エピローグ
半分くらい書いたところで通信エラーか何かでページ更新されて書き直しすることに……
「――――まあ、そうなるとは思ってたよ」
「うぅ……いきなりバレた……」
「あぐぅ……下半身のあちこちが……」
翌朝、とはいっても大分日が昇ってきたころに起きた二人が眠そうにフィリスの宿泊した部屋を訪ねて来たのだが、二人して下半身を気にするように歩き方が変になっていたことでフィリスは何となく察しはついていたが秒で確信へと変わった。余計なことを吹き込んだ自覚もあるので遅かれ早かれこうなるとは思っていたが、殆ど寝ずにいたことにフィリスは頬が朱に染まりつつも呆れた目を向ける。下半身の痛みに呻きながらも二人はしばらくの間いきなりバレた恥ずかしさと気まずさでフィリスと目を合わせることができそうにない。ちなみに、部屋を出る直前に"浄化"のフル活用によって昨夜から早朝にかけての痕跡はきれいさっぱり隠滅した。
「そんなんでよく一晩続けられたな?」
「痛みは魔力同調キメたら全然気にならなかったんだけどね……」
「キメた言うな。薬か何かじゃあるまいし。……いや、ある意味それよりタチ悪い気もするが。大体、なんで二人して同じような痛がり方してるんだよ?普通片方だけだろ」
「フィリス、ミアル達姉妹がどう生まれたか覚えてる?」
「あ?たしか母親が……って、まさか」
「うん、そのまさか。梓美にも試しに精霊術で身体の一部変えてみたら上手くいっちゃって……」
「……初めてなのにいきなり色々羽目を外しすぎだろお前ら」
「止めてー!あまりそんな目で見ないで!?」
どうやら昨夜は両方でお楽しみだったようで、そこにいつもの魔力同調も加わってかなり濃厚な一晩だったらしい。三人の間に何とも言えない沈黙が降りる。現在、ミアルとフィリスは梓美を恋人として共有している形なので互いに情報を共有することを二人で決めたのだが、いざ夜のことも共有すると報告する側もされる側もかなり気まずい。ミアルは耳まで赤くなっているが夜のことに関して暴走するのは梓美ではなく大体ミアルなので半ば自業自得だ。当然、その話題の中心となる梓美は毎回こんな思いをするのかとミアル以上に顔が赤くなっている。
「……その話は置いておくぞ。そんなことだろうと思ったからアダマート行きの乗り合い馬車とか護衛依頼調べておいたぞ。依頼の方は明日の明け方になるがどうする?」
「「なんか色々ごめんなさい!!」」
自分達が昨夜はお楽しみして朝も力尽きて寝て、さらに寝起きに触れあい程度にイチャイチャしている間にフィリスは一人今後の予定の為に色々調べていたことに大変申し訳なくなった二人は頭を勢い良く下げるしかなかった。
◇
「おお!キムチだ!キムチが売ってる!」
「キムチ?こいつは油菜をレッドチリとかの薬味類にエビに魚醤その他諸々で漬け込んだやつだよ。辛さだけじゃなくて旨味も売りなんだが、どうもこのあたりじゃ色のせいか受けが良くなくてな。買うなら安くするよ?」
「壺で買います!」
現在、三人はフィリスの見つけてくれた護衛依頼に備えた買い出しの真っ最中だ。依頼内容はアダマートへの商会の馬車の護衛であり、隕石の影響で魔の森の生態系が乱れている今、魔の森が近い街道を通るのは危険なのでこの手の依頼は増えているとのことだった。
買い出しは主に梓美の"奈落"のカモフラージュの為である。もはやアダマートでは隠していないが内部時間を停止させて大容量を保存できる"奈落"は商人にとっては喉から手が出る程の魔法であり、一度目をつけられれば面倒なことになるのは明白だ。そこで保存の効く食料を常備することで一般的な"収納"の魔道具持ちと依頼主に思わせるのだ。その為現在梓美は魔道具に見せかけたスポーツバッグの様な鞄を肩にかけており、その中の空間で"奈落"内の物品の出し入れをしている。必然的にバッグの口より幅が大きな物の出し入れは封じられてしまうし、保存の効かない物を出し入れするのも露呈する危険がある。そこで依頼中に使う保存の効く食料をいくらか調達することになったのだ。
