3話~裏側は大変です~
夕方と言ったな!すみません間に合いませんでした!
追加 一部修正しました
三人が去った後、ギルドマスター、辺境伯ダリウス、そしてメイドとしてダリウスの後ろに控えていた少女が三枚の書類に目を通している。内容は言わずもがな、ミアル達三人の冒険者としての記録だ。
今彼らが眺めているミアル達の更新されていたステータスにはこう記されていた。
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名前:ミアル・ルート
種族:エルフ族 性別:女
年齢:15歳
身体機能
生命力:A
体力:A
筋力:B
耐久:B
魔力:S(適性:風、水、光)
敏捷:A
保有スキル:魔力知覚、精霊術、霊起纒身・霆凰
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名前:アズミ・トウヤ
種族:人間族(地球人) 性別:女
年齢:15歳
身体機能
生命力:A
体力:A
筋力:A
耐久:B
魔力:S(適性:光、闇)
敏捷:B
保有スキル:言霊(人型種族)、舞台装置lv5
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名前:フィリス・リルザ
種族:爬虫人族 性別:女
年齢:18歳
身体機能
生命力:S
体力:A
筋力:A
耐久:A
魔力:A(適性:火、闇)
敏捷:B
保有スキル:報復、精霊術、霊起纒身・焔鯢竜
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「ステータスの敏捷以外は軒並み向上している。やはり竜の肉を食ってるからか?」
「可能性は高いね。より強い肉体、より強い魔力を獲得しているみたいだ。Sランクのステータスなんて久々に見たよ。三人ともこういう結果が出ているし竜の肉を食した者の英雄譚は全くの架空ではないことがわかったよ。もっとも魔力異常のリスクをどうにかできない限り真似できる行為ではないが」
「確かにな。魔力同調を気軽にできる相手なんて相性的にも精神的にも簡単には見つからない。で、皇女殿下から見てあいつらはどうでしたかね?」
ギルドマスターがメイドに扮したシメレア帝国第二皇女、『リスタシア・レックス・シメレア』に問いかける。彼女は身分を隠して今回の立役者との接触を図ったのだ。
「なかなかに貴重な存在ね。ミアル・ルートの母が彼女でなければ騎士団にスカウトしたいくらいの人材なのだけれども、まあ出世欲はなさそうですしアズミ・トーヤも堅苦しい扱いは嫌うでしょうね」
「違いないかと。冒険者ランクを上げるのは行動範囲を広げる目的がメインでしょう。それと、アズミ嬢は聖王国による異世界召喚の内情を知った時、無意識でしょうが周囲に殺気を振りまいていたとの報告もありました。おそらく聖王国に召喚されていれば暴れたでしょう」
「無理に引き込めば敵を作りかねないだろうな。あと、『鷹の目』の怒りを買うのは避けてえ」
「違いないな。屋敷の玄関に矢文が刺さっていたのを見た時は十数年前の恐怖を思い出したよ」
『鷹の目』ルル。元Aランク冒険者で場所さえ把握していれば見えてなくても矢を目標の地点に飛ばせる程の弓の名手だった女。その美貌とおかしな星の元に生まれたのか常にトラブルが付きまとい人が関わる依頼は大概大事になることでも有名でパーティーを組んだ者が目当てがルルの身体だったために再起不能にされて路上に捨てられていたり、討伐に赴けばターゲットよりはるかに危険な魔獣が確認されたというのは日常茶飯事だった。
不正も嫌いで護衛依頼なのに護衛対象が犯罪行為に手を染めていれば次々と証拠を矢文で送り依頼達成と同時に依頼主が検挙されたり、騎士団にスカウトされた時に上司にセクハラ、パワハラを迫られればその上司の後ろ暗い内容が括りつけられた矢が最も知られたくない者の住居の玄関に刺さっており破滅させられた逸話もある。
そんなルルを逆恨みする者は多く、依頼中の事故に見せかけて殺されかけ数ヶ月行方不明になった。しかし変わらず獣の皮で書いたと思しき矢文が辺境伯の屋敷や冒険者ギルドの各支部に飛んできて幽霊騒ぎになりかけたこともあった。結果実行犯に加え指示した者も芋づる式に暴かれ裁かれることになった。戻ってきた時には妊娠していることが発覚し、そのまま引退。今ではのんびり薬師スローライフを送っている。
しかし、この度娘ミアルが冒険者ギルドの門を叩いた。それも尋常ならざる資質の人間族の少女と共に。
ミアルが妖精族、それも『王族』と呼ばれる個体との間の子というのは当時ルルと関りのあったギルドマスターや辺境伯、彼らを通じて王族等ごく一部には知られておりいきなり彼らの胃を痛めた。そして街中爆走に初狩猟でシェルヘッドベア討伐とルルとは違った方面のトラブル引き寄せに痛みは深くなった。
そして襲撃事件の数日後には辺境伯家に十数年ぶりの恐怖の矢文が刺さっており5年程前から確認されている妖精族の姫ヴァイラナがミアルを気にかけている可能性が高いことと「陰謀に巻き込んだら何が飛んでくるかは保証しかねます」というメッセージに彼はミアル達を引き込もうとする皇族の説得に奔走することになった。場合によっては矢ではなく妖精族が飛んでくるという警告を正しく理解したからだ。
リスタシアが身分を隠して三人に接触したのも明確な繋がりを作ることを避けつつも面識があることによって接触機会は得ようという魂胆のためである。
