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14話~ミアルVSヴァイラナ 妖精姉妹大決戦①~

 それからしばらく進んだところに木々が少なくやや開けた場所を一行は見つけた。少し前に大規模な魔獣同士の戦い、おそらく竜クラスによるものが行われたらしく、樹高こそそこらの成木並みなのだが、若木の様な枝の付き方をしている木ばかりだった。


「あら、手合わせにはちょうどいい場所ですわね。木々も多くなく、若いから簡単に薙ぎ払えそうですわ。準備をいたしますのでまずは周囲の有象無象を追い払いましょうか」


 ヴァイラナがそう言いながら若木ばかりの場所の中心地点に降り立つ。そして右腕を天に掲げる。


「少し離れて”風壁”の類を張ってくださいな。準備が終わるまでは解除しないように!」


 一体何をするのか疑問に思いながらもミアルが”風壁”を展開したのを見届けたヴァイラナはそのまま掌の上に風を凝縮した球を生成する。それは数m程昇っていくと空中で炸裂し衝撃波と何かの咆哮のような怪音を周囲に巻き散らかす。


 ーーーーーーーーーーギュオオオォォォォァァァァァウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!


「うわああああああああああああっ!?」

「なんだこの音!?」


 同時、木々から一斉に鳥達が慌てふためきながら飛んでいき、獣、大蛇、虫、さらにはワイバーンやメガディノラプターの群れ、果てには樹木に擬態する魔獣トレントと種類を問わずありとあらゆる動ける生物たちが恐慌状態に陥りながら逃げていく。

 ヴァイラナの使った魔法は闇属性による恐慌効果を付与した音波であり、直接耳にすれば本能からくる恐怖を抑えられなくなる。魔の森で眠るときなどに使用すれば数時間は何も寄り付かなくなるが運悪く耳にした冒険者がパニックを起こすという被害もあり『凶鳥の咆哮』という名で知られている。

 ミアルが大半を防いだおかげで事なきを得た三人は周囲の生物が逃げ惑う様相に呆気にとられるが、ヴァイラナの『準備』はまだ終わっていない。今度は彼女の周囲に黒い風が渦巻き始める。それはヴァイラナの右の掌に集中、凝縮すると紫電を帯び始め、徐々に放電の量を増している。


「おい、次のなんかやばくねえか、あれ?」

「ミアル、まさかと思うけど、今掌に集まってる魔力量って……」

「すぐに伏せて!あれ、獣王竜のブレス並みの……!」


 唯一魔力を直接視ることができるミアルが言うが早いかヴァイラナがその場で一回転しながら右腕を振るう。解き放たれた黒い風は轟音と共に吹き荒れ、周囲の木々を吹き飛ばし、さらに紫電が吹き飛んだ木を粉々に粉砕する。たった一撃でヴァイラナの周囲数十メートルは更地となった。その中心に降り立ったヴァイラナが微笑む。


「さあ、準備は整いましたわ。それにこれだけの力を見れば、すぐに全力が出せるではなくて?」


 その場に伏せ、さらにミアルが”風壁”を張りつづけていたことで三人は無事だったが目の前の惨状に唖然とする。獣王竜はブレスに特化した竜ではないとはいえそれに匹敵する規模の攻撃をたやすく放つ魔力量、それが人間サイズで飛び回るのだ。もはや小さい成体竜と言っても過言ではなく、ミアル達三人が束になっても精霊形態が無ければ勝てるかどうか疑わしい。聖王国側の勇者含む召喚者達を召喚から一月、まだ梓美が魔法の扱いを鍛えていた頃と同時期だったとはいえまとめて一蹴したというのも頷ける。


「では、ミアル、こちらにいらっしゃい。早速始めましょう?」


 緊張した面立ちでヴァイラナの方に向かうミアル。残り二人は巻き添えを避けるため更地の外側で待機だ。


「おい、これミアル大丈夫なのか?」

「間違いなく精霊形態の発動条件の『困難な状況下』は満たせてるから一方的にはならないと思う。というか義姉様も結構無茶苦茶するよね」

「いや待てどの口が言うか!」


 常人レベルでは勝ち目が無いだろうがそれゆえにミアルも精霊形態に即座になれる状態だ。先の一撃の威力から鑑みても精霊形態のミアルとそれほど差は無いように思えた。しかし、経験の差がどのように作用するのかが未知数であり、その点ではミアルが不利だろう。


「ルールは今わたくしの作った更地の範囲内での戦闘。降参するか森の方に出たらその時点で負け。あとは飛んでも潜っても基本なんでもあり。文句があったらその場で異議申し立て。この程度でいいですわよね。わたくし達の間での手合わせですもの」

