や敵対者は別)はしているが、そのライン内では自重はしないのが梓美のスタイルだ。その為、魔獣研究機関の者達や工房の親方の様なひたすらその道を行く人達とは馬が合うのだが、それらを管理する立場の人にとっては大体利益とそれに付随する厄介事を一緒に持ち込むので胃痛待ったなしだ。

 この化石を持ち帰った場合も、チャーリー達研究機関の面々は大喜びだろうが、領主のダリウスは扱いに頭を悩ませるに違いないとフィリスは少し同情心を抱く。

 そんな梓美とフィリスのやり取りの中、ミアルは化石を思案顔で眺めながら口を開く。


「ねえ梓美、持ち帰るかはどうかは別にしてとりあえず胸の辺りを掘り起こして貰えないかな?ちょっと気になることがあって」

「?いいけど」


 ミアルの希望に沿って梓美が地属性魔法で化石の胸部を埋めていた部分の岩を取り除いていく。"解析"で把握した岩の材質のみを壊すように調整した魔法なので、化石を傷つけること無く岩が水で固めた砂の塊の様に崩れていく。しばらくして胸部が露出するとすぐにミアルはその付近の水の魔法で汚れを落としていく。するとそこには化石のそれと似た、しかしそれ以上の多彩かつ鮮やかな輝きを持つ丸い石が複数見つかる。


「やっぱり!化石が宝石化しかけてるから胃石はどうなのかなって思ったけど大当たりだ。これってヴェズルフの祖先の化石じゃないかな?この石達体内に残ってたヴェズルフパールがさらに変質しているんだと思うよ!」

「えっ!?それじゃこれってヴェズルフパールの、さらにレア物!?」


 ミアルは巨大な鳥類の化石、そして偶然研究機関で読んだ資料に描かれていたヴェズルフのスケッチと似通った部分からこれがヴェズルフの祖先ないし近縁の化石ではないかと推測したのだ。ヴェズルフの砂嚢内で特定の材質の胃石が分泌物にくるまれて変化していったのが白に覆われた複雑な輝きのヴェズルフパールへと変わるとされている。ちょうど砂嚢に位置する部分にこの石があったのでこの玉虫色に輝く石はヴェズルフパールだった物でほぼ間違いないだろう。ミアルは自分の予想が当たったことと梓美への贈り物に申し分なく、自分も気にいった輝きの鉱石の発見に大喜びだ。


「梓美!ここのヴェズルフパールはボクが貰っていいよね?良さげな数個だけでいいからさ」

「いいも何もミアルが当たりをつけて見つけたんだからこれ全部ミアルの物だと私は思うよ。あ、フィリスはどう思う?」

「あたしも使う鉱石は自分で見つけた物にしたいから構わねえよ。ぶっちゃけ宝石自体にはさほど興味も無いしな。」

「やった!二人ともありがとう!やっぱりボクも梓美に渡す指輪と同じ宝石は身に着けておきたいなーって思ったから」


 梓美が装備に使うネビュラマギキウムを指輪にするように、ミアルも贈る指輪と同じ宝石を身に着けたいと思っており、そのために鉱石は複数欲しかったのだ。二人の許可を得たところで先にヴェズルフパールの埋まっている部分を梓美に取り出して貰い、念のために状態を保存できる"奈落"に収納して貰う。


「後はフィリスの鉱石かな?ボクは自分の鉱石見つかったからこのまま梓美を手伝うけど、フィリスはどうする?」

「あたしはもう少し探したい、って言いたいところだが、正直二人の使う鉱石に見合う物って見つかりそうに無いんだよなぁ……」


 梓美は隕石から産出されたメテオマギキウムの特に色が濃く、特徴的な輝きを放つネビュラマギキウム、ミアルは化石化によって変質したヴェズルフパールと二人の使う予定の鉱石は世界中を探してもおいそれと見つからない代物だ。到底これらに釣り合う物が見つけられるとはフィリスには思えなかった。


