10,000pv記念 ~この世界に、そして恋に落ちた少女~
おかげ様で10,000pvを超えることができました!
それを記念して今話は梓美視点、一人称のお話です。次話との間のお話になります。
私、東谷梓美は、実はビックリするくらい怖がりなんだってことをこの世界に来て初めて知った。
あの日、私は朝のHR前にこのクラスには数少ないオタク友達の前國と昨日更新されたアプリゲームのイベントについて語り合っていた。その時にスマホや荷物の類が机の上やカバン内に入れっぱなしだったのは我ながら失敗だったと思う。まさか身一つで異世界の空に放り投げだされるなんて思ってもみなかった。いや、普通想像できない。
いきなり床が光ったと思えば空から落ちる私。「あ、死んだ?」と思う自分と何が何でも木に上手いことしがみつくなり引っかかるなりできないかを考えている間に私は飛んできた『何か』に抱き留められ、傷一つ無く、地面に降りることができた。
私を助けてくれたのは驚くことにエルフだった。あのファンタジーでお馴染みのエルフである。一瞬女の子か男の子かよくわからない自分の同い年くらいのその子がとても綺麗でつい見とれてしまった。今思えばこの時点で一目惚れしてしまったのかもしれない。一人称や口調は男の子っぽいけど、よく見ると所作や体つきから女の子とわかったにも関わらずだ。
元々私はイケメンというか男性には興味なく、比べるのは変だけど二次元だけど美少女キャラの方が好きだ。こんな可愛い娘と同性だからこそもっと近い距離間で恋愛したいと思ったくらいで、もしかしたらバイセクシャル、あるいは同性愛者なのでは?と思ったがマジっぽかった。
閑話休題。助けてくれたエルフ、ミアルの話を聞いて、やっぱりここが異世界で、私みたいな人間族が自分達の種族を至上とするような思想を持つ宗教を持っているから余所者は警戒されやすいことを知った。その宗教の由来が政治的方便なのか種族間の対立の名残なのかははたまた別の理由があるのか少し気になったりはしたけど、それよりも重大な問題があることにミアルが何か見つけて魔法を撃って離れてしまった時に気が付いた。
私、どうやって生きていけばいいんだろう。
知らない場所に身一つ。普通に今年女子高生になったばかりの小娘がどうやって生計を立てていくのか。日本では庇護される年齢でもこの世界では成人、働き始める者が殆どだ。いずれ地球に戻る手段を探すにしたって一日一日を生きていくことができなければ話にならない。そのことに気が付いた私は初めて魔法を見た感動もすっかり消え去り足元がなくなったような感覚に陥った。いや、魔法があると知ったからこそ、それを扱う術の知らない私は生きる為に何ができるのか不安になったんだと思う。
けど何とかミアルが戻ってくるまでには何とか持ち直して平然を装えたと思う。……まあ、ミアルが担いできた首の飛んだラプトルっぽいのに驚いてその時は不安どころじゃ無くなったのかもしれないけど。
その後ミアルに案内された村での初めて見る獣人族や日本で現実ではそう見ることのできない農村を目の当たりにして目を輝かせることはできたけど、どうしても心に不安が残ってしまった。
だから自分に魔力があり、ミアルのその母親のルルさんも魔法の心得があると知って少し安心した。おまけに我ながらそれなりな教養だけど店番の手伝いはできるとのことなのでこのままミアルの家に置いてもらえることになった。その時にやっと私は笑えたと思う。
一応家主で雇い主なルルさんはミアルの姉と間違えそうな程若々しく、それでいて出るとこは出て、引っ込むところは引っ込んでいる綺麗なプロポーションだから、つい今はボーイッシュなミアルも成長したらこんな女性的な感じになるのかなと想像してしまう。今の少年っぽさのあるミアルも、口調はそのままにルルさん譲りの女性らしい体型で柔らかそうな肢体のミアルも、どちらもいいなとか思った私は今振り返るとこの後起きること抜きにもう手遅れだったのかもしれない。
