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10話~意外な再遭遇~

一部加筆修正しました

 魔の森深層に落ちた隕石の調査に向かったミアル達。落下地点の方角は目撃情報を元に算出できたものの、正確な座標までは計測できず、さらに魔の森深層は文明の手が届かない領域であるため国境は無いに等しいため他の国の調査人員とかち合う可能性もある。そのため道中の生態系への影響の所見の記録を優先、落下地点の状況の確認はたどり着けない場合やその他アクシデントも考慮し二の次とされた。

 しかし、既に気分は異世界隕石採集で一杯になっている梓美にはなんのそので一行はあっという間に中層に到達、深層に向けて歩みを進めていた。外縁部の時点でメガディノラプターやサイ並みの大きさの草食魔獣リノセラト等の中層の魔獣の気配を時折ミアルが探知していたが、こちらは他の冒険者達の調査の領分ということもあり極力接触は避けた。中層にも入っていないのに無駄な消耗をしないという理由もあるが、この中層から魔獣が流れてきやすい状況で手当たり次第に仕留めればそれこそ死骸目当てに外縁部に魔獣がよりつきやすくなり危険を招くからだ。


 そして中層。そこでは現在とても奇妙な光景が繰り広げられていた。


「ギッガゲグギガグガ」

「ふむふむ、つまり、聖王国側の中層近くから巣立ちしてこっち側に流れてきて、最近ホブ化したと。というか私達がメガディノラプター狩ったところ見たんだ」

「ガガ、ゴギゴゲグギャグゴギグ」

「うん。正直魔の森出る方が討伐されやすいね。魔の森で襲われても狩る狩られるかの現場にいる以上魔獣にやられたのと変わらない扱い、依頼があれば救助、って感じだね。魔の森の外じゃ天敵はククラプター程度になるだろうけど、ホブより育ったためしは無いと思うよ」

「グギャギギャギャッゲ」

「ねえ梓美、なんでホブゴブリンと談話してるの?というかできてるの?」

「知らん。あたしに聞くな」


 夜に焚火を囲んで木を切り倒して作った丸太や切り株に腰かけるホブゴブリン三体とメモを取りつつグギャグギャ鳴いているホブゴブリンと会話が成立している梓美。仮眠から覚めてテントから出てきたミアルは首を捻りフィリスは遠い目をしている。


 事の起こりは日が暮れたため中層でテントを設営し一人ずつ交代で仮眠を取りながら夜を明かそうとしているところにホブゴブリンが接近。ミアルが仮眠中だったため闇属性魔法による生命反応への探知で気づいた梓美とフィリスが迎撃しようとしたがホブゴブリン達がシェルヘッドベアと戦闘しており、戦いながらこちらに移動してきてしまっただけだと気付いたためフィリスが”緋刃”で遠距離からシェルヘッドベアを仕留め、獲物を確保したホブに早々にお帰り願おうとした。

 しかし、ホブゴブリン達はこちらに気付くと尋常ではない怯え方をした。そして梓美が「やべえ、あの時の妖精混じりとつがいの雌?」と、呟いた、正確には聞き返したのを聞くとリーダー格が「ちょっと待って」と言わんばかりのポーズをした後に仲間に武器を捨てさせると大慌てでシェルヘッドベアの腹を裂いて肝を取り出し梓美に献上してきた。

 いきなりの事態に二人そろって呆然としているとホブゴブリンがグゴグゴと鳴き出し、「いや、見逃すも何も」と普通に返す梓美に目を剥いたフィリスを余所に「言葉通じるし争うつもりないなら色々聞きたいしちょっといい?」と梓美とホブゴブリンの会話が進み、現在に至る。

 このホブゴブリン達はミアル達がフィリスと組んで初めて臨んだメガディノラプター狩猟の際に遠巻きにこちらを眺め逃げて行った個体らしい。二か月前に生まれ、数体のホブゴブリンと共に生まれの地からこの地に流れ着いたとのこと。


「あー、もしかして《言霊》スキルのおかげかも。ゴブリンにも適用されるんだあのスキル」


 《言霊(人型種族)》。人型種族に限り、発する言葉をスキル保有者の意図した意味で伝え、同様に相手の言語の意味を理解するスキルだ。このスキルを有する梓美がゴブリン達の言語を理解し、また自身の言葉を理解させていることで両者の会話が成立している。


