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12話~妖精姫ヴァイラナ~

一部加筆修正しました。

「初めまして、ミアルの姉、ヴァイラナと申しますわ」

「お、おう。姉……例の妖精族か!?あたしはフィリス。ミアル達と冒険者パーティーを組んでる」

「ええと……」


 樹上から聞こえたミアルの叫び声に色めきだった梓美とフィリスにひとまず無事を伝えたミアルは二人にその原因となったヴァイラナを紹介した。唐突な妖精族との遭遇にフィリスは驚きながらも自己紹介しするが、梓美はやや緊張したような面持ちだ。梓美の様子がおかしいことに気が付いたミアルが声をかける。


「梓美?」

「ううん、大丈夫。私も自己紹介するね」


 意を決したように深呼吸した後、梓美が口を開く


「私は東谷梓美、貴女の妹のミアルとお付き合いさせていただいてます異世界人です!妹を私にください、義姉様(おねえさま)!!」

「ぶふぅ!?」

「ちょっと梓美ぃーーーーー!?いきなりなんてこと言うの!?」


 いきなりの交際宣言と『娘をください発言』的なものをかます梓美。当然フィリスは吹き出しミアルは顔を真っ赤にして梓美の両肩を掴んで揺さぶる。


「ちょ、うわ、ミアル!?」

「付き合ってるって話ならまだしも、唐突にボクをください、って!心臓に悪いよ!あとそれボクが言うセリフだからね!?地球(むこうの世界)から梓美を貰うんだから!もう返すつもりないんだからね!?」

「いや、そっちの話じゃねえだろというかのろけるなお前ら自己紹介中だろうが」


 フィリスのツッコミも届かないほどのパニックぶりである。そして、その爆弾発言を受け、さらに色々口走ってる(ミアル)の惚気を見せられた当のヴァイラナはというと、少し困惑して、


「ええと……義妹(いもうと)ができて二人がお熱いのは歓迎、ええ大歓迎なのですけれどそれはルルお母様に言うべきでは……?」


 マジレスだった。

 少し落ち着いたのか両手で顔を覆うも耳が真っ赤になっているミアルと頭が揺れてぐわんぐわんとなっている梓美に苦笑いするヴァイラナ。


「わざわざ言わなくとも魔力を視れば二人がどういう仲なのかは一目瞭然ですわ。ミアル側もアズミさんの魔力の影響を受けているくらいですし相当深い仲ですのよね?」

「あ、やっぱりわかるんですね」

「ごめん、ちょっと追い打ちかけないで。恥ずかしくて今ならここら一面火の海にできそう」

「ヤケクソになって雷撃つんじゃねえだろうなそれ」


 梓美との仲は一切否定しないがいざ話題に出されると恥ずかしい。そんな年頃のミアルは先程の自爆もあって限界間近だ。爆発してしまう前に梓美達は一先ずミアルは置いて頭を冷やさせておいて話題を切り替えることにした。


「そういえば、義姉様どうして中層(ここ)に?妖精族って深層に集落みたいな生活圏を築いているって聞いたけど?」

「ええ、普段はもっと奥の方で過ごしていますわ。けれどわたくし、中層あたりは普通に散歩に飛び回っていますの。わたくしにとって中層と呼ばれている範囲は庭みたいな物。そしたら、覚えのある魔力を帯びた風がこう、球状に漂ってたものだからその中心を隠れながら探ってたらやっぱりミアルだったの」

「……隠れながら?」

「ミアルの探知の中をか?」


 球状に広がった魔力の風、というのはミアルの探知魔法だろう。大樹の上からだったこともあり広範囲に展開していたらしいがそれに気づかれることなく逆手に取って接近してのけたことに二人は驚きを禁じ得ない。


「風の属性だけの探知なんてわたくし、簡単にすり抜けられますわよ?『風』と『闇』の魔法が使えますもの、音も気配も隠すのは得意ですの。あの探知、確かに優秀ではあるけれど魔力に敏感な種族には逆に主張しているようなものですしわたくしみたいに風の扱いに長けた相手には無力ですわよ?」


 ヴァイラナは簡単に言ってのけるが、ミアルの探知をくぐり抜けるのは適性はないとはいえ一応風の魔法は扱える梓美が《舞台装置》スキルの魔法行使補助を使ったとしてもできない芸当だ。魔法に長けた種族が風の適性を持ち、その上で精密な魔法行使ができてこそ可能になる。

