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25話〜天鳴の霆凰〜

総合pv2000突破ありがとうございます!

「やり過ぎたってどういうことかな!?」


 姿が変わったミアルが愕然とした顔になる。頭の羽角も「ピーン!」と上を向く。背中の翼もわさわさと動く。


「うっ、」と頬を赤くして思わず視線をそらす梓美。


「いや、だってここまで合うと思わなかったもん。触角や翅が感情に合わせてピコピコ動くの可愛いし、普段のミアルの魅力にさらに神々しさも混ざって、破壊力がやばい」

「待って今のボクどんな姿なの!?姿見無いからわからないんだけど!?」


 突然のほめ殺しにぽしゅーっ、とミアルが顔も赤くして俯く。そして羽角がピコピコピコと荒ぶっている。梓美がさらに小動物じみた可愛さも追加されていると悶絶しそうになっているが今はそれどころではない。


「ーーーって、ミアル、後ろ!」

「わかってる!"嵐獄(ストームケージ)"!」


 振り向きざまに右腕を振るう。"金剛撃雷(ヴァジュラ)"によるカウンターをすんでのところで回避し、そのまま突撃をかけていた獣王竜が竜巻に閉じ込められる。"嵐獄"内では外側と内側で別方向の竜巻が発生しており、内側では風圧によって押さえつけられているのにも関わらず外側では小さな瓦礫や砂塵が舞っている。無理に脱出しようとすれば逆ベクトルの風圧により捻られてしまうだろう。

 あっさりとミアルが獣王竜を閉じ込めるほど大規模な魔法を発動してのけたのを見た梓美がぽかんと口を開ける。


「いや、梓美が驚いてどうするの。梓美の力でしょ」

「私のスキルのおかげだとしてここまでとは思わなかった。それに獣王竜のブレスを相殺どころか真正面からブチ抜くなんて予想外よ。あれってどのくらいの威力のつもりで撃ったの?」

「"金剛撃雷"?《魔力知覚》でブレスの規模はわかってたからそれより強く、って意識したよ。けどあれの倍の威力までなら貯めの時間さえあればまだまだ余裕。自分でもビックリだよ!術と一緒に送られてきたイメージで大体は伝わったけど改めて聞かせてもらうよ。梓美の使った魔法とどんな存在を何をイメージしたのかを」


 さすがに戦闘中にイチャつくほど気が抜けているわけではないのはわかっているがついさっきまで顔を赤くして俯いていたとは思えないほどの切り替えっぷりだと梓美は感心する。


「"降神霊機構(デウスエクスマキナ)"は術者の魔力を使って擬似的な精霊、もっと正確に言うとそれを再現する魔法術式群を作り出す魔法。で、対象にその術式群を付与する。今回は"投影(プロジェクション)"っていう一番擬似精霊の力を発揮できる付与方法。文字通り擬似精霊としての術式群を『スキル』みたいに対象のステータスに投影するの。例えるなら私がこの世界に召喚された時に本来無い筈の魔力路やスキルがくっついてきた時と似た感じかな?」

「なんか翼とか色々生えてるのは?」

「外見を作り出すのも含めての術式。で、何をイメージしたかって話だけど、ベースは『サンダーバード』。『ワキンヤン』とも言われている雷の化身とされている巨鳥。雷そのもの扱いされたり嵐を起こす、鯨っていう海に住む巨大な『獣』を狩る、かつて『竜』を退けたといった伝説があるの」

「なるほど、巨獣も竜も相手取れる存在で、しかも元々風と水の魔法が得意なボクと相性が良さそうだね。ところで"金剛撃雷(ヴァジュラ)"とか色々な技?武器?名前のイメージもあったけどそのサンダーバードとはまた別の?」

「『雷』って地球の神話だと神様でもとりわけ上位の存在が武器にしてるからそれらの要素も混ざってると思う。ヴァジュラもその一つで邪竜の頭を粉砕したとか武器だとか何とか。ヴァジュラの持ち主に限らず雷の神が蛇の化物や竜を討伐するものは多いね」