「あ、ミアル起きたんだ。こちらがあなた達の言うところの私のつがい?の妖精族のハーフのミアル。私より強いから怒らせないように」

「いきなり何言ってるの梓美!?」


 いきなりのつがい発言に頰を朱に染めるミアルを余所にこくこくと頷くホブゴブリンズ。ゴブリンの言うつがいとは何度も魔力同調をされた妖精族のお気に入りの相手のことだ。ゴブリンが母胎となる個体を魔力で侵食するように妖精族は魔力を流し込んで同調させたりして繁殖時の魔力相性を高める。この相性が良いほど優れた子が生まれやすいと言われており、逆に精霊の系譜の他の種族との相性を格段に悪くさせ保護する役割も果たす。つまり、梓美はゴブリンをはじめとした妖精族以外の精霊の系譜の種族とは魔力の相性が極端に悪くなり、女性がゴブリンに狙われる原因である母胎としては見向きされない存在になっている。そのことをホブゴブリン達から教えて貰った梓美が説明すると二人は微妙な顔をする。理由は二人とも異なりミアルの方は益々顔が赤くなっている。


「え……と、つまり、梓美と魔力同調しながらイチャイチャするのは妖精族にとっては子作りの前段階に等しくて……」

「あー……だからあたしがゴブリンと殺りあう時、連中は大体野郎相手にしてるような形相だったのか。妖精族の血があるらしいから母胎としての価値はないから殺すしかないってことか。道理で他の女冒険者に向ける目と違ってるとは思っていたんだよなあ。貞操守れるか生存率上がるかのどっちがいいかは個人の考え方次第か?」

「どうだろうね?で、ゴブリンとかトロールも多少の魔力は知覚できるからそいつらから見た私達は人間型のバケモノみたいなものだって。だからさっき一巻の終わりレベルで怯えてたんだってさ」

「なんで梓美はそんな平然としてられ……って!梓美さては自分に闇属性魔法使って平静保ってるでしょ!?」

素面(しらふ)で平然とできるわけないでしょ!『同調した種族以外』ってミアルの場合肉体的にも『妖精族とエルフのハーフ』っていう希少例なんだから純粋な妖精族との相性も良くないんじゃないかな?つまり私の身体実質ミアル専用だよ?後で仮眠取る時に解除したら色々悶えるやつだよこれ!」

「他の人と共有する気もないし嫌だけど『ボク専用』って言い方は止めてぇー!?まるで色々アレなことしてきた様な……概ね間違ってないのがぁ!!」


 耳まで真っ赤になって頭を抱えるミアル。妖精族やゴブリンから見ればヤることヤってたに等しい扱いだった上に自分色に染め上げたことも含めそれらが今後も一目でバレるのだから無理もない。梓美も今後精霊系譜の種族からは『ミアル専用です♡』と体に書いてあるも同然に見られるので顔を赤くしている。それで平然としていられるほど面の皮は厚くないのでここで梓美が自分にかけている闇属性魔法を解除すればしばらくの間変な声を上げながら転げまわることだろう。


「……ギャガギギガ」


 呆れた目で眺めるホブゴブリンズ。明らかに「仲良いな」と言わんばかりなのはフィリスにも伝わった。


「ギギググガ」


 ふいにホブゴブリンの一体がミアルに向かって声をかける。


「ゲゴゴギャゲギゴギガガガグ」

「……まあ、うん、そうだよね。まさかホブゴブリンにフォローされるとは……」

「え、何?梓美、こいつ何て言ってるの?」


 ホブゴブリンの言葉?に納得する梓美と困惑するミアル。気まずそうにしながら梓美が通訳する。


「……えっとね?『そういうことしている連中は普通の種族だろうと匂いが混ざってたり染みつくらしいから鼻がいい種族ならどうせ同じことだし気にするな』って」

「犬系獣人族が街でなんか察しがいい理由はそれだったのーーーーー!?あと梓美それフォローになってないよ!?」


 ミストル亭では夜通しぴったりねっとりくっついてイチャつくので匂いも魔力も混ざりまくりな二人。どうせ匂いでバレるので梓美には開き直れる方面でのフォローだったのだろうがミアルにとってはむしろトドメだった。まさかゴブリンに言葉でノックアウト(通訳込み)される者がいようとはこの世界の誰もが夢にも思わないだろう。もっとも、身から出た錆なのだが。


