21話~隕石回収、そして~
「あれは、『精霊の骸』ですわね。大昔の精霊が地中深くで息絶え、そのまま物質化したもの、らしいですわ」
「魔力が物質化?……いや、妖精族も何割かは魔力で体ができてるのに触れるってことは実体があるわけだし、化石みたいな物かな?」
梓美の推測にヴァイラナが頷く。精霊の骸とは息絶えた精霊が地中深くの圧力で魔力に霧散することなく残り続け、永い時を経て鉱石の様に物質化したものとされている。それが隕石落下によって地面が大きくえぐられたことによって露出したのだろう。、魔の森深層を生活圏にする妖精族はふとしたことで目撃する機会があるのだが、なぜ精霊が地中深くで息絶えているのか、物質したかは明らかにされていない。
「つまり、鉱石でありながら魔力の塊……?物質でありながら魔力……ふむ」
「梓美?」
ミアルは察した。梓美はこの精霊の骸も何かに使えないかと考えているのだ。しかしその考えにミアルは手放しでは賛同できなかった。精霊は文明が興るより遥か昔にこの世界に多く存在していたという。やがて肉体を持つ生物達に取って代わられたり交わることで純粋な精霊は姿を消していったらしい。この場所はクレーターができる前はその太古の精霊達の墓場の様にミアルは感じていた。精霊の骸は地面から露出している一部分だけでも高さ数メートルはあり、そこから予想される一体分の体積だけでも全てを持ち帰るのは不可能だ。それを素材目的で破壊してまで手に入れるのは太古の精霊への冒涜のように思えた。
「梓美、さすがにそれはどうかと思うよ?なんか墓をあばくみたいでボクいい気がしないんだけど」
「うん、わかってる。わかってるんだけど、魔力であり物質でもあるってもしかしたら画期的な物が作れるんじゃないかと思うとあああ……」
「何かよくわかんねえけどこいつも葛藤してるな……」
梓美もミアルの考えはわかっているのか素材として色々試したいという欲求と太古の大いなる存在をこのまま眠らせるべきなのかという考えがせめぎ合っている。そんな梓美の葛藤にヴァイラナが光明を差す。
「ええと……ミアルの考えに水を差すようで悪いのですが、精霊の骸はわたくし達も利用していますわ。魔力を溜めこんでおけばいざという時に使えますもの。それに、化石を利用して物を作ることもあるのでしょう?そこまで気にしなくとも……」
「あ、そうか、七輪もあれ珪藻土……微生物の化石から作られてたんだっけ」
「え!?あれも化石なの!?」
以前、街で買い物をしているときに梓美は七輪によく似た携帯コンロを見つけ梓美は即購入していた。野外で焼いた魚や薄切りの肉は木炭の煙で香りがついてより美味しくなるのでミアルもお気に入りだ。
「そうなると別に悪いことじゃないのかな……?魔獣の素材を使ったり遺跡からお宝を発掘するのとそう変わらない気もするし……?」
「そこは人それぞれだろうな。敬意とか価値観にもよるだろ。それよりも、第一目標はそこの隕石だろ?まずそれを回収してからだな」
フィリスの言葉に皆が頷く。いつまでもクレーターの淵に居続けてもいつ魔獣に目をつけられるかもわからない。隕石で"奈落"の容量を埋め尽くしてしまえばどの道持ち帰れないのだから精霊の骸をどうするかの議論は隕石を回収してからでも遅くは無いので一行はクレーターを降りることにした。
「飛びながら降りますわね」
「宙を跳ねながら降りれば安全かな」
「無重力状態をうまく調整すればゆっくり降りられるね」
「ってうおわあっ!?お前ら色々ずりぃいぃぃぃぃぃぃ!?」
一人足を踏み外した勢いのままズザザザザザザーーーーーーッと滑り降りていくフィリスを余所にヴァイラナは持ち前の飛行能力で、ミアルも風魔法による跳躍と風の操作による落下速度の調整で、そして梓美は合金作成時に習得した無重力を発生させる魔法で足場を気にすることなく速過ぎず遅すぎない速度で降下していく。