そう、あの事件である。
初めてのお酒、そしてこの世界の魔力を持つ生物『魔獣』、それのホルモン料理を食べるという強烈な体験をした私は魔力の暴走で苦しむことになった。魔力を直接視れるミアル曰く中途半端に活性化した魔力が体内のあちこちでせき止められていたという。本来この世界では成長と共に活性化するためこのようなことは滅多に起こらず、ここまで重体化したのも私の魔力量故だったらしい。ただでさえお酒の回った頭で初めての魔力制御などできる訳もなく、私一人でどうすることもできなかった。
まるでインフルエンザに罹った時の様な高熱に意識が朦朧とし、それと同等の熱が体の各所で暴れまわるような苦しさにこれから死ぬかもしれないという恐怖とぶり返してきたこの世界に来た時から感じていた不安とがごっちゃになってしまい、私はミアルに助けを求めて、弱音もたくさんこぼしてしまった。
世話になる初日でいきなりこんな姿をさらしてしまって、意識がしっかりしていたらきっと情けなくて仕方なかったと思う。そんな私をミアルは強く抱きしめてくれた。そして、力強くこう言ってくれた。
「大丈夫。助けるよ」
……まあ、この後別方向に死んでしまうと何度思ったことか。
お腹から魔力を流し込まれ、それがじわじわふわふわと溶け込んでいく感覚、さらにそれが全身に広がっては苦しい部分を飲み込んでいく。魔力の流れが全部ミアルに掌握されている感覚はまるで両腕で抱かれているような安心感があって、私の体はじわじわふわふわした感覚に包まれていった。魔力が未活性で苦しい部分もそのまま全身で感じているじわじわふわふわに置き換えられていき、苦しさの大きさがそのまま気持ち良さに変換されるようにすら感じた。そして、最初の限界を迎えてしまった。脳天から足先まで痺れるような強い快感の波が引くころには自分の魔力をより感じられるようになり、ミアルが私の魔力を動かす感覚すら心地良さを覚える程で、この気持ち良さを与えてくれているミアルを愛おしく感じて仕方なかった。
ただし、ミアルの蹂躙はまだ始まったばかりだった。そのまま感度を増した状態で私は次の不調箇所の治療を始められてしまった。以後、私の体はミアルに翻弄されるまま限界を迎えるたびに感度を増し、ミアルはそんな私の状態に気付くことなく魔力の流れを完全に掌握して不調箇所を治していく。
私は途中で失神してしまい、施術が終わったのは一時間後とのこと。その間も私の体は跳ねたり痙攣したりして全身汗とかいろいろ凄いことになっていたらしい。
こうして私は、ミアルに堕とされてしまった。
でもこのオーバーキルを抜きにしても私はミアルに惹かれていたと思う。私にそのケがあるのもそうだが、出会い頭に命の危機を救って貰って、身寄りのない私を快く受け入れてくれ、さらには苦しむ私を治してくれた。一緒に寝た時は頭を優しくなでてくれたし、これは恋に落ちても仕方ないという物だ。……まあチョロいという自覚はあるけれども。
ただ残念に思うのは段階を踏んで距離を近づけていきながらミアルと関係を深めていきたかったこと。まあ、恋愛経験なんてないので吊り橋効果どころかいきなりのその下の激流に流されて滝から落ちるような有無を言わせないくらいの勢いの恋の方が私には良かったのかもしれない。
けれど、私にとんでもない辱めをしてしまったミアルには負い目を与えてしまったみたいだった。
ミアルは会った時から私の魔力に惹かれていたらしく、そのおかげで色々世話を焼いてくれたみたいだ。だったらもうとことん自分を武器にしちゃおうかな、って酔いの残ってた私は色仕掛けをしてしまいました。やっぱりこの世界に一人落ちてきて心細く、どうしてもミアルを自分に繋ぎ止めておきたかった。それにミアルに魔力同調されるととても心地よくて幸せな気持ちで満たされて、常日頃から渦巻く不安を忘れられる。……薬物的なあれじゃないよね?合法だよね?