 その後、近辺の情報のやり取りをした後、ホブゴブリン達はシェルヘッドベアの死骸を三体で担ぎながら去っていった。他の人型種族を襲うとはいえ普通に会話した後で殺し合うのも、一方でこの後アダマートの冒険者が襲われるのも後味が悪いので、現状で冒険者に仕掛ければ優先的に討伐対象にされかねないこと、もしその話題が出れば自分達が狩りに行くと釘を刺すことにした。釘の効果は絶大で彼らは梓美達の脅威の届かない新天地を目指すことになりそうだ。


 そしてミアルと交代で休憩にテントに入った梓美が「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛~~~」と悶えながらテント内をゴロゴロしたのは言うまでもない。その声が聞こえるミアルも顔が赤いまま夜の番をすることになった。こんな時こそ一旦仮眠を取って思考を切り替えるべきなのに自分の仮眠は終わってしまった不幸を呪うのだった。


「いい加減落ち着けよ。……にしても意外な能力だったな《言霊》。あれのおかげである意味現地住民から話を聞けたようなものだったな」

「うん、すごいよね。梓美が聞いたとこだと、中層の方が魔獣が殺気立ってるんだっけ?深層、正確には隕石の落下地点から逃げるように強力で大型な魔獣が出てきてるから」

「ああ。ここから先に進んでいくと普通にディノレックスが歩き回ってるって話だったな。リノセラトはそいつから逃げてきたか」


 他にもメガディノラプターに匹敵する体高を持つ虎型魔獣ダイアティグリスや象本来の知能とパワーに加え土属性の魔法を人並みに扱えるマギアエレファントといった魔獣も中層に流れているらしい。知らずにそこらのDランク、場合によってはCランク冒険者でも遭遇すれば命の保証はないだろう。


「明日からは深層に入ったつもりで歩くぞ。……で、ミアル。あのホブゴブリン共、妙じゃなかったか?」

「梓美が会話している時点で妙なことばかりだったけど?」

「そういうことじゃねえよ。ホブにしたって知能が高すぎる。それに、()()()()()()()()って言ってたろ」

「言ってたね。梓美の通訳越しだけど」

「聖王国は魔の森挟んだ真逆だぞ?おまけに最近ホブに成長したってことはおよそ生後三ヶ月か?狩りをしながら中層を渡っていけば一月で移動できなくもないか」

「何が言いたいかわかってきたよ。普通のゴブリンなら死んでる筈ってことだね?」


「ああ」とフィリスが返す。ゴブリンは繁殖力に物を言わせて生存競争に残ってきた。逆に言えば個としての強さはそれほどでもなく、ククラプターにすら獲物として狙われ蹴り飛ばされる程弱い。それが一月も魔の森を移動してきた上で生き残っているのだ。

 ゴブリンの群れは母胎確保後一定以上増えると数名のホブと共に分かれて縄張りを分けることが知られており、母胎との近親相姦を防ぐために主に新しく生まれた個体が主となって新天地を目指す。これが『巣立ち』と呼ばれているがいくらホブが数体いたとしても聖王国側から回り込むように正反対のアダマート側まで移動を続けて生存することは困難だ。あの三体は余程優秀な個体なのだろう。加えてフィリスが驚いたことがもう一つあった。


「あと、あいつら魔法を多発してたぞ。威力そのものは弱いがシェルヘッドベアに対して牽制弾として撃ちまくってたんだよ。たまにそういう個体は見るが三体同時なんてのは今まで聞いたことが無い」

「魔法を使えるゴブリンの殆どは親の素質を受け継いだ場合が殆どだっけ?確かにこの前メガディノラプターにやられてたホブより魔力があるように見えてたけど……待って」


 ミアルが目を見開いてフィリスに向き直る。頷くフィリス。


「聖王国、二、三ヶ月前。確か召喚者達が訓練とかで魔の森に入って()()いなくなった。一人、梓美の友達らしくて、その人は亡命したっていうけど、」

()()()()はゴブリンに連れ去られたらしい、だったな。それならあのホブゴブリンの知能と能力考えても不思議に感じないな。まあ、何があったかは考えたくねえけどな」


 考えが一致しミアルは『何があったか』を想像し顔を顰める。ゴブリンが母胎に施す魔力の侵食は繁殖行為と同時に行われる。そして同調と異なり相手の魔力の状態などお構いなしに魔力を変質させられるのでただでさえ被害者の精神の負担が大きい。文字通り意思も魔力も尊厳も蹂躙されつくした被害者が救出された時には精神に重大なダメージを負い廃人になっているケースも珍しくない。