「うわー、フィリス、大丈夫かな……?」
「誰かに抱えて貰えばいいって言ったのに……。フィリスだけ飛んだり浮く手段持ってないもんね。無重力状態作る魔法がこんなところで役に立つとは思わなかったわ」
「あの、向こうで何やら爆発が起きてるのですが、フィリスさんではなくて?」
「「え!?」」
クレーターを降りる間、そしてクレーターの底にも魔獣の姿は無かった。餌となるものが無い以上わざわざ降りるメリットもなかったのだろう。安全に三人は降下することができた。
滑り降りながら何やら爆発を起こしたフィリスに遅れて三人が隕石の元までたどり着いた時、フィリスは精霊形態になって涙目で肩で息をしていた。どうやら精霊形態になれる程かなりギリギリな状況だったらしい。そして足元にはその精霊の骸と思しき破片がバラバラと散乱していた。
「精霊の骸にぶつかりそうになった時はマジで死ぬかと思ったぞ。人っぽい顔の石像みたいなのが視界に迫ってきて気がついたら精霊形態になって爆砕してた。悪ぃ。」
「いや、うん。フィリスの命には代えられないし、無事で良かったよ」
クレーターの斜面を滑走するフィリスは進行方向上にある地面から突き出ていた人型の精霊の骸の2メートル程の頭部に衝突する寸前で精霊形態になり、渾身の一撃で精霊の骸を粉砕、その爆炎の反動で宙を舞い、何とか落下も爆炎を真下に放つことで勢いを相殺し、着地できたらしい。
「……それにしても、これ一つでここまでの大穴ができるなんてね」
「もっと大きい岩が落ちてきたのかと思いましたわ」
ミアルが隕石に視線を向ける。その大きさは高さ10メートル程、横の直径が20メートルといったところで、金属質な輝きを放っている。基本的に隕石の直径の10倍のクレーター径になる地球環境と重力、大気組成がほぼ変わらないこの世界に隕石が落ちたにしてはクレーターに対して小さいサイズではあった。
「視た感じだと鉄?と……オリハルコン……僅かだけどヒヒイロカネも混ざってる?うわあ!宇宙産希少金属の塊なんてすごい!」
大まかに"解析"で隕石の組成を視た梓美は希少金属の塊であることに大はしゃぎだ。希少金属内の魔力が衝突の際に尋常ではないエネルギーを放ち、村一つ分はありそうな大規模なクレーターを形成したのだろう。この隕石の大きさであれば、梓美の新しく作る装備の素材として十分な量の希少金属や鉄を確保できるだろう。
「この大きさなら問題なく"奈落"に収納できるし、容量もまだまだ余裕あるよ!……で、このフィリスが砕いちゃった精霊の骸の破片どうする?」
「事故とはいえ砕いておいて何もしないのもそれはそれで失礼というかなんというか……ほら、狩りはしても食べも素材の利用もせず、みたいな感じで」
「いや、必要なことだったんだからそこまで考えなくてもいいだろ。障害物壊しただけなんだし」
結局、元より物言わぬ屍、化石を利用することとさほど変わらないこという意見もあり、意図せず壊してしまった分は持ち帰ることになった。
「さて、これで現地の状況記録すれば私達が依頼された隕石落下地点の調査は完了、帰って報告だね」
「これ、素直に全部報告していいのかなあ……?こんな量の精霊の骸、絶対調査したがる連中がいるよ」
「ここまで来れる人は限られてるしあたしらも領主サマから言われた別件の依頼があるだろ。ムロアウィールドに獣王竜の肉を運ぶって奴」
「そっか、しばらくボク達アダマートを離れることになるんだ」
「最近忙しかったしのんびりゆったりしたいよね。割と激動の数ヶ月だった気がするよ」
「それ、あたしが一番言いたいんだが……」
「フィリスさん、ずっと巻き込まれているようなものですものね……」
ミアル達とパーティーを組んでから大体騒動続きの毎日を送っているフィリスにヴァイラナは少しばかりの同情の目を向けるのであった。
◇
「まあ、確かにな?どうやって上に上がるのかって疑問に思ったけど一体なんだこの絵面は」