「あたしが良さそうだなって思ったのなんかこれだぞ?宝石の価値もわからないあたしじゃ二人の見つけたのに釣り合うような鉱石は見つけられないだろうし、価値があるのがいいならあそこに集めた中でいい奴を使うのもありかもな」


 苦笑いしながらフィリスがポーチから取り出したのは先程見つけた赤い鉱石が覗く石だ。ふむふむと梓美がフィリスの取り出した石を覗き込む。


「私は別にフィリスが気に入って選んでくれた宝石だったら嬉しい、というか私も宝石の価値ってそれほど詳しくないけど………っ!?」


 フィリスの鉱石を"解析"で詳しく鑑定した梓美が息を呑む。しばらく驚愕に見開きながらも凝視し続けた後にゆっくりとフィリスの顔へと梓美は視線を上げていく。


「フィリス……それ、ドラゴンの体組織とサンゴからできてるっぽい……なんか混ざってるよ……?」

「は!?なんだそりゃ!?まさか気休めにでたらめ言ってるんじゃ無いよな!?


 あまりに荒唐無稽な話にフィリスは冗談を疑い、眉間に皺が寄るが、梓美はぶんぶんと首を横に振る。梓美自身も信じられないらしくどうやら本当の様だが、フィリスはむしろ困惑が増すばかりだ。一体何をどうしたらサンゴとドラゴンが一緒になって鉱石として発見されるのか。


「いや、待てよ?海で背中にサンゴが群生している竜の目撃例があるって話を昔聞いたことがあるな。確か、海底でサンゴの群生地の一部に擬態して大型の獲物を待ち伏せるって奴だが……まさか、それに近い種類か?」

「そういえば、フィリスがその鉱石見つけた時、貝や魚の化石がいくつかあったような……」


 今ミアル達が立っている箇所はフィリスの見つけた鉱石や貝や魚の化石が採れた箇所よりも遥か上にある。つまり、古代に海中でサンゴを背負う竜種の祖先が海中で息絶えてそのまま化石化。その後も永い時を経て様々な物が堆積していき、それらが地殻変動によって地上に露出していたのだとすれば一応辻褄が合う。


「ドラゴンの体組織とサンゴが混ざってるのは多分海中のドラゴンの背中に共生する刺胞動物がその甲殻でサンゴの骨格を作るからじゃないかな?あ、刺胞動物ってクラゲやイソギンチャクの仲間ね。確かサンゴもその分類だった筈」

「刺胞動物とかイソギンチャクってのはわからないが、そう言われるとマジに思えてきた……やべえ、急にとんでもないお宝かもしれないって思うと怖くなってきたんだが」

「やったねフィリス。竜の化石が変質した鉱石なら竜骸玉だろうし、同時にサンゴだからアビスコーラルの可能性も出てきたよ」


 ミアルの言葉はかなり現実味を帯びておりフィリスは冷や汗を流す。何気なく惹かれて手に取った石が従来のアビスコーラルや竜骸玉を凌駕しかねない価値の物だったのだから無理も無い。


「そういえばフィリス、同じ感じの石いくつか拾ってなかった……?」

「やめろ!確認するのが怖い!梓美もあたしのポーチに手を伸ばすな!」


 そう、フィリスが気に入った鉱石入りの石はこれだけでは無く、同じような鉱石の混ざった物はひとしきり集めていたのだ。ミアルの琴線には触れなかったこともあり見つけ次第譲ってもらったのでその数は優に十を超える。もしそれら全てが暫定名竜骸玉サンゴだとしたらとんでもないお宝を抱えていることになり、持ち帰った後に誰に目を付けられるかわかったものではない。しかし確認しないわけにもいかず梓美に見て貰った結果、全てが竜骸玉サンゴを含んでいると判明してフィリスは崩れ落ちた。それはそれとして梓美への指輪、そして自分用のアクセサリーに使うつもりではあるのだが。なんだかんだ自分も恋人と互いにお揃いの物を身に着けたいフィリスなのであった。