 また、闇の魔法で自身の気配、生命反応も隠蔽しているので梓美の探知も意味を成さなかった。でなければミアルの探知をかいくぐって接近するヴァイラナを梓美が見逃す筈がない。ある意味二人にとっては天敵に等しい相手だ。

 こうやって身を隠すことに長けているからこそ一人で魔の森を庭同然に飛び回ることができているのだろう。


「それにしても、ミアルも初めて会った時となんか魔力の感じが違いますわね?アズミさんとの同調の影響を抜きにしてですわよ?」

「魔力の感じ……あ、あれか」

「あれ、とは?」


 思いあたる節のある梓美にヴァイラナが訪ねる。原因は間違いなく”降神霊機構”による疑似精霊『霆凰』によるものなのだがおいそれと話していいものなのかと梓美は考える。『スキルで精霊を模した魔法術式群をその身に宿らせた』と言ってしまえばミアルの身体をいじったようなものだし、精霊に近い種族の妖精族としてどう感じるかがわからない。梓美が答えあぐねているとようやく落ち着いたミアルが会話に参加する。


「あ、梓美がボクの身体いじってくれたからかな?精霊形態のことだろうし」

「----身体を、いじった?」


 一瞬で空気が重くなり、一瞬息が詰まる三人。明らかにヴァイラナが”威圧”系統の魔法を行使している。


「アズミさんは確か異世界人でしたわね。わたくし、他の異世界人にお会いしたことがございますの。確か、『勇者』とか呼ばれていた気がしますわ」


 平坦になった声で語りかけるヴァイラナ。他の異世界人とはクラスメート達のことだろう。


「その方達、向こうの宗教に染まってたみたいとはいえ、わたくし達妖精族を汚らわしい、悪だ、と決めつけて一方的に攻撃してきましたの。他の種族も見下していたみたいでしたわね。無論、返り討ちにしましたが妙な能力を使う方ばかりでしたわ。アズミさんはあのような連中とは違うと思っていたのですけど」


 ヴァイラナにとって異世界人への心象はかなり悪いものらしい。梓美と普通に接していたのはひとえにミアルと仲がいい、の一点に尽きる。それがミアルに何かしら害をもたらしたのなら信用は地に落ちていくだろう。


「アズミさん、ミアルに一体何をしましたの?答え次第によっては先程の返事を撤回……」

「待ってヴァイラナさん!!ボクが梓美にそうさせたんだから……」

「姉と呼んでくださいませ」


 怒っていてもそこは譲れないらしい。


「あっ、うん。……とにかく!元々梓美が緊急時に無茶して自分用に使おうとした魔法をボクがさらに無茶してスキルをボクに使わざるを得なくしたんだからあまり責めないで!」

「……詳しく経緯を教えてくださいますか?ミアルが自分に使わざるを得なくした、というのは?」


 これはもう包み隠さず話さざるを得ないだろう。三人は先日の聖光神教の襲撃、特に獣王竜戦と、その中で梓美が構築、使用した”降神霊機構”について説明した。獣王竜と戦った、ということにヴァイラナは目を丸くしたが内情を理解するにつれて徐々に顔の険は取れていき、空気の重さも霧散していった。


「……はあ、つまり、ミアルが自分の方が妖精族の血、つまり精霊に近いから成功率が上がると踏んで、アズミさんがミアルに使わないと獣王竜に殺されかねない状況にした、と」


 うんうんとミアルが頷く。


「梓美なら自分に使おうとしたときよりいい物をボクにしてくれる、って思ったからね。案の定後で聞いたら梓美が自分に使う時に考えてた物は酷い物だったよ。何だよ三首の邪悪な竜って」

「あたしも絶句した。あたしらにしたようにもう少し自分にも気を利かせろよな」


 実はあの時点での梓美の疑似精霊のモチーフの最有力候補は『アジ・ダハーカ』という三つ首の邪竜だった。アジ・ダハーカは千の魔法を操る全ての悪の根源ともされている。そこに神に敵対したり神殺しを成した怪物を組み込んで聖光神教の信仰ごと相手取れるよう考えていたのだ。

