15話~ミアルVSヴァイラナ 妖精姉妹大決戦②~
ミアルは即座に”旋斬光輪”をヴァイラナのいた方向に放つ。空中に咲いた爆炎が回転する光環に切り裂かれ、纏う旋風に吹き散らされたことで一気に視界が開ける。
「くそっ、外したっ!」
しかしそこにはヴァイラナの姿は無く、光輪は虚空の彼方へ飛び去って行く。
「あんな物騒なもの当てないでくださいまし!」
ヴァイラナの声、その真逆の方向から紫電を帯びた黒風の弾が次々と飛来する。
「うわ、逆!?そうか、音波を!」
ヴァイラナは風属性魔法で音の出所を操作して声から自分の居場所を特定されるのを防ぎ、そのまま不意打ちに繋げたのだ。ミアルは一瞬声の方向に気を取られるものの、”風壁”を展開して飛来する魔法弾を難なく防いでいく。精霊形態で出力が底上げされた”風壁”の前には黒風も帯びた紫電も一切ミアルに届くことはない。しかし、攻撃を事もなげに防いでいくミアルの表情に余裕はない。
「対処はできても、見つけづらい……っ!」
ヴァイラナは縦横無尽に飛び回りながら黒風弾を放ち続けている。その間も風と闇の属性によってミアルの風による探知から逃れており、ミアルが魔力を基に攻撃を察知した時にはその場から既にヴァイラナは離脱している。そのためミアルはヴァイラナの実体は捉えられずにいた。
しかし、攻めている側ののヴァイラナにもその表情に余裕の色は無い。
「こっちが速く撃ってるのにすぐに対処されるなんて……っ」
魔法の発動速度はミアルの方が上であり、後出しで自身の魔法を防がれてしまうのだ。多少威力が犠牲になりながらも速度優先で攻撃しているのはミアルの探知をすり抜けて自身の居場所を悟られないようにしつつ生じた隙を突く為だったのだが、完全に不意と突いた筈の魔法にすら反応して防ぎきったのは予想外だった。おそらく放つ一瞬の『溜め』の時点で察知されてしまうのだろう。加えて飛び回っているヴァイラナが翻弄しているようにも見えるが、むしろ飛行に魔力と意識を割いている為地に足を着けているミアルの方がまだ余裕がある。
とはいえミアルはヴァイラナに攻撃することができておらず、ヴァイラナも有効打を与えられない現状が続けば千日手になることは目に見えている。多少強引かつリスクを払ってでも状況を変えるべくヴァイラナは行動に移す。一度空中で静止し、”風壁”を破るのに十分な威力になるよう周囲から魔力を集める。妖精族は周囲の魔力を取り込み自身の魔法に上乗せすることができ、自身の魔力量を遥かに超えた魔力運用ができる。しかも自分自身の消耗は実際の魔法効果に対してかなり少ないので並みの冒険者が数発撃てれば上出来な規模の魔法も撃ち放題なのだ。
しかし、魔法を放つ直前、ヴァイラナを碧雷を帯びた竜巻が閉じ込める。
「なっ、これは!?」
「捕まえたよ、ねーさん!」
竜巻で相手を閉じ込める魔法”嵐獄”だ。ミアルはヴァイラナが”風壁”を破る為に動きを止めるのを待っていたのである。
戦いの場所を整えた時にヴァイラナが周囲の魔力を取り込んでいるのはわかっていた。精霊形態時に周囲が放電し、それがミアルに吸収されていたのはその模倣であり、既に見よう見真似ながらミアルも周囲の魔力の吸収は会得していた。実は獣王竜戦時にも無意識下で扱えてはいたのだが現在は意識して使用することでその効率は段違いだ。
そしてミアルでも身を隠すための風の操作に飛行と魔力の取り込み、さらに攻撃魔法の発動の全てをを同時に万全にこなすことはかなり困難であり、ヴァイラナでもミアルの守りを最短の魔力吸収時間で抜くには一度地上に降りるか空中で停止し魔力吸収と魔法発動に集中する必要があると推測した。攻撃を中断して飛行しながら魔力を吸収した場合もその魔力の流れをミアルは察知でき、攻撃に転じることができただろう。