「うん、構わないよ。もし本当にやばい状況になったら梓美達が止めてくれると思うし」


 止める側も命がけなのは間違いないだろう。そう思った梓美達をよそにヴァイラナと距離を置いて向かい合ったミアルが左肩にかかった三つ編みの結びをほどく。軽く振った頭の動きに合わせて髪がふわっと背中側に流れて行く。髪紐をほどいたのは精霊形態時には髪にもはや雷と言っていい状態の魔力を帯びるため、結ぶ紐が耐えられないからだ。

 準備が整い深呼吸をして姉を見据える。


「-----それじゃ、いくよ。ねーさん」


 ミアルの周囲を風が包み、碧雷を帯びていく。そして碧雷がはじけ、閃光になってミアルの姿を隠す。


「-----ーーー《霊起纏身》」


 閃光が消え、ミアルの姿が顕になる。周囲ではじける碧雷と同じ色に光を帯びる髪、魔力で構成されたボリュームのある羽角と二対の翼によってそのシルエットはおおとり、あるいは巨蛾を思わせる。雷の化身サンダーバードをベースとした疑似精霊『霆凰』の力を身に纏ったミアルの精霊形態である。


「それがミアルの妖精族としての姿ですのね。鳥の要素を省けば天蚕(やままゆ)にも似てますわ。ええ、ええ。とても楽しめそうですわ!」


 ゆったりとした口調に似合わず獰猛な笑みを浮かべるヴァイラナ。ふわり、と空中に浮かびあがり両手を掲げると周囲を薙ぎ払った時よりも膨大な魔力が周囲に渦巻いていく。

 ヴァイラナの周囲の魔力の流れ方にミアルは目を見開くが、すぐにそれは攻撃的な笑みに代わる。ミアルも存分に今の自分の力を試したくて仕方がないのだ。


「ねーさんが烏揚羽(カラスアゲハ)みたいにボクも純粋な妖精族なら本来その類だったのかもね」


 右手に持ったバザラゲートの切っ先を空中のヴァイラナに向けるミアルの周囲では放電を繰り返し、それが集まって小さな稲光となって翼や羽角に吸収されていく。吸収したエネルギーはそのままミアルの発動する魔法に上乗せされていく。持て余していた力を制御するために作られたバザラゲートは遺憾なくその性能を発揮し、アサメイを使っていた獣王竜戦の時よりもスムーズに、より大きな力をコントロールできているのをミアルは感じた。それでいてバザラゲートには一切の負荷の影響も感じられず、その使い心地にミアルは感動を覚える。


「すごい、全然違う。これなら思いっきり力を振るえる!」

「それは何よりですわ。さあ、存分に戦いましょう!お互いのこの一撃を開始の一撃としますわよ!!」


 既に周囲の地形が変わりそうな魔力が二人に集っている。ここからかなり離れた場所からも渦巻く黒い風と走る稲妻は観測できていた。それを目撃した者達は皆一様に天変地異の前触れを予期しただろう。実情は妖精族とその血を分けた混血の妹の手合わせ(じゃれ合い)だったのだが。


「行きますわよ!”黒旋禍”!!」

「応とも!”金剛撃雷(ヴァジュラ)”ぁ!!」


 両者の叫びと共にヴァイラナが両手を振り下ろして放たれた紫電を纏った黒い竜巻と、ミアルが構えるバザラゲートから放たれた雷と颶風を束ねた光束”金剛撃雷(ヴァジュラ)”が二人の中間で衝突する。膨大なエネルギーのぶつかり合いの結果、それは開始の合図にしては大きすぎる規模の爆発を引き起こしたのだった。

『凶鳥の咆哮』の音のイメージは某空の大怪獣の鳴き声。出だしは日本版で途中からハリウッド版になっていく感じで。


妖精族にもいくつか種族があり、ヴァイラナの種族『風精(シルフ)』は風の魔法を得意とする他、魔力によって展開される蝶や蛾といった鱗翅目の翅が特徴。これも個体ごとで翅の形が違い、ヴァイラナはカラスアゲハの様な形と色合いの翅を展開し、もし純粋な妖精族として生まれていればミアルはヤママユガ系統のような特徴を持っていたでしょう。精霊形態時の頭の羽角はその名残でもあります。


『面白かった!』

『続きが気になる!』

『もっとバトルを!』

『ミアルと梓美をもっとイチャつかせろ!』

『フィリス頑張れツッコミ超頑張れ』


他諸々という方がおられましたら大変励みになりますので感想やブクマ、広告下の評価(⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎になってるやつ)を宜しくお願いします。

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