身体を鍛え、魔法をはじめとした冒険者として必要なさまざまな技術を磨いたのもその一環だった。生きる為の力を身に着けるというのもそうだが、魔力だけじゃなくて能力的にもミアルにとって手放せない存在であり続けたいという想いがあったからこそ地球にいた頃は考えられない鍛錬の日々を過ごせた。私が新しい何かを会得するたびに喜んだり、時に驚くミアルの反応も私の励みになったと思う。
そして、ミアルが15歳、この世界での成人する年齢が近づいた時、私はルルさんから衝撃的な事実を告げられた。
私とミアルとの間で、子供が作れる可能性があることを。
ミアルは妖精族との子で、基本的に女性型である妖精族は性別を問題としない術を持っている。つまり、私がミアルと恋仲、さらに結婚しても何の問題が無いことがわかり心が軽くなったが、一つの懸念が残っていた。
そう、私は地球へ帰る手段を探すつもり。もし二度とこの世界に来ることができない場合、さらにミアルと一緒に地球へ連れていくことができない場合、私はどちらかを選択しなければならない。日本の家族は今、急にいなくなった私を心配しているだろう。私がこの世界で骨を埋めることになるのはミアルがいるなら大丈夫にすら思えているが、そうなると家族はずっと私のことに気を揉むかもしれない。せめて一報伝えられればマシになるのだろうがその手段を確立するまではできるだけ自由に動きたい。
もし子供ができてしまったら身体的な負担もそうだが、子育てで碌に帰還方法を探したり冒険者をするような活動ができなくなってしまう。
だからミアルとの最後の一線を越えるのはずっと後になりそうだし、この世界で生きることを決めるまでは正式な恋人関係になるのも保留。
けど、恋人関係は割と早く私が陥落してしまいそうだった。成人を迎え、昔からの憧れだった冒険者を私と始めることを許可され舞い上がったミアルにその晩私のファーストキスは奪われた。将来私と恋仲になっても問題ないことも後押ししたみたいだった。粘膜接触と魔力同調、さらに体に触れる指の脳まで痺れるような同時責めを受けながらも私もミアルの体に指を這わせ、魔力同調し返す。互いの嬌声が響くとても濃密な夜を二人で過ごし、気がついたら互いに気絶していた。
……これ初夜では?と思ったのは私だけじゃないと思う。ミアルも凄い真っ赤になってたし。その後もミアルとは夜にスキンシップしたり同調したりと恋人同然にイチャイチャしていた。私も、ミアルとイチャイチャしていると渦巻く不安を忘れることができるので、ついのめりこんでしまっている自覚はある。
そして陥落は本当にすぐだった。聖光神教のアダマート襲撃、その時に私はミアル、そして冒険者を始めて仲間になったフィリスを後戻りできない状態にしてしまった。《舞台装置》のスキル名を知った時から考え、この世界の精霊に関して知識を深めることで確立させた私の最終手段"降神霊機構"。一度疑似精霊を付与させれば機能を再構築することはできても取り除くことはできないそれを二人に施した。二人を、特にミアルを喪うことが恐ろしくてそうせざるを得なかったのだ。
疑似精霊を宿した二人を置いて一人地球に帰るなんて不誠実、そんなことをしたら私は自分を許せないまま地球で過ごすことになる。何よりも、召喚した側、聖光神教も召喚はできてもそれは海中から魚を釣り上げるような物で、針が引っかかった場所に正確に戻すような、つまり送還する魔法は用意していないという事実が私にこの世界での永住を決めさせた。
存在するかどうかもわからない帰還方法に一生を捧げることになるよりも、この先幸せな人生を送れる生き方を私は選択した。でも、あくまで優先順位を変えただけで地球への帰還、いや、行き来する方法を探すのを諦めたわけではなく、せめて家族に無事と自分のことに気を揉む必要は無いことを伝える手段だけでも確立させたい。
そう決心した私はミアルにそのことを告げると、押し倒された。晴れて恋人同士になれるとわかったミアルにこれまでのスキンシップよりもいろいろ凄いことをされて気がついたら朝だった。これでもミアルは色々抑えていたらしい。今更な恋人関係に私たちはやっとなれた。特に何が変わったかというような変化はないくらい元々仲がよかったけれども。
今も私の中には不安が渦巻いている。聖光神教のこと、クラスメイトのこと。何かの拍子でミアルを、親しい誰かを喪ってしまうことを。ミアルと同調している間はそのことを考えることもなく、私が特に不安に思っている時はミアルにはお見通しなのか特に積極的になってくれる。
ミアルも聖光神教の一件、以来同じく疑似精霊を宿したフィリスの事を気にしており私が取られるんじゃないかと不安がっているのかもしれない。私がミアルから離れるなんてありえないのに。
けれど、もしフィリスが私を求めてきたら、私は拒み切ることはできるのだろうか?私の魔法で人としての在り方を外れた者が、私がミアルへ、ミアルが私に向けるそれと同じ熱量で求めたとしたら?