 奇しくも手っ取り早く力を得るために悪の力に手を伸ばすという悪い方面のテンプレをかますところだった梓美を止めたミアルはファインプレーだった。


「だからって、そうあっさり自分の身体を相手に委ねるなんて、ミアルは無茶しすぎですわ」

「私も心臓凍るかと思ったよ。もう必死にミアルのイメージに合って竜とか巨大な獣に勝てる類でいいから思い出して構築したんだから。だからあまり怒らないでほしいです義姉様」

「まあ、そうせざるを得ない事情もミアルを想った故のことも理解しましたわ。結果的にはミアルにとって得の方が多いですからね。特に《精霊術》スキルを十全に扱えるようになったのは大きいですわ」

「《精霊術》?」

「ええ。ミアルの身体は半分近くは魔力で構成される妖精族よりもほぼ実体のエルフのそれに近いから《精霊術》を十分に扱うだけの機能はなかったでしょうね。アズミさんの『精霊もどき』はそれ補う働きもしているみたいですわね」


 ちなみにヴァイラナ曰く時折妖精族が人々の間の物語等で小さく描写されているのは体を構成する魔力が減ってしまっていたり意図的に減らして本当に小さくなっているとのこと。また、逆に魔力を取り込んで身体を大きくすることもできるが、実体が体全体の一定の割合を下回る程身体を大きくさせることはできないらしい。


「え、じゃあ、梓美がいなかったらボク《精霊術》持ち腐れてたの?」

「少なくとも、周囲の魔力も利用するような大規模の物は使えなかったでしょう。まあ、自身に付与する類の物はしかるべき訓練をすれば使えるようになったとは思いますわ。そうしたら『母様』、ああ、わたくしを産んだ妖精族の女王ですが、共々ミアルに色々教えてあげられたのに……」


 ふと、そこで梓美が違和感に気付く。


「あれ?話ぶった切るけどいい?ミアルの姉で、ルルさんが母親。でもルルさんは以前義姉様のことを心当たりはあっても知らないって言ってて、今妖精族の女王が義姉様を産んで、あれ?」


「ん?言われてみれば……」

「ああ、確かに」


 ミアルとフィリスも違和感に気付く。何かがおかしい。ルルが母親なのに産んだのは妖精族側?というか女王?


「あら?何が疑問なんですの?ルルお母様を母様が捕まえてから毎夜どころか昼も抱いて魔力同調して精を注いでたらしいのですけど、ミアルを受精したとわかってからは母が搾る側に回って、それでわたくしを身ごもったのですのよ?妖精族にに性別は大して問題ではないのはご存じでしょう?あと、妖精族は身ごもってから産まれるまでの期間はエルフよりずっと早いからその差でわたくしが姉です」

「思ってた以上にかーさんがとんでもない目にあってたんだけどぉ!?」

「「-------------っ!?」」


 いきなりの妖精族の営みとミアル達姉妹の生まれた経緯、というか母のとんでもない体験に思わず絶叫してしまうミアル。梓美とフィリスも言葉を失う。かの『鷹の目』と名を馳せた元Aランク冒険者は妖精族の世話になってる間かなり濃厚な数ヶ月を過ごしていたらしい。一瞬で三人の顔が赤くなり、梓美は心なしかモジモジしだす。


(え、ルルさんが、抱かれ、え、毎日?絞られ!?)


 今でも娘がいるのに若々しくそして女性らしさと色気に溢れた肢体のルルの、さらに若い当時の彼女がイメージ上ではヴァイラナを成長させたような姿の妖精族の女王にあんなことやこんなことをされている姿を想像してしまい「これどこの薄い本!?」と妙な気持ちになってしまう梓美だが、あることに気がついてしまう。


(待って、いずれは私とミアルもそうなっちゃうんだよね?つまり……)


 梓美の想像の中で交わるルルと妖精族の女王がいつの間にか自分とミアルの姿に置き換わっていく。魔力同調をしながら身も心も魔力まで繋がって溶け合う様に求め合い、いつものイチャイチャみたいにミアルにされるがままになってしまうであろう自分の姿が脳裏にありありと浮かんでしまい全身が熱を帯びてくる。


(魔力同調とスキンシップだけでやり過ぎると気絶しちゃうほどすごいのにさらに色々を毎夜どころか昼も!?絶対おかしくなる!なんでルルさん日常生活に戻れてるの?私だったら絶対無理本当に堕とされちゃう!子供ができて冒険とか旅とかができなくなる以前に駄目になっちゃう!やっぱり『そういう』のは当分駄目!しっかり駄目になっていい頃合いになってから!)


