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17話~妖精族の強さ~

「というか、だ。妖精族って皆あれだけの力があるのか?その気になったら文明支配できるんじゃねえのか?」


 疑似精霊によって能力が開眼したたミアルはともかく、実際の妖精族であるヴァイラナの戦闘能力を目の当たりにしたフィリスが疑問を口にする。闇、あるいは光属性を指す二極と火、水、風、土の四元素のいずれかは組み合わせることでその効果が飛躍的に上がり、闇と風を使えるヴァイラナの魔法もドラゴンと渡り合えるのではないかという程の強力なものだった。

 それを差し引いても元々有する魔力量、周囲の魔力を自身の魔法に上乗せをはじめとした《精霊術》スキル、殆どの人型種族を上回る魔力操作に魔力を直接感知する《魔力知覚》と、常人には太刀打ちできない魔法の使い手であることは間違いなく、妖精族のしかし、ヴァイラナは首を振る。


「期待を裏切るようで申し訳ないのですが、わたくしを基準にしない方がいいと思ますわ。一般の妖精族はここまでの力は出せないかと。わたくしが長の子というのもあるとは思いますが、おそらく妖精族同士での子よりも他の人型種族の血を取り入れた子の方が力は強くなるのではないでしょうか」

「混血の方が強くなる?どういうこと?」


 ヴァイラナの仮説に梓美が首を傾げる。


「妖精族はその体の何割かが魔力そのもので構成されていることはもうご存じですわよね?それが自前での大規模魔法を手足の様に扱える一因なのですが、逆に自前の魔力を失えば身体機能も大幅に弱まってしまいますの」

「そっか、身体も魔力ってことは自前の魔力を使うと文字通り身を削るようなものだからね。外部からの魔力吸収はあくまで上乗せだから多少は発動に自前の魔力を使うないといけないし長引いたりするときついか。まあ、ミアルの場合は殆ど肉体だから魔力が減ること自体の肉体へのデメリットはないし精々精霊形態の解除くらいかしら」

「ええ。それは妖精族同士から生まれた者が顕著ですわ。肉体の比率が落ちてより魔力に依存しやすくなってますの」

「ん?ということは魔力を奪われるとそれ自体が致命的な攻撃になるってことか?あたしや梓美みたいに闇属性で魔力そのものに作用させるようなタイプは天敵か」

「ええ。それに自分の消耗にも過敏になりますわね。一方でわたくしみたいに他種族を繁殖相手にして生まれた子は肉体の比率が多く、いくつかデメリットの代わりに魔力が減っても肉体的消耗は軽くなりますし魔力の回復もしやすいんですの」

「デメリット?」

「ええ。肉体の維持のために食事量が他種族程ではないにせよ増すこと、魔力を扱う能力も妖精族同士からの子に比べて生まれつきの段階では劣り練習が必要なこと等ですわね。他にも、自身の魔力量を調整して体の大きさを変える能力なんかも大きく劣りますわ」

「混血タイプは環境が良くないと育ちにくそうよね。普通の個体より食事も訓練も必要なんて」

「けれど、繁殖相手の能力を受け継ぐこともあって能力そのものは優れた子になりますの。だから自分達の種族を守るために、長の一族は他種族を繁殖相手にして強く戦いの素質を持つ子を残しますのよ」


 ヴァイラナもルルからの遺伝のおかげか、妖精族の中でもとりわけ高い魔力保有量を誇るからこそ、あそこまで高威力の魔法を連発して戦い続けることができた。


「他種族との子だとしてもわたくし程になるとも限りませんし、必要な食料も多くなって大変。そういうわけで妖精族が世界の制覇、なんてのは無理ですわね。とはいえ防衛に専念する分には他種族が攻め込んできても返り討ち、いえ、カモにするくらいの力はありますわ。過去には愛玩用に捉えようとした不届き者を逆に捕えて母胎や種扱いして森に打ち捨てたりもしたそうで、その時に母様は生まれたらしいですわ」

「さりげにえぐい……いや、どっちが食い物にされたか、って話なだけか」

「魔獣狩りで食うか食われるかとそう変わらないもんね。……私も冒険者思考になったのかなぁ?いや、元々?」


 元々襲撃したのは他種族側なのでそれで負けて仕打ちを受けたとしても文句を言える筋合いは無い。その考え方をあっさり受け入れているのは元来の性格なのかこの世界に来てからなのか自分でもわからず思わず苦笑いする梓美。


