9話〜隕石と緊急依頼〜
災害とは、どの世界でも唐突に起きるものだ。それも、天から降ってきたものなら予見しようがない。
この日、外を歩いていた者の多くが空から巨大な流星が落ちてくるのを見た。昼間なのに煌々と輝くそれは魔の森に向かって吸い寄せられるように落ちていき、着弾と同時に爆音と衝撃波を周囲にもたらした。
ドゴオオオオオォォォォォォン!!
落下地点周辺は木々も魔獣も地面ごと吹き飛び、衝撃に驚いたワイバーンをはじめとした飛行可能な魔獣は一斉に飛び立つ。パニックとなった魔獣達は衝撃と爆音のした方角から逃れるように移動を始め、それに追い立てられるように他の魔獣も移動を始める。落下地点が深層だったために深層から中層へと混乱は広がっていった。
そして衝撃と轟音は隕石が魔の森深層に落ちたにも関わらず魔の森を囲う各国家にも大なり小なり届き各地を混乱に陥れた。屋内にいた者は報告が届くまで敵国の攻撃を疑い、原因が隕石だと判明すれば空から降ってきた災害に震え上がった者もいた。
ミアル達の現在いる辺境の都市サーファにもその揺れは届き、待合室で解体現場を見たショックで気を失っているターシャの様子を見つつも魔獣の資料を眺めて寛いでいた三人にも即座に緊張が走る。
「!?何今の!?」
「地震?ううん、こんな揺れ方しないはず。何か落ちてきた?」
「落ちたって何がだ?ワイバーンが落ちたくらいじゃここまで揺れねえぞ!?」
「はっ!?今のは一体!?私は何を!?」
今の揺れでターシャも流石に意識を取り戻した。しかしこの場にいる誰もが一切状況がわからないままだ。
「ミアル!音を拾って!外の声で何かわからない?」
「そうだった!えーと、『火の玉』?『落ちた』、『魔の森』……?」
「火の玉が魔の森に?いや、サーファから魔の森なんてアダマート以上に離れてるよ?」
「誰かがトンデモな魔法でもぶっ放したのか?」
「だからってボク達の精霊形態でも魔の森からここまで響く魔法は……試したことないね?」
「お願いですから試さないでください!?」
そういえば新武器込みの精霊形態試したことないなと思い出すミアルにターシャの悲鳴混じりのツッコミが響く中待合室のドアが開かれる。
「無事か君達!?たった今魔の森に向かって流星が落ちていったと報告があった。先程の揺れはそれが原因だろう」
駆け込んできたのはダリウスだ。全員の無事を確認すると告げる。
「すぐにアダマートに戻る。ここサーファでも揺れたくらいだ。より魔の森に近いアダマートの被害、そして魔の森そのものへの影響で何が起こるかわからない。万一の為の戦力になる君達も同行してもらいたい」
最悪深層から強力な魔獣が飛び出す危険もある。それに追い立てられた中層の魔獣がさらに……と、最悪魔獣の暴動も起こりうるとのことで協議は中断、一行はアダマートに戻ることとなった。
こんな状況下でも研究機関所長チャーリーは「もし深層の魔獣が出てきたら是非我々に提供を」とサンプルへの貪欲さを発揮していたがダリウスに窘められていた。
◇
アダマートへの馬車の手配中に集めた情報を道中で整理したところ、空か降った隕石が魔の森に落ちていった、というのが大多数の証言だった。隕石には未知の鉱物が含まれていることがあるとの話に梓美が興味を示してミアルに止められる一幕があったが辺境への直接的な被害は現状ないとの見解で一先ず全員が安堵した。
半日程で到着したアダマートは見解通り目に見えた被害が出たわけではなく既に市民の間では混乱は落ち着いていたが、冒険者ギルドは緊張感に包まれていた。
隕石落下の直後、中層に深層の魔獣が逃れてきたとの報告が多数あったのだ。放置していれば中層の魔獣も外縁部に追い立てられそのままアダマートに雪崩れ込んでくるスタンピードに繋がりかねない。そのため調査と必要に応じた魔獣の討伐の為のメンバーを集めている最中だった。
しかし、冒険者ギルドに到着したミアル達に言い渡された依頼は他とは少々毛色の異なるものだった。
「隕石の調査?」
「はい。三人には隕石の落下地点の調査をお願いします。隕石落下の影響で魔の森全体が混沌としている以上、実力、能力の双方を鑑みて三人が適任とのギルドマスターの判断です」
告げるアンジェラは反対したらしいがどんな変化があったかも不明、深層の経験が役に立つかもわからない状況下ではフィリスのソロ経験、ミアルの探知能力、梓美の"奈落"による物資運搬能力、何より大型種のワイバーンやディノレックスも仕留められる戦闘能力を持つ彼女達以上の適任がいなかった。
前回深層に行けずじまいだったため三人は依頼を受けることを躊躇したが、「隕石の採集は自己責任とするがギルドで強制回収等はしない」との言葉で梓美の目が輝いた。それを見たミアルとフィリスは梓美帰りの馬車で過去の隕石の例に興味深々だったのを思い出した。
(一番隕石の話に食いついてたもんなあ……)
隕石に含まれていた鉱物は鉄や石灰質の物でも地上で採掘された物と異なる性質、特に魔法への適性が異なっていたという話を聞いた梓美は自分の装備に使えないか、そして今回の依頼で隕石を採集できるならそれを使おうとも考えていた。何割かは調査の為に接収されるため大した量は貰えないと考えていたがそこに今回の条件である。
「持ち帰りは自己責任、接収もなし……つまりその気になれば総取り!」
ミアルとフィリスの武器の様に値引きでしてもらうことは難しく、同じ様に作ってもらうなら自前で必要な鉱石を用意しなければ破産してしまうだろう。何より『隕石』、しかも『異世界の』とくれば浪漫を感じずにはいられない梓美だった。
「梓美、隕石持って帰る気満々でしょ」
そんな隕石に意識が傾いている梓美に呆れつつもミアルも依頼を受けるリスクへの躊躇よりも好奇心の方が勝り始めていた。未知の領域である深層、そして、宇宙から降ってきたという隕石。ミアルとしても色々と気になって仕方がないのだ。どの道深層には踏み込むつもりだったので多少のリスク増加も初見なら逆に気にならないしちょうどいい機会ではないかと考えつつあった。
そんな二人を見て止めるのは無理だと察したフィリスも深層での経験は積みたいし、実際今の自分がどこまでやれるのかを知りたかった。
結局三人とも依頼を受ける方向で考えていることに苦笑いしつつも頷き合う。そして、
「この依頼、受けます。採集した物は基本こっちの物でいいんですよね?」
その言葉にギルドに居合わせた大半の者が「あ、こいつら資源持って帰れるだけ持って帰ってまた変なの作る気だろ」と遠い目をするのだった。
ちなみに隕石だろうと接収はなしと判断したのはギルドマスターで、そうすれば間違いなく自分の装備用の鉱石や金属を欲しがっている梓美が食いついて乗り気になるだろうと考えたからだ。
そのことを知るアンジェラは予想が的中したことに呆れながらもこの三人が調査に行ったとして、本当に『ただの調査』で終わるとは到底思えなかった。魔の森デビューで中層クラスの魔獣を狩り、先日も深層に下見に行こうとしたら大型魔獣二頭をあっさり狩ってきたのだ。今度はどんな厄介ごとを抱え込んで戻ってくるのかを考え、思わずため息が溢れるのだった。
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