挿話 ~二人の宝石選び その1~
最近更新ペース遅くてすみません!
サブタイ一部変えました
「贈り物の装飾に使う宝石ですか?」
ターシャが首を傾げる。梓美の新防具の制作や岸田達の使っていた武器の分析をしている間、ほぼ蚊帳の外で手持無沙汰なミアルとフィリスの二人は偶然街で会ったその手の話に詳しそうなターシャにそんな質問をしていた。
というのも、魔の森を出た後に訪れた街で指輪を贈り合うという話になったのだが、元々隕石内にあった鉱石の一部を装飾の宝石に使うつもりだった梓美と異なり、二人は装飾に用いる宝石を選ぶところから始める必要があった。そこで二人が相談相手として候補に挙げていたのがターシャだ。
なお、梓美に聞くのは機能面とか素材による特殊な性能等のどこか変な方向性に走りそうな不安がどうしても付きまとうのと、ある程度の希望は聞くかもしれないが贈る相手に何から何まで質問するのも気が引けるという理由でやめておいた。また、もう一人身近な女性であるギルドの受付嬢のアンジェラは恐らく独身の彼女に聞くと猛獣の尾を踏むが如き事態になりかねない予感がしたので相談相手の候補からは外れた。決して揶揄われるからという理由ではない。
「うん、この前にアクセサリーについて話をしたでしょ?なんかボク達そこら辺の常識もよくわからないみたいだし、やっぱり女子の端くれとしてはちょっとそのあたりの常識を知っておきたいなーって」
ただ、表向きの理由としてはこれである。ミアルもフィリスも惚気話、しかも女性同士の恋愛なのを他人に平然とできる程図太くは無い。なお、ターシャの正体はこの国の第二皇女リスタシアなのだが、ミアル達はそれを知らない。もし彼女の正体を知っていたならこんな話題で話しかけることもなかっただろう。
しかし、あくまでここにいるのは「メイドのターシャ」としてである。竜すら退けられ、深層も探索できる程の冒険者であるミアル達をミアルのバックの存在の問題上囲うことはできなくとも、多少なりとも繋がりを作る為に今の偽った立場はこうして会話の機会が得られる。それはリスタシアとしても好都合なので彼女も積極的に質問に応じる。もっとも、ここに真相を知るダリウスやマッスがいたら気が気でないことには違いないが。
「そうですね……宝石は基本的に美しく希少な物程その価値が上がりますから、自ずと価値の高い物が贈り物に良い宝石として貴族では好まれていますね。大きくても魔法で錬成した物より小さくとも天然石の方が価値が高いのはそういう理由もありますよ。錬成難度が高い物はそれほど価値は落ちないそうですが」
「確かに人工で作れるなら希少性も減って価値も落ちるよな。大きい割に安い宝石が売っているのはそういう理由か」
「そちらは町民向けの品ですね。値段が安い分、手が届く人も多いので、むしろそれを専門に扱う者もいるらしいですよ」
フィリスが納得したように頷く。組成さえわかっていればこの世界でも魔法、特に錬金術の分野において人工宝石を作ることはできるが、魔法によるものである為に地球の人工宝石よりも量産しやすく価値は大幅に下がる。鑑定系の魔法やスキルによって天然物かどうかは簡単に看破できるので、もし人工宝石を天然物と偽って取引していることが発覚すれば重罪となる。万が一騙されない為にも高価な宝石を購入する際は鑑定ができる者を雇うのが貴族間では常識となっている。
「物によっては署名付きの鑑定書を用意する場合もありますね。携わった人物や人数がその価値を証明してくれます。私もいくらか目利きができるのでたまに署名したりもするんですよ」
「あ、そっか、メイドっていっても基本的には貴族令嬢なんだっけ?鑑定にも責任が伴うし家名があればそれだけ信頼にも繋がるんだね」
「え?あっ!?え、ええ、そうですね……」
うっかりボロが出そうになったターシャ。無論、鑑定書の署名は第二皇女リスタシアとしてである。その鑑定結果を疑うのは不敬に当たるし、皇族の名を背負っている以上鑑定する彼女の責任も重大である。その為、リスタシアによる鑑定結果はこの国では最上級の証明であり、若く美しい皇女の署名というだけでもかなりの付加価値となる。
「良い宝石は天然物で希少な物……あ、なら、こいつってどうなんだ?」
そんなこの国最高峰の鑑定士と言っても過言ではないターシャにそうとは知らないフィリスがポーチからうっすらと赤みを帯びた半透明の石を取り出す。フィリスの手の平に収まる程度の半球状に加工されたそれを見てターシャが首を傾げる。
「こちらは?」
「ああ、隕石に混ざってた鉱石なんだが、外側は透明で、内側になるにつれて色が濃くなってた。梓美が気に入って防具の装飾に外側の完全に透明な部分と中心の色の濃い部分を使うつもりらしいんだが、その間の中途半端に半透明なとこは使わないってことで適当に加工してもらった。」
「ボクも一個貰ったよ。本格的に加工するならさらにカットしたり削るって話だけど、宝石として使うならもっときれいな物もあるっていうからとりあえずはなんか書く時の文鎮代わりに使ってるね」
「隕石内の鉱石!?そんな希少な物をなんて雑に!?」