今もアダマートでは見られなかった地球で見覚えのあるのと似た食材を見つけては目を輝かせて買い込んでいる梓美をミアルとフィリスは遠目に眺めている。
「依頼中も梓美の料理が問題なく食べられそうでよかったよ」
「商人に感づかれない様に干し肉とかその類で済ませることになりそうだったが、あの様子だと作る気満々だな。……というか、梓美の作る飯を気にするあたりあたしもすっかり胃袋掴まれたなあ……」
基本的にパーティー内で料理は梓美の担当だ。フィリスは塩や香辛料を振りかけて焼く、精々茹でるくらいしか料理はできず、ミアルも一応料理はできるがずっと村で過ごしてきた為レパートリーは少ない。梓美も地球にいた頃はそれほど料理をしていたわけではないがそこは食への関心が半端ではない日本人。食べたことのある料理の種類はミアルやフィリスより多く、ミアルの成人以降も村で記憶を頼りにいくつか再現していくうちにミアルの作れる料理数をあっという間に越え、いずれも遥かに美味しいのでいつの間にか厨房を任されていた程だ。フィリスも当初は食事に手間をかけることに何の意味があるのかという考え方だったのだが、冒険者活動を共にする中で梓美の料理を食べているうちにすっかり胃袋を掌握され、並みの食材では梓美の調理無しでは物足りない舌にされてしまった。
「本当に梓美は人を依存させやがって……」
「フィリスも出会った当初は『そういう目で見られるの嫌』、って言ってたのに、すっかりそういう仲になっちゃったよね」
「うぐっ……」
ミアルの言葉にフィリスはばつの悪そうな顔をする。フィリスはファーストコンタクト時に梓美とミアルが風呂場で仲睦まじくしている(未遂)を見ていたので、パーティーを組む際に色恋沙汰に巻き込むなと言い放っていたのだが、蓋を開ければこの通り、あれよあれよと梓美の抱える秘密含めて色々巻き込まれて気が付けば陥落しており、自分から『そういう目』で見られるような状態になってしまえば世話が無い。
「まあ、フィリスって男勝りでかっこいいところあるから女の子の冒険者からは人気だったんでしょ?それで、自分に言い寄る女の子もいて、茶化されてたこともあったとか?」
「ああ。この国に来る前に一番酷い出来事もあってな。その時はあたしに惚れた女がいて、その女に惚れてた男があたしに決闘を挑んで、うっとしいから吹っ飛ばしたんだが、それでその男を鬱陶しがってた女の方が余計にあたしに惚れ込んでな……しまいには宿に乗り込んできた」
「うわあ」
遠い目をするフィリス。割と厄介なトラブルに巻き込まれたことが伺えて同情するミアルだったがそこであることに気が付く。
「ねえフィリス、ちょっと聞いていいかな?」
「何だ?」
「アダマートに戻ったら、例のムロアウィールドへの依頼だよね?」
「……だな。領主からの依頼だし、故郷の連中の墓参りもしたいんだが……」
「うん、そのフィリスに惚れたって人もムロアウィールドにいるんじゃ……?」
「……そうだった……」
さあっとフィリスの顔が青褪める。同じ国で活動する以上依頼の過程でバッタリ遭遇する可能性はゼロではない。そして既に他の人と恋人関係になっており、さらにフィリスの恋人である梓美がミアルとも恋人関係にあると知ればどうなるか。
「絶対面倒なことになる……」
「ボク達も大概ややこしい関係だけどね」
ミアルが苦笑いする。フィリスの横恋慕からの割り込みで梓美の百合だらけの両手に華と言うべきか、ミアルとフィリスの恋人シェア状態と言うべきか。主導権はミアル達にあるので恐らく後者だろう。
「とりあえず、アダマートに戻ったらしばらくはネタにされるだろうなあ。梓美二股とかフィリス陥落とか」
「お前が梓美取られたとか浮気されたとかもな」
どちらにせよ碌な噂が立ちそうに無い。二人して乾いた笑みが浮かんでいると買い物を終えた梓美が戻ってきて二人の様子に首を傾げる。
「色々買って来たよー。依頼の道中に干しキノコと味噌とキムチとか使ってチゲ鍋っぽいの作れると思うから楽しみに……って二人ともどうしたの?」
「いや……何でもない」
「ううん、梓美は気にしなくていいよ」