 ◇



 ~後日談~


 その後、化石の採掘と残りの一度集めておいたその他の鉱石の確認を終えてアダマートに戻って来た一行だったが、ギルドに報告に向かう道中フィリスは気が気でなかった。そしてほくほく顔でギルドの受付に顔を出したミアルと梓美を見たギルド職員は悲鳴を上げたという。

 宝石化した化石の魔獣研究機関へ寄贈の為の取次ぎと一応集めておいたその他の鉱石の扱いをダリウスとマッスに任せて(丸投げして)早速専門的な知識のあるターシャに二人の鉱石を鑑定してもらった結果、予想通りミアルの見つけた物はヴェズルフパールがさらにアンモライトと同様の変化をした物であり、フィリスの見つけた物は珊瑚殻(コーラルシェル)(ドラゴン)という背にサンゴを共成させる竜の当時の古代種の背から生成されたアビスコーラルとほぼ同種のサンゴの竜骸玉と判明。

 それぞれヴェズルフアンモライト、竜骸珊瑚と名付けられ、ターシャの認識内で宝石のトップが塗り替えられた瞬間となった。その際に壊れたような笑いがターシャの口から漏れており、その場にいた全員がその不気味さに慄いた。


 その後領主も交えた話し合いの結果、透明、半透明のメテオマギキウムやネビュラマギキウム含めた鉱石は一部を研究材料や皇族への献上の為に提供する代わりに帝国の誇る超一級の職人によって最適な処理や研磨されることとなった。一部とはいえネビュラ含むメテオマギキウムを手放すことに梓美は最初は不満気だったが、二人の鉱石を最適な状態にする為にも了承、フィリスはむしろ大量に希少な鉱石を持っていても仕方がないのでホッとしていた。いつ盗人に目を付けられるか気が気で無かったのだ。


 数日後、三人の元にネビュラ含むメテオマギキウム、ヴェズルフアンモライト、竜骸珊瑚が宝石として申し分ない状態に加工されて戻ってきた。ヴェズルフアンモライトは小さい物は保護処理と必要最低限の研磨のみ、透明、不透明のメテオマギキウムは面を多く出すブリリアントカット、他は丸い形に整えるカボションカットが施され、それぞれの宝石の魅力が余すところ無く引き出されていた。

 それらはターシャから手渡され、同時に渡された研究の結果判明した装飾品加工にあたっての注意書き、そして第二皇女の署名付きの鑑定書に彼女の正体を知らない三人は既にターシャに鑑定して貰ったのに何故?と首を傾げ、その様子を見ながらターシャは意味深に微笑む。彼女のメイド服の下には早速作って貰ったネビュラマギキウムとヴェズルフアンモライト、竜骸珊瑚が施されたミスリルのチェーンのネックレスが隠れているのであった。ミアル達がその存在に気付くのはもっとずっと後の話である。


なお、ターシャのネックレスもかなり強力な魔法発動媒体と化した模様。そしてギルマスと領主の胃痛はさらに加速。


補足なのですが、現実のアンモライトは貝殻が化石化によって構造が変化した物であり、真珠や貝殻と同じ炭酸カルシウムを始めとして多くの成分を含むのですが、恐竜の化石の宝石化は主成分がオパールを形成する二酸化珪素に置き換わる物だそうで厳密には別物です。

あとヴェズルフパールの胃石が分泌物で変質する生成過程はファンタジーの産物と思ってください。



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― 新着の感想 ―
[一言] 採掘はロマン。 しかし深層に弾丸ツアーかけて希少物たくさん持ち帰ってくるBランクパーティーとは一体、、、。 もっとランク上の人もいるんですかね? 高ランクはさすがに国家の紐付きでしょうか
[一言] 化石はロマンがありますよね~。まあそれはそれとして。 3人(というか梓美)に自重なんて言葉はなかった件。 ミアルさん、せめてよく効く胃薬くらい作ってあげて。(笑)
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