……我ながら酷い女だと思う。そうなったら私はフィリスを完全に拒絶することができない。天涯孤独だったフィリスにこの世界に一人落ちた私をどこか重ねて考えてしまう。もしあの時ミアルに拒絶されていたら?それを考えるとぞっとする。同じ気持ちをフィリスに味わってほしくは無い。フィリスはいい人だし頼れる先輩。私がしたことの責任もあるし傷つけるようなことにはしたくない。
けれど、それでミアルに愛想を尽かれたくはない。ミアルは理解してくれるとは思うけど、それに甘えるのも違うと思う。幸いフィリスは否定しているから今の関係を維持できているけどいつか爆発するのだとしたらちょっと怖い。
きっと、いつになっても私の中の不安は消えないと思う。それでも、この世界に落ちてきた時よりは随分と和らいだように感じる。
フィリスとの関係もはっきりして、もう少し心に余裕が持てるようになったらこの世界の色々なことを探求してみたい。世界を超える魔法はもちろん、他にも色々な魔法、未知の素材、魔道具やアーティファクトと呼ばれる物品。作ったり試したりしたいものはいっぱいある。
心に余裕が無い時はそんなこと考える暇も無かったが、せっかくファンタジーな世界にいるのだからその分野の物語を読んだ時の憧れを追いかけたい。既に希少金属合金で漏れていたけど全然足りない。
その為にも、
「見つけた、あれだ!フィリスが壊した奴!!」
その未来を壊そうとする連中は返り討ちにする。例えそれが同郷だとしてもだ。
元々ミアルと一緒に生きていくために考えた疑似精霊、それを自分に施す時がきた。連中を、いずれ戦うことになる他のクラスメイトに対抗する為にも疑似精霊の力は必要だ。
フィリスは今一人で戦っている。私のこれからの人生の為にはどんな形であれフィリスもいてくれないととても困る。だって、いつも常識側から止めてくれるのはフィリスなのだから。
「ミアル怒ってたなあ……」
案の定ミアルはおかんむりだった。事情は理解してくれて色々とお仕置き混じりで魔力を分けてくれたが、きっとあれだけで満足なんてする筈がない。
「私にはもったいないくらいのいい子だよ。ミアル。もう好き。めっちゃ好き」
自分も同じくらいのいい女になりたいけどとても難しい。私にできることといったら荷物持ちとミアルの感情と過激になりがちな愛情表現を受け入れることと美味しいご飯をつくってあげられるくらい。
「もう、覚悟決めないと駄目だね、これ」
もしかしたら、この一件が終わったら最後の一線が破られるかもしれない。それぐらいでないときっとミアルの気が済まないかも。そう考えると、なぜか嬉しさがこみあげてきてきてしまう。それに伴う諸々の不安は微塵もなかった。
「私って大概だなあ……」
思わず緩んでしまった頬を引き締め、目的の場所に向かう。絶対に皆でアダマートに帰るために、私もできる最大限のことをするんだ!!
10,000pvを超えられたのもこの作品を読んでくださる皆様のおかげです。
これからも続く「妖精の子はデウスエクスマキナと旅をする」をよろしくお願いします!
『面白かった!』
『続きが気になる!』
『もっとバトルを!』
『ミアルと梓美をもっとイチャつかせろ!』
『フィリス頑張れ超頑張れ』
『一人称視点もっと読みたい!』
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