ミアルが金剛杵を"嵐獄"の上空に向ける。ちょうど"嵐獄の真上で放電が起こり、やがて稲妻が走る。
「これでやられないでよ?"雷霆・光雨"!!」
雷による高火力広範囲攻撃"雷霆"、その対地攻撃である"光雨"である。"嵐獄"の中心は台風の目のようになっており、巨大な獣王竜なら閉じ込められるしかないが人間サイズで飛行できるヴァイラナなら唯一の逃げ道になっただろう。その一点に雷の雨が殺到する。その威力の総量は"金剛撃雷"並みであり、それが一挙になだれ込んだ"嵐獄"は耐えかねず吹き飛んでしまう。
ミアルの目論見は上手くいったようでその中からヴァイラナが飛び出してくる。外傷こそ無いが身に纏っていたレースワンピースはスカートの一部が損傷し、そこから白磁のような足が露出してしまっている。
「今のは、危なかったですわ。閉じ込めて唯一の逃げ場を集中攻撃なんて。脱出や防ぐよりも嵐の壁を壊してしまった方が楽でしたわね」
素直に真上の出口に向かったところへの雷の雨。とっさに防いだものの周囲の魔力を吸収する余裕もなかったためヴァイラナはかなりの消耗を強いられ、息が上がっている。
その様子を見てミアルも背中の翼を動かし飛翔し、ヴァイラナとほぼ同じ目線まで上昇する。
「何故飛び上がったんですの?このまま地上から攻撃を続けていれば有利なままだった筈ですわよ?」
「元々ボクは飛びながら戦うつもりだったよ。飛びながら力を振るう機会なんてそうないからここでしっかりと身に着けたいから。さっきまでは飛んだところでタコ殴りにされるから身を隠す余裕は剥がさせてもらったよ」
ヴァイラナの身を隠す魔法が有効なうちは相手が上下左右どこにいるかわからないまま空中戦を強いられることになる。それはあまりにも不利なのでミアルはヴァイラナの消耗を狙ったのだ。これほどの消耗でも互いに身を隠さず空中戦をする分には問題ない。
「ええ、空中戦が不慣れなミアルには良いハンデですわね。これまでされた分、まとめて返礼させていただきますわっ!!」
ヴァイラナから黒風弾が放たれる。それを回避するミアルだがその回避方向に追撃が飛来し咄嗟に"風壁"で防御する。しかしミアルの探知が既にヴァイラナが背後に回りこんだことを悟った時にはこれまでのものよりも強力な黒風弾がミアルを襲う。
「こん……のおっ!!」
金剛杵の中心の刃と両側の刃の内側から延長されるように光の刃が伸び、黒風弾が切り払われる。梓美考案のより近接戦向きの光の刃を生成する"閃斬光刃"であり、ミアルは風や雷を纏わせることで物理的威力を増大させている。そのままヴァイラナに向かって碧雷を帯びた風弾を放つが黒風弾に相殺され、両者はそのままドッグファイトを展開する。
「うわっ、また後ろ!?」
「『また』はこっちのセリフですわ!すぐに反応して防いでくるのは厄介極まりませんわね!」
魔法の速度、精度は空中戦においてもミアルが上だが、空中戦に一日の長があるヴァイラナが有利なポジションを取り続けるためやや不利だ。未だ撃墜されていないのはその発動速度のおかげで防御が間に合っているからだ。その後も二人の戦闘は続き、
「なっ、今度はすり抜け……光で誤魔化しましわね!?」
「ああもう、すぐバレた!」
ミアルが"光衣"で姿を隠し、自分の姿を投影して攪乱を図ればミアルがした時同様に本人の魔力で見破られて対処され、
「おりゃあああああ!!"霹轟靂砕"!!」
「真正面から紫電をぶち破って突っ込んで来るなんて無茶苦茶ですわ!?」