 これがゴブリンが忌避される理由の最たるものだが中には「より強い個体を残すための生存戦略なのだから『人』にただの個人的嗜好で凌辱されるよりマシ」と考え運よく救出された後に復帰する女性冒険者も多い。この考え方はシメレア帝国やその北の国家群に多いと言われている。梓美がホブゴブリンズから聞いたところによると『意味もなく雌を嬲る暇があったら食事と寝床の確保が優先。盛るのは早く群れを作るため」らしく魔の森の生存競争下では本能はともかく邪念など抱いている暇はなさそうだ。

 さておき、その被害者が梓美の同郷の者の可能性は高い。そして梓美もおそらくそのことに気付いているだろう。


「あいつが闇魔法でごまかしていたのはそっちかもしれない。明け方に梓美が起きてきたら問答無用でその手の魔法解除しろ。光の魔法ならできるよな?それで梓美が取り乱したら撤収だ」

「わかった。さすがに知り合いがゴブリンの被害者になってたらショックもでかいだろうしこの後どう影響するかわからないもんね」

「ああ。……にしても、梓美といいあのホブゴブリンといい、いや、あたしらもか。異世界人は本人にしろ影響受けた奴にしろ色々規格から外れるのか?聖王国に同じような奴が出てないことを祈りてぇ……」


 最悪ミアルやフィリス級の現地人で構成された軍隊なんて編成された日には魔の森ごとこの国も吹き飛びかねない。尋問により得た情報によると、召喚された異世界人は皆戦闘系や自己強化のスキル持ちで梓美の様な特殊な能力は無いからありえないとされていても今回のホブゴブリンズの様に何か別の形でこの世界の何かを『規格外』にしないとも限らない。


「あのホブゴブリンズもあれから成長していくのかなあ。たしか、ゴブリンってホブで一応成体扱いだけどこの後エリートとかロードって呼ばれる個体に成長することもあるんだっけ?」

「そうなる前に大体戦いで命を落とすらしいけどな。大体冒険者の女を襲って返り討ちにあったり他の魔獣にやられたり巣を冒険者に襲われたり……待て、あいつら放置して良かったのか?」

「えーと、このまま人に手を出さなければ人から攻撃されることも巣に襲撃かけられることも減るし、知恵がある上に魔法使える特異個体が三体一組だからホブ単体より生存しやすい……うん、このままだとやばくないかな?間違いなくゴブリンエリートに成長するよね?」


 もしかしたら自分たちは情報と引き換えにとんでもない物を見逃してしまったのではないか?しかも『手を出したら狙われる』とある意味生き残る知恵を与えたようなものだ。二人の背中に嫌な汗が流れる。後にゴブリンエリート、あるいはゴブリンロード騒ぎがあったらその一端は自分たちが担っているのかもしれない。

 泥沼のような思考に陥りそうな中、ミアルの探知圏内に侵入する者が現れたのはある意味幸運だったかもしれない。生存競争の中ならば余計なことは考えなくて済む。


「フィリス、獣タイプが近づいてくる!足音は無いけど風で捉えた。そっちも熱で感知できる?」

「ああ、獣なら体温あるしあたしでも見つけやすい。梓美を起こすまでもないが雷は止めとけよ?夜に閃光と大音立てたら後が面倒だ」

「わかった!多分さっき話してたダイアティグリスかもしれない。結構でかいんじゃないかな?」

「起きたら梓美が驚くだろうな!仕留めたらテント前に飾ってやろうか!」


 果たして狩られる側はどちらだったのだろうか。人も獲物とするためディノレックス以上に恐れられるダイアティグリスにとっての不運は狙った相手がミアルとフィリスだったことだろう。


 翌朝、テントの出入り口至近距離にぶら下げられた頭と毛皮になったダイアティグリスに「うおわぎゃあ!?」と梓美のかつて無い悲鳴が響いた。いつも特に梓美に振り回されているフィリスと梓美の新しいリアクションを見れたミアルはハイタッチした。

 既に命が無い物は梓美の探知に引っかからない為この手のトラップは有効的で、同時にこっそり闇属性の精神作用系を打ち消す光の魔法をミアルが念のために使用したことで昨夜のことに関する動揺もないと判断、一行はダイアティグリスの素材を回収後、梓美に怒られながらも深層に向けて歩みを進めたのだった。



『面白かった!』

『続きが気になる!』

『もっとバトルを!』

『ミアルと梓美をもっとイチャつかせろ!』

他諸々という方がおられましたら大変励みになりますので感想やブクマ、広告下の評価(⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎になってるやつ)を宜しくお願いします。

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