「へぇー。あと『光』の属性が使えるようになっているのは"投影(プロジェクション)"の影響?」

「多分そうだと思うけどそこは正直予想外。てっきりミアルの場合風と水で雷雲作ってそこから雷撃かます形になると思ってたから私も驚いた」

「ボクにとってはありがたいよ。魔法の威力不足が解消された」


 嬉しそうに笑うミアルと対象的に梓美の表情は曇っていく。


「……私としては複雑なんだけどね。この世界から見てもミアルを結構飛び抜けた存在にしちゃったことには変わりないんだから」

「梓美、ボクに対して負い目があるんだとしたらボクも言いたいことがある。でもその話は後で。今そのことを言い合っても仕方ないから」


 ミアルは未だ"嵐獄"に囚われている獣王竜に視線を向ける。


「まずは獣王竜(こいつ)をどうにかしないと。後は任せて。梓美は無事な人の手当てに向かえるかな?」

「はぁー、……りょーかい。でも後で色々言わせてね?まずは今やれることをやらないとだけど」


 ポーションで魔力を回復させて立ち上がる梓美。既に自分の怪我は治したようだ。


「ミアル、油断しないでね?物語なら大逆転劇なんだろうけど現実は何が起きるかわからないんだから」

「梓美こそ、もう敵が残ってないとは限らないんだから気をつけてよ」

「勿論。それじゃ、また後で」

「うん、後でね」


 最後はまるで「ちょっと用事済ませてくる」みたいな気やすさで自分達がいた戦場の方角へ向かう梓美。"身体強化"で速くなった足と姿を隠す"光衣"でその姿は他者からは見えなくなる。

 もっとも光学的に姿を消そうとも《魔力知覚》で相手の魔力そのものを視れるミアルにはその姿ははっきりと見えていたのだが。

 その背を見送ったところで"嵐獄"を獣王竜が引き裂いて脱出してきた。強引に突破したのであろう、上昇気流と下降気流に挟まれ捻られ、さらに巻き込まれた瓦礫に打ち据えられた毛皮と翼はボロボロになっている。

 だが角が輝くとみるみるうちに損傷が回復していく。先程も見せた回復魔法だ。

 だが、そんなものは既にミアルには脅威足り得ない。


「梓美が力をくれた。この場を任せてくれた。巨獣に、竜に打ち克てと願った『天鳴の霆凰』の力、その目に焼き付けなよ!」


 ミアルがアサメイを振るうと雷が獣王竜を打ち据える。それを回復魔法で強引に突破するとその爪をミアルに叩きつけようとする。

 先の戦いでも見せていない獣王竜の全力の一撃。その巨体と魔力で強化された膂力から叩きつけられた一撃に地面が割れ、衝撃波と共に瓦礫を周囲に吹き飛ばす。

 その一撃を蝶が舞うように躱し衝撃波と飛礫は纏った風の防壁で受け流すミアル。既にアサメイの先には雷が収束している。それを無防備な側面に向け、獲得したばかり故に無詠唱ではまだ扱いきれないその術名を唱える。


「"金剛撃雷"!!」


 雷轟。そして収束した雷による光束が獣王竜を撃ち抜く。


「グガアアアアアァァァァァァァァァァァァ!?」


 獣王竜がブレスすら貫通するその威力に絶叫を上げる。


「もう一発!"金剛撃雷"!!」


 しかし追撃の一撃は強引に回復して飛翔することで躱されてしまう。


「逃がさないよ!」


 そのまま跳躍、さらに空を蹴ると同時に風で加速して追いかける。

 飛んで逃げると思わせた獣王竜は急旋回し、ミアルを叩き墜とさんと前脚を振りかぶって迫りくる。

 そこまでの飛行能力があるとは思わずミアルもぎょっとする。


「こん……のおっ!"旋斬光輪"!!」


 負けじと自分の体並みの大きさの高速で渦巻く風を纏った光帯のリングを生成、切りつける。やはりまだ無詠唱はできずとも扱い慣れた風をベースにすれば魔法の発動が早い。

 高速回転する光輪と獣王竜の爪が拮抗する。しかし、それは一瞬のことだった。


「っりゃああああああ!!」


 回転によって連続で風と光の刃による斬撃を繰り出す光輪が振り抜かれ獣王竜の右前脚、その手の部分を切り飛ばす。悲鳴と共に獣王竜の攻撃は空を掻く。


「もらったよ!」


 すれ違い様に反転、光輪を射出する。光輪は避けきれなかった獣王竜の右翼を切断してなお止まることなく地面に接触。大きな切り傷を残して消滅する。その光景にミアル自身も冷や汗をかく。