「ねえフィリス?ちょっと押し付けしぎじゃないかな?ぺたんこなボクへの当てつけ?」
「そんな気微塵もねえよ!胸当て外せって言ったののお前だろ!こちとら落ちないかの不安でいっぱいだよ!」
「おわあ……私の背中におっぱいの柔らかさがいっぱい……そしてミアルと抱き合ってるこの状況は天国では?」
「あ~ず~み~?」
「梓美それマジで止めろ!夢見心地になってんじゃねえ!ミアルの機嫌直さないと何されるか分かった物じゃないぞ!ここでお前が魔法の制御失ったらお前とミアルは立て直せてもあたしは真っ逆さまなんだぞ!?」
「楽しそうですわね……」
三人寄ればなんとやら。数十メートルもの深さのクレーターから脱出するためにミアルとフィリスは梓美に密着して無重力魔法で一緒に浮かび上がっている。当初は自力での浮遊、飛行手段を持たないフィリスを梓美が背負い、ミアルは自力で跳ぶ算段だったのだが、フィリスと梓美が密着することになるのに不満を示したミアルに梓美が一緒にどうかと提案したところ二つ返事で了承、こうして梓美に抱き着いて一緒に浮かぶことになった。ちなみにフィリスが胸当てを外した上半身インナー姿なのは防具が梓美の背中に当たって痛そうだとミアルが言ったからであるが、結果的にフィリスの豊満な感触がインナー越しに梓美に伝わってしまい敵に塩を送ってしまった気分になるミアルであった。
「はっ!?ごめんミアル前後にこう、挟まれてる感覚が幸せで!?」
「それ謝ってるのかな?顔緩んでるよ!梓美おっきい胸好きなの!?」
「こんな状況で痴話喧嘩はやめろぉ!まだ精霊形態なのに寒気が止まらないんだよ!」
「わー!?フィリスがさらに密着してきた!?梓美も嬉しそうにしないでー!すぐ顔に出るからわかるんだよ!?こうなったら……うりゃ!」
「ひゃわあ……前からも後ろからもむぎゅむぎゅ……どうしよ、なんかどうしよ?」
「いいから重力操作に集中してくれー!」
フィリスに対抗せんと全身で密着しようとするミアルに語彙が消失する梓美。完全にエロオヤジの思考である。そして段々と高度を増しているのに術者のこの有様はフィリスには恐怖でしかなく、梓美にしがみつく力も強くなり密着感が増すというループに陥っている。とはいえ、魔獣が立ち入らないクレーター内だからこそのこの空気感であり、クレーター外は変わらず弱肉強食の世界である。
「三人とも、そろそろクレーターの外に出るのだから気を引き締めてくださいませ」
クレーターの内壁に阻まれて上手く探知ができない為、先導するヴァイラナが警戒しながらクレーターの淵より上に飛ぶ。目視も併せてこちらを狙う魔獣はいないことを確認しようしている。
ーーーーーーその瞬間、
「!?」
ヴァイラナを一条の光が貫いた。
ぐらりと飛行の為の魔法が切れ落ちてくるヴァイラナにミアル達が驚愕に目を見開く。そのクレーターより外、ミアル達の降りた反対側ではやや離れている場所で二人の男がほくそ笑む。
「当たったな、ザマアみろだ」
「よし、須藤、確認にいくぞ」
聖王国に召喚された梓美のクラスメイト、『聖騎士』岸田聖也、『拳豪』須藤憲二の姿がそこにあった。
緊迫した状況になりましたがここで補足。梓美は大きい胸が好きなわけではなくその人に似合ったバランスのいい大きさの胸は大小問いません。ミアルのボーイッシュな雰囲気に合うちっぱいにも、フィリスの健康的で引き締まった身体に実った果実も両方とも梓美には好ましいのです。男なら殴られてる。
あと女の子の柔らかい感触も梓美は大好きです。男なら殴られてる。梓美はミアルに間違いなく依頼終了後襲われる。
『面白かった!』
『続きが気になる!』
『もっとバトルを!』
『ミアルと梓美をもっとイチャつかせろ!』
『フィリス頑張れツッコミ超頑張れ』
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