「あ、誤解の無いよう言わせていただきますがわたくし達姉妹は母様がルル母様を助けて、口説いて色々して陥落させて愛の巣に閉じ込めての結果ですのでちゃんと愛の結晶ですわよ?」

「その『色々して陥落』とか『閉じ込める』とかがなんか不穏だよ!?」


 危うく吹き出しそうになるミアル。穏やかではないワードがところどころ含まれており一体母に何があったのか気になるが聞いたところで碌でもないことは察しがつくので答えは知りたくない。


「ちなみにミアルがエルフとして生まれることがわかった時は魔の森は他種族の身体の子を育てられる環境では無いからと母様も断腸の想いでルル母様を眠らせている間に人の生活圏に戻したそうですわ。アズミさんはもうわかってると思いますでしょうが妖精族の魔力同調って"魅了"に似た影響もありますし依存しやすいもの。荒療治と言ってもいい方法でしたが意識があったら絶対に反抗されていたと思いますわ」

「あー、『色々やって陥落』ってそういう……私の場合半ば事故だったけど似たやり口なあたり血は争えないのかなあ」

「まあ魔力同調でメロメロにさせるのは一種の求愛行動ですしゴブリンのするような魔力侵食と違って気の持ちようで跳ねのけることはできますわ」

「私は元々一目惚れもあったし嫌じゃなかったけどね。まあ、一度身を委ねるとズブズブ沈んでいきそうではあるけれど。そうなるとルルさんもまんざらじゃなかったのかな?」

「待ってそっちの方向に話持ってかないで!かーさんの恥ずかしい話とかいたたまれない!」


 母親の恥話を聞かされて平然としていられるミアルではなかった。聞いた限りだと今のルルからは想像しがたいが、当時のルルは自分に対する梓美のさらに色々のめり込んでしまっていた感がしている。絶対に自分達にも起こりうる、というか宿では毎夜イチャイチャしているので片足突っ込んでいる気がしなくもない。もっとも梓美はわざと薄い服を着たり無防備に寝転がってミアルの理性を壊して襲われたがっている節もあるので手遅れかもしれないが。


「まあ当時のルル母様達の蜜月については今度風精(シルフ)の集落にいらしたときに母様から聞くといいでしょう」

「そりゃあもう一人の親には会いたいけどそういう話はあまり聞きたくないなあ……というか誰が両親の情事を聞きたいって思うんだよぅ……」

「私は聞いておきたいな。色々と円満な生活の為にも……」

「義父と婿の猥談かよ。で、妖精族そのものじゃなくてヴァイラナが飛びぬけて強いってことはわかった。で、親は同じなミアルも疑似精霊で《精霊術》が扱えるようになったから互角に渡り合えるようになったのも納得だな。これやっぱり本来梓美の想定した「『焔鯢竜』でもあたしは二人には劣るのか?現段階だと二人の流れ弾捌くだけでもきついぞ」

「ううん。特効の問題でミアル相手は変わらず厳しいとは思うけど『焔鯢竜』も本来『霆凰』に負けないくらいのポテンシャルを想定して構築してあるよ?魔力調整はフィリスの身体に馴染むようにしてただけでそのスペックの引き出しはまだしてない。リソース補充すれば得手不得手の違いはあれど総合的には遜色無くなると思うよ?」


『焔鯢竜』は本来の想定では純粋な破壊力に関して『霆凰』より優れており、何より肉体の欠損を回復できるほどの生命力の増大はミアルには無い能力だ。現在は火力面が構築時の魔力不足で不完全なままである。現在は余りにも過ぎた力を持つことへの懸念から『焔鯢竜』の能力を完全に発揮させることは保留となっているのだが、実はもう一つ問題がある。


「まあ、また魔力同調でも調整が必要になると思うけどね。フィリスはミアル程すんなり体に馴染むわけではないし」


 元々梓美が自身に使おうとした"降神霊機構(デウスエクスマキナ)"。梓美の魔力を活性化させ、以後も頻繁に同調して魔力の親和性が高かったミアルは問題なく適合したものの、フィリスの場合はしばらく魔力の流れに異常が出たため、梓美による魔力同調で『焔鯢竜』がフィリスの身体に馴染むように定期的に同調をしながらの調整をしていた。もし『焔鯢竜』の能力を伸ばすなら前回ほどではないにせよ再調整が必要になるだろう。しかし、それを聞いたフィリスはビクッと震えて梓美から距離を取る。