ヴァイラナが"風壁"ごと吹き飛ばそうと闇属性による破壊効果に特化した紫電主体の竜巻を放てばミアルは金剛杵で薙ぎ払いながら突撃をかまして接近戦に持ち込もうとしたりとあの手この手と互いに模索するように色々な戦い方を二人は試す。
二人は気付いていない。互いに遠慮なしに放たれる魔法がどんどん更地を広げていってること、最初は観戦ムードで塩を振って味付けしたナッツ類をかじりつつ二人の戦いを眺めていた梓美とフィリスがミアル達の戦いが空中戦になってからは流れ弾から自分達の身を守ることに必死になっていたことに。
◇
幾度と繰り広げられた空中戦と魔法の撃ち合いの応酬の末に、躱しながら即座に反撃に出たり隙を突いて近接戦に持ち込んだりとミアルは着実にヴァイラナとの空中戦の実力を均衡させていった。
そして何度目になるかわからない大技の撃ち合いで空に再び爆炎が咲く。すでに両者ともに肩で息をし、飛行も最初の頃の鋭さが無くなってきている。すでに互いの消耗度合いに差は無く、空中戦を始めてからはミアルの方が消耗が激しかったようだ。それでも二人は向かいながら笑い合う。
「ふぅ……まさかここまでやるとは思っていませんでしたわ。まさかもう空中戦で追いついてくるなんて」
「はぁ…はぁ……元々空中を跳ねまわることはやっていたからね。それにねーさんがいい手本になった。さあ、ボクはまだまだやれ……」
「いい加減にしろお前らぁ!!」
地上からフィリスの叫びが響く。何事かと二人が見下ろせばそこには『焔鯢竜』の精霊形態のフィリスがこちらに向けて叫んでいるではないか。
「え……?フィリス、なんで精霊形態に?」
「お前らの流れ弾必死に処理してたらなれちまったんだよ!一度周り見てみろ!一回り以上更地でかくなってるぞ!」
戦いに熱中して気付いていない二人が周囲を見渡すと更地の外周がへし折られた木々ばかりになっている。更地の地面も雷で焼け焦げ、風弾にえぐられた跡があちこちにあり戦いの激しさを物語っていた。おまけに日が沈んできており、空は赤らんでいる。実に三時間以上ミアル達は空を飛び回って戦っていたのだ。
「それにもう日が暮れる。このまま続けるのも無理があるだろ?」
「いや、ボクそんなに空中じゃ視力には頼ってないけど。全方位気にしなくちゃいけないし、夜でも問題ないと思うよ」
「ええ。日が暮れるのは対して問題ではありませんわよ?」
「やかましい!流れ弾にさらされるあたしの身になれ!梓美は"奈落"に隠れて一人安全圏に籠っちまったよ!いい加減あたしがもたねえし腹減った!」
梓美は戦闘が激化していってからは危険と判断し足元に"奈落"展開して自ら中に入っていった。右腕を高く上げサムズアップでゆっくりと"奈落"へ沈んでいった意味は地球の某アンドロイドの映画を知らないフィリスにはわからなかったが間違いなく悪ふざけの一環だということだけは察した。そして梓美の判断通り流れ弾の数も規模も増していつの間にかフィリスは精霊形態となって流れ弾から身を守っていたのだ。
「腹減った」とフィリスの叫びに返事をするかのように二人のお腹も「きゅぅ~~~」とかわいらしい音を出す。二人は顔を見合わせる。
「……ご飯にしよっか。梓美の料理、美味しいんだよ」
「……ええ、是非ご相伴に預からせてもらいますわ。気がつけばわたくしもお腹が空いてきましたわね……」
結局手合わせは時間切れで引き分けということになり、赤面した二人は地上に降下するのだった。
気がつけば6000pvありがとうございます!これからも多くの方に読んでもらえるよう精進してまいります!
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