「そう?ところで二人とも、ちょっと左手見せて貰っていい?」
「「?」」
言われるがまま二人が左手を出すと左指の太さを糸とこの世界にもあった万年筆で測られる。
「梓美、薬指の太さなんて測ってどうしたの?」
「さっきお店見た時にアクセサリーも売ってて、ちょっと思ったんだ」
「思った?何をだ?」
「私、思い返してみればミアルにも恋人らしいプレゼントしてないのよ。だから二人に指輪をプレゼントしようかと思って。もちろん素材持ち込みのオーダーメイドで」
「また梓美の変なこだわりが始まった……」
確かに梓美とミアルは互いに恋人らしいプレゼントの贈り合いをしたことがない。互いに距離が近すぎるのと冒険者業で考え付かなかったのだ。確かに予算は今回の探索で得た素材を売ればパーティーの活動費を確保した上で山分けしても有り余る程得られるのだが、素材持ち込みにこだわる部分がどこにあるのか。
「隕石を"解析"した時に宝石に使えそうな原石もあったからそれを加工してもらいたいの。私の新装備に隕石の鉱石と精霊の骸を使った合金を使おうか考えてるんだけど、その合金と宝石で指輪を作ればいかにも私!な指輪になるでしょ?二人にはそれを贈ろうかなって」
「「重っ!?」」
材料が共通しているだけとはいえ自分の装備の一部を装飾品にして贈るような梓美の案は装備に自分の命を預ける冒険者にとっては自分の一部を身に着けて欲しいと言っても過言では無い。二人に思わず「めっちゃ重い」という感想が浮かんでしまうのも無理もない。
「だって二人とも私の恋人になったわけだし、しっかりそういう証はあった方がいいかなって思うじゃん。ちゃんと二人と付き合う以上、そういうのを贈れるくらいじゃないと」
そして贈るからには物にもこだわりたいのが梓美である。今回は自分と共通する物にしたいので新武装に使う合金を使用する予定なのだろうが絶対にそこでもひと騒動起きる気しかしない。
そんなことは知らんとばかりに自分達への贈り物の為に徹底的にこだわるつもりの梓美に少しの呆れとそれ以上の喜び、そして愛おしさにミアルもフィリスも頬が朱に染まりながらも笑みがこぼれ、互いに頷き合う。
「フィリス、バザラゲートに使った合金の残りって親方残してるかな?」
「炫蛇かあたしの防具の分もあるといいんだが」
「無かったら錬成してもらおっか。ねえ梓美、ボク達も梓美に指輪贈りたいな。でも、宝石の算段がつかないけどどうしよう?」
「それじゃ、あっちにアクセサリー商があったから行ってみる?買わずともどんな宝石にするかの下見だけでもできるんじゃない?ほら、こっちこっち!」
「あ!待って梓美!フィリスも追うよ!」
「おい!引っ張らなくたって行くから!」
駆け出す梓美をミアルがフィリスの手を取って追いかける。何とも奇妙な関係になった三人だが、互いになんだかんだ悪くはないと感じているのも事実だ。梓美にミアル達が追いつき、引っ張られたフィリスに二人して怒られ、そして三人とも笑い合う。きっとこれからもこんな関係が続いていくのだろう。
ちなみにこの世界で生まれ育った二人は何故梓美が左手の薬指のサイズを測ったのかは知らない。地球の文化では互いの薬指、特に左手のそれは伴侶の証であり、梓美はそれを見越して指輪を贈るつもりなのだ。そしてそうとは知らずに贈った指輪を薬指に付けた梓美に、頬を朱色染めはにかみながら種明かしとばかりにそのことを教えられた二人があまりの不意打ちに火を噴くほど赤面するのはもっと後の話である。
これで二章は終わりとなります。これからもフィリスが加わった三人の物語は続いていくので楽しみにしていてください。
次章の投稿は数日待ってもらうことになりますが、その間に挿話を入れたりするかもしれませんのでどうか気長にお待ち下さい。
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『というかとっとと三人でイチャイチャさせるんだよ!』
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