「優秀な人材との繋がりは持っておきたいしとりあえず、知人、友人と仲を深めておくに留めるわ。」
「それがよろしいかと。繋がりがあれば束縛せずとも彼女達は協力的になるでしょう。むしろ反感を買えば聖王国みたいに痛い目を見るでしょうな」
「というか三人ともある意味厄ネタの塊だけどな。全員一度に怒らせたら聖王国滅ぶんじゃねえか?」
「否定できないのが恐ろしい。ミアル嬢は妖精族とのハーフで、《精霊術》も扱えるようになりつつあるらしい。引き出した情報が確かなら聖王国が召喚した者達の中でも一番の戦力『勇者』でも妖精族、魔の森深層ならおそらく風精系統だろうがその姫には敵わなかったらしい。疑似精霊とやらの力を得た今おそらく姉妹かそれに近い関係のミアル嬢のポテンシャルが妖精族の姫に著しく劣るとは考えにくい。フィリス嬢もおそらく炎精の血を引いていると思うし故郷を滅ぼされた経緯から《報復》スキルの対象は聖光神教と獣王竜だから戦場に立てば一騎当千の活躍を見せるだろうね」
「最後にアズミ・トウヤ。精霊並みの力を他者に与える魔法とそれを可能にする規格外のスキルで獣王竜すら斃す力をもたらした異世界人。戦力としても同郷というだけで『勇者』達への精神的プレッシャーにもなりうる存在です。敵に回ってたらぞっとしますね」
「いや、おそらくだが敵に回ることはなかっただろう。彼女にはある種の信仰心みたいな物が見える。決して聖光神教とは相いれない類のね」
「ああ。まあ、あれで神官職とか向いてそうな考え方もしてるけどな。一歩間違えれば邪教扱いされそうだが。それに論や事実で説服される分には納得するが身も蓋もないことで考え方を強制されるのは嫌うタイプだ。聖王国に召喚されたところで反発する。そしてあの規格外の力で暴れまわるだろうよ」
ギルドマスターの言葉は間違っていない。梓美の考え方では『神』は人の心が森羅万象の中から見出し、形にした物と考えており『何を信じているか』そのものについては否定するつもりはない。ただ、それが周囲を巻き込んで害する大義名分に使われることは許容できない。だから思想を統一し、他者を害するための看板でしかない聖光神教は梓美にとって嫌悪の対象だ。
しかしリスタシアは考える。
(状況が異なっていれば、この世界は滅んでいたのではないか?)
もし聖王国に召喚され、聖光神教の為に力を振るうことを強要されれば梓美は反発する。そして早かれ遅かれ信仰そのものを形にする”降神霊機構”に行きつき発動するのだろう。その時構築するのはおそらく『破壊』や『災厄』を象徴する物だ。梓美は敵対者には容赦がない。襲撃者の生命力を奪うことで無力化と魔力補充を行ったように必要な魔力は敵対者の生命力を奪うことでいくらでも補充することは想像に難くない。
まるで、邪神に供物を捧げる儀式の如く。
その結果顕れた力はこの世界に何をもたらすのか。滅ぶのは聖王国、いや聖光神教だけで済むのか。梓美がシメレア帝国の上空から落ちてきたことと関係があるのではないかとつい疑ってしまう。
(まあ、『もしもこうだったら』を考えても大した意味はないわね)
現在は梓美は仲間と共に在る。この国や人々に対しては特に恨みもなく騒動に巻き込まれることは多いものの基本的には穏やかだ。
ふと思いだす。梓美の襟の下、鎖骨部分が不自然に赤くなっていた。あれは妖精族の血を引く為に愛しい者の魔力、あるいは情愛も求めるミアルと睦みあった跡なのかもしれない。そしてミアルは梓美の”降神霊機構”、つまり信仰の一つをその身に宿している。
それは自分の信仰対象にその身を捧げる『生贄』の様ではないのだろうか。
リスタシアは《鑑定》の魔法が使える。彼女のそれは聖王国の鑑定用魔道具の様にその人物の個人の能力や性格面等の資質を基に最適な役職が提示された『適正ジョブ』も視ることができる。
彼女が視た梓美の適正ジョブはこうだった。
ーーーーー線で塗りつぶされた『聖女』という単語と『巫女』。
聖女とは聖光神教においては神の代弁者ともされる重要な役職だという。しかし、それが塗りつぶされている。梓美は聖光神教に従う『聖女』という在り方を拒絶し、自分の信仰の象徴に身を捧げる『巫女』の在り方を選んだろう。無論、それは本人には無自覚なのだろうが。
「殿下、どうしたのです?急に笑みを浮かべて」
「いいえ、何でもないわ」
リスタシアは思いを馳せる。『聖女』として召喚された筈の少女が自ら信仰を掲げて聖光神教に喧嘩を売っている。なかなかに痛快だがきっと彼女の考える神は傍迷惑な存在でもあるかもしれない。なにせギルド支部を激震させ自分も肝が冷えた騒動の原因は彼女の”降神霊機構”の力を受けた二人の模擬戦だったという。なるほど確かに災害も神格化されよう。でも他所でやってほしい。今嵐を祈りでやり過ごそうとする農民の気持ちがわかった気がする。
(ああ、こうして信仰って積みあがるのかしら)
願わくば、これ以上のドタバタ騒動は別の場所で起こしてほしいことと今回の依頼主、獣王竜の肉を所望した従妹とは仲良くしてほしいと思うリスタシアなのだった。
なお、梓美が自らの適正ジョブを知るのはもっと先の話となる。
『面白かった!』
『続きが気になる!』
『もっとバトルを!』
『ミアルと梓美をもっとイチャつかせろ!』
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