 混血とはいえ妖精族(ミアル)式の魔力同調を知る梓美は両手で口元を覆い戦慄する。そんな梓美を横目で見るミアル。耳まで真っ赤だ。


「ねえ梓美、そりゃあボクとそういうことになるのを想像するのはわかるよ。ボクだってそうだもん。でも、お願いだから嬉しそうにするの隠して。子供作る気ないんでしょ?ボクも我慢するの大変なんだよ?襲いたくなっちゃうよ?」


 ミアルの指摘通り梓美の頬は紅潮し、瞳は蕩けかけており手に隠れた口元はなんかニヤけている。濃厚な行為そのものにも興味深々な様子でありでミアルに求められたらそのままいただかれること待ったなしだ。


(うぅ……ここが魔の森じゃなくて宿だったら絶対襲っちゃってるよ。抱きしめて、あちこち撫でながら魔力同調して気持ち良さそうにトロトロになっちゃった梓美をそのまま……うわあぁぁ駄目だ考えちゃ駄目ー!)


ぶんぶんと首を振るうミアル。それでも想像してしまったあられもない梓美の姿が脳内から消えてくれない。今夜、二人の理性が問われることは間違いない。


「あら?まだ二人ともそこまで行ってないんですの?わたくしもうてっきり……」

「「そういうのはまだって決めてるの!!」」


 息ピッタリである。最後まで関係を進めるにしてもお互いもう少し身体が成長してゆっくり子供を育てられる状況になってからとそこは二人でしっかり決めているのだ。

 しかし、さらに不思議そうにヴァイラナは首を傾げる。


「アズミさんは闇の魔法が使えるのですわよね?なら……」

「この話はストップだ!!というか家族会議にあたしを巻き込むな!!宿でやれこの話!!」


 フィリスがインターセプトをかける。もし『生命力に作用する闇の魔法を応用すれば避妊できるのでは?』ということに二人が気づいてしまえば今夜二人の理性は彼方へと吹き飛んでいく。あんまりな会話で忘れそうになっているがここは魔の森。危険この上ないし依頼に支障が出かねないので止めるのは当然だ。あと手遅れかもしれないが成人したばかりの年頃の女の子がハマっていいものでもない。実際手遅れ感が半端ないのだが。


「梓美が切った話の流れ戻すぞ。精霊形態だったなたしか」

「……はい、そうでした。《精霊術》が使えるようになったことと光の魔法の適性も発現したのが普段の状態でのミアルへの影響かな?」


 現状ミアルが一番恩恵を受けていると感じているのは光の魔法適性の獲得だった。日光を魔力に変換、回復する”陽光変換(ソルコンバート)”は複雑すぎてできなかったが梓美の光の魔法でできたことは一通り扱えるようになり、できることの幅が広がっている。光の魔法を組みあわせることで従来の魔法もより威力や規模を上げられるようになった。


「うん。普段でも風と光、時折水もだけど複合した雷の魔法を使えるから練習できるのはありがたいな。おいそれと精霊形態は使えないし。ねーさま的には精霊形態がボクの妖精族としての姿なのかな?」

「ええ。魔力で構成された身体を持つ姿ですからね。しかし、そうなると是非見たいですわ、その『霆凰』を宿すことで実現したミアルの妖精族としての姿……よし!」


 何か閃いて手を叩くヴァイラナ。そして笑顔でミアルに向き直る。


「ミアル、わたくしと一戦、本気で交えてくださる?」

【悲報】ルルさんエロフだった

あまり描写しすぎるとノクターン行きになりそうで怖い。

 ちなみに妖精族の女王や姫と言っても国があるわけではなく集落の族長とか群れのトップとかそんな感じですね。


あと梓美は誘い受けの気あり。


『面白かった!』

『続きが気になる!』

『もっとバトルを!』

『ミアルと梓美をもっとイチャつかせろ!』

他諸々という方がおられましたら大変励みになりますので感想やブクマ、広告下の評価(⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎になってるやつ)を宜しくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] これってアレですね、この親にしてこの子あり、ってやつですよ。だからミアルがエロくても仕方ない。という言い訳。 まあ、梓美も大概ですが。誘い受けな梓美さん……(笑)
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