「うわ、使いどころ間違えるとなんでもかんでも切っちゃう。撃つなら場所と角度は考えないと」


 片翼を失ったことで揚力を失い墜落する獣王竜。その衝撃で街中に土煙が舞う。

 追撃せんと近くの建物に着地したミアルが両手を天に掲げる。獣王竜が墜落した地点の真上の空間でバチバチと稲光が走る。


「"雷霆光雨(ケラウノス・レイン)!!」


 振り下ろした両手に呼応して文字通り雨のように降り注ぐ稲妻。

 一点集中の"金剛撃雷"とは違い一撃の威力は落ちるものの広範囲への攻撃を可能にするのが"雷霆光雨"。ギリシャ神話の最高神が放つ世界を焼くともされる雷霆(ケラウノス)が由来だ。

 土煙で全体がよく見えない状態で上から貫通力の高い"金剛撃雷"を放てば回避された時に万が一地下に避難所があればブチ抜いてしまう恐れがあった。そのため、一発の威力は落ちるため地下への影響が少なく、かつ攻撃を当て続けられる"雷霆光雨"を追撃に選択した。当然地上には巻き添えがないことは《魔力知覚》で確認済みだ。分厚い遮蔽物に遮られると不可能だが土煙程度なら人の魔力を見逃すことはない。


 このまま飽和攻撃で仕留められればいいと考えていたが現実はやはりそううまくはいかないらしい。ミアルの《魔力知覚》には土煙と稲妻に隠れた獣王竜の角、そして口内と思しき箇所に魔力が集うのが視えた。


「この状態で撃てるの!?」


 "金剛撃雷"で迎撃するには位置取りが悪く"雷霆光雨"を中断して放つ時間もない。防ぐことはできてもまた足場ごと飛ばされる危険もある。ミアルは攻撃を中断してその場から離脱する。その背後、さっきまで立っていた場所をブレスが通過し、吹き飛ばされていく。

 ブレスの余波で晴れた土煙の向こうからこちらを睨む獣王竜を見てミアルは険しい顔をして思わず悪態をつく。


「どれだけ再生能力が高いんだよ!仕留めるなら一撃で決めないと駄目か?」


 切断された右翼と右前脚を含む傷すらも、獣王竜は再生していたのだ。


「いいよ。どうせ直撃したらボクは終わりだろうしそっちは即死なら回復しようがないでしょ?どちらかの攻撃が一撃で命を奪うまでひたすら根比べといこうじゃないか」


 ミアルの言葉が通じたのかは定かではないがそれに応じるように獣王竜が咆哮する。

 戦いに決着がつくのはまだまだ先になりそうだ。



『天鳴の霆凰』はミアルが考えました。15になったばかりなのでかっこつけれる時はつけたいお年頃。

"旋斬光輪"は"降神霊機構"由来ではなく村での訓練時期に梓美が試しに作ってみた魔法だったのだが風の魔力が弱く実用を見送られていたのをミアルが実現。イメージ的には八つ◯き光輪やビーム◯マッシャー。


それはそれとして


『面白かった!』

『続きが気になる!』

『もっとバトルを!』

『ミアルと梓美をもっとイチャつかせろ!』

他諸々という方がおられましたら大変励みになりますので感想やブクマ、広告下の評価(⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎になってるやつ)を宜しくお願いします。

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[一言] ミアルの触覚や翅がピコピコ動くの、愛らしさが増してて可愛いですね~。戦闘力はハイパーモード化してますが。 それはそうと、梓美のあの知識や発想力は何なんだろう。普通の女子高生が持ってるものじ…
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