「頼む、勘弁してくれ!やっとあの感覚を思い出さないようになってきたのに!あれ以上されるのは駄目だ!」


 必死な顔で懇願するフィリスにヴァイラナが首を傾げる。


「あら?アズミさん側からも同調できるのかしら?でもそこまで嫌がる程の不快感、というのも珍しいですわね。相手を嫌悪でもしてないか相当下手でもないとそこまでの拒否感は……」

「違うんだよ!()()()なんだ!段々あたしがあたしじゃないような感じになってそれが癖になっちまいそうで……後はもう察しろ!」


 顔を赤くするフィリスに「あー……」と得心したまなざしを向けるヴァイラナ。フィリスにとっては色々目覚める一歩手前で踏み留まっているのにわざわざトドメを刺されるような状況になるのは避けたいのは当然だ。何よりミアルに対してとても気まずい。


「アズミさん、もしかして魔力同調、お上手ですの?」

「えーと、上手なのかどうかはわからないけど、ミアルにしてあげた時は……」

「わー!わー!わー!ボクがした時の感じから学んで一緒に同調しあう程度には得意だよ梓美!おかげで冒険者初めてから魔力の調子が悪くなったことは一度もないかな!」


 危うく自分の恥ずかしいところを話されるところだったミアルが割り込む。ふむ、と少し考え込んだヴァイラナは梓美に手を差し出す。


「ちょっとわたくしに同調してみたくださる?実際に受けた方がわかると思いますの」

「ねーさん!?」

「妹の伴侶のテストですわ。マッサージの腕前を見るものと思ってくださいまし。我流なのでしょうしもし危ないところがあったら困るのはあなた方ですのよ?」


 反対しようとしたミアルだが梓美の同調はミアルの模倣であり、そこから自分なりにアレンジしているので第三者から見た技術の程度は不明瞭だ。一度その程度を測って改善点があるのならばミアルにとっても悪い話ではないので渋々引き下がる。


「それじゃ、はじめますよ、義姉様」

「ええ、どうぞ。ミアルにするくらいのつもりでどうぞ!」

「ねーさん、それは止めておいた方が……」


 ヴァイラナの手を両手で掴み、魔力を流し込んでいく梓美。


「あ……優しく流れ込んできますわ。なんか体の中心で溶けるみたい……」


 流れてくる魔力の心地よさ、それが溶けて薄く全身に広がっていく感覚にヴァイラナは目を細める。


「ん?なんかあちこちに『凝り』みたいな物が。初めて精霊形態使った時のミアルの状態をもっと悪くした感じ?ちょっとほぐすね」

「え?別にそんな悪いところなんてふゃああ!?そこはぁ!?あっ、うぁっ!?」


 ビクン!とヴァイラナの身体が跳ねる。押されて漏れてしまうような声をあげて悶えはじめる。


「ひゃうう……背筋がが熱くて痺れて……耳もじわじわ熱くて、これ、駄目です、駄目ですわぁ……」

「なあ、これ、まずくないか?身に覚えがあるんだが」

「うん……ボクも見覚えがあるよ」


 頬が赤くなりながら半目になるミアルとフィリスの視線の先で目を蕩けさせてビクビクと体を震えさせるヴァイラナ。半開きの口からは悩ましげな声が漏れ続けている。その後数分間淫靡な空気漂う魔力同調は続き、梓美が施術を終えた時には完全に骨抜きになってしまっていた。


「これでバッチリ!……って義姉様?」

「梓美、やりすぎ。ボクと同調しあった時一緒に(気持ち良すぎて)気絶しちゃうことあるの忘れてる?」


 その後、意識を取り戻したヴァイラナは涙目で顔を真っ赤にして梓美は他者、特に妖精族の血を引く者へのむやみな魔力同調の禁止を言い渡したのだった。



ヴァイラナ「義妹の腕前の程見極めさせていただきますわ!」

「義妹には勝てませんでしたわ……」


『面白かった!』

『続きが気になる!』

『もっとバトルを!』

『ミアルと梓美をもっとイチャつかせろ!』

『フィリス頑張れツッコミ超頑張れ』


他諸々という方がおられましたら大変励みになりますので感想やブクマ、広告下の評価(⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎になってるやつ)を是非宜しくお願いします。感想貰えたりブクマが増えていると大変励みになります!

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[一言] お義姉様、即落ち。 梓美、おそろしい子……!(笑)
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