「いや……だってこれ、本当に中途半端に半透明なんだぞ?中心のはそれこそルビー並みに色が濃いし外側なんて完全に透き通ってる。ここが一番価値が出ない部分なんだとさ」
「マギキウムライトだから宝石としての価値もそう高くは無いって工房の人も言ってたよね」
マギキウムライト、別名魔力質鉱とは魔力を貯蔵する性質を持つ鉱石である。魔法の術式を付与することでその術式分の魔力操作を補う働きをしたり、一つの魔法そのものを魔力さえあればこれ一つで発動もできるようになるので魔力操作補助の為の杖の宝玉部分や魔道具の材料に欠かせない素材だ。それ故にかなり研究が進んでおり現在では人工的に合成が可能である為、天然物であってもその価値は宝石として用いられている鉱石よりも低い。むしろ人工的に錬成された物の方が天然物よりも性能が安定し、必要ならば術者に合わせて錬成することも可能な為杖の素材としては天然物の需要は低い。
ただ、魔力を貯め込める性質上、宝石に加工した物は非常時の予備魔力源になるので冒険者にはお守りとして好まれている。梓美が装備の装飾に用いるのも魔力を貯蔵できる利便性からというのも大きく、指輪に加工するのは装備に用いる色の濃い箇所や透明の箇所のちょうどいい大きさの端材を加工してもらう予定だ。
「確かにマギキウムで、しかも色も良くないのでしたらそれほど宝石としての価値は上がらないでしょうが……一応視てみますね」
そう言ってターシャがマギキウムライトを手に取り"鑑定"を発動させる。リスタシアの"鑑定"は対象のステータスや魔力に関する性質まで看破することができる点では梓美の"解析"よりも優れており、宝石としての価値だけでなくマギキウムライトそのものとしての実用性も見極めることが可能だ。
「……なんですかこれ」
数秒の後、鑑定の結果にターシャが目を見開く。その声は震えており鑑定結果がかなり衝撃的だったようだ。
「あの……確かにこれは魔力に対する性質はマギキウムとほぼ同じですが、鉱物そのものとしての性質は別物です!硬度、強度共に並みのマギキウムを凌駕していますし、しっかり研磨すれば並みの宝石には負けない輝きを放ちますよ!完全に透明な物ならホワイトジュエルとして、……確か中心部分はルビー並みに色が濃いんでしたよね?そちらも相当な価値が付きます。勿論、マギキウムの魔力貯蔵抜きで、ですよ。今お二人が持っている物でも隕石からしか採取できていない希少性を考えると並みの宝石並みの価値はあると思いますよ?」
思わずテンション高く解説するターシャの見立てにミアル達は空いた口が塞がらなくなってしまう。いくら隕石から採れたとはいえ、普通に武器屋の店頭に並んでいる杖にもマギキウムライトは用いられていることからあまり高価な印象は無く、まさか宝石としては使えなさそうな部分の鉱石にすらそんな価値があるとは思いもしなかったのだ。
「それと、実際のところこの鉱石はどれだけ魔力を籠められるのですか?それによっても価値は変わると思います」
「わかった。ちょっと試してみるよ」
マギキウムライトも内包できる大きさあたりの魔力量によってその用途や価値は変わる。大量に魔力を籠められる物程その価値は高くなる。ミアルがターシャから返して貰った鉱石を両手に包んで魔力を流し込む。
「"風撃"一発は余裕で撃てる分の魔力を込めてもまだ余裕がありそう……五発は撃てる分の魔力を込めてやっと満タンかな?結構入るけど、条件を無視した"霊起纒身"の発動に必要な量にはならないね」
「予備魔力が必要な状況ならその時点で"霊起纒身"の発動条件は満たせるだろ……って、ちょっと待て!」
魔力を流しこんだ際の手ごたえで容量一杯に魔力を流し込んだミアルが手を開いて所感を述べていると、その手中にあるマギキウムライトを見たフィリスが驚きに目を見開く。
「?どうしたのフィリス?」
「手元だよ!よく見てみろ!」
「え?……うわっ!?」
フィリスに促されるままミアルが手元の魔力を籠めたマギキウムライトを眺めると、ミアルもマギキウムライトに起きた変化に気付く。
「……色が変わってる……」
色はうっすらとついている程度なので気づきにくかったが、赤みを帯びていたマギキウムが青色に変わっていたのだ。この変化はターシャにも予想外であんぐりと口を開けている。
「まさか、魔力が貯まると色が変わるのか?あたしのも………うわ、マジだ」
フィリスも自分のマギキウムライトに魔力を籠めるとかなり早い段階でその色が赤から青へと変わる。そのまま魔力を籠め続けた結果、色が変わった時点の二倍の量の魔力を注ぎ込んだあたりで容量一杯となった。
その後、ミアルがマギキウムライトから魔力を取り出して試したところ、魔力が容量の三分の一を下回ると赤色に戻ることが判明した。
「これ魔力の消費具合がわかって便利だね。赤くなったら補充した方がいいってのがわかるし」
「だな。普通のマギキウムじゃ色は変わらない筈だしな。で、この魔力容量ってどうなん、だ……?」
フィリスが魔力貯蔵としての性能は如何程かとターシャの方を向くと、そこにはターシャが両手で頭を抱える姿があった。
その2に続きます。早めに投稿するつもりでいます。
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