19話〜精霊の魔法と水着に想いを馳せる〜
前半に少し下ネタ注意。
一部修正しました。
今日フィリスの装備の整備が終わり、翌日から冒険者活動を再開するとのことだったのでミアルと梓美も今日は一日休みにして買い物に繰り出していた。せっかくのオフだからと梓美はこちらの世界に落ちてきた時の服装、セーラー服を着ていた。
「ところで梓美、昨日のあれ、一体どういうカラクリ?」
「あー、そうだよね。いきなり近接戦もできるようになったら変だよね」
ミアルは梓美が昨日短時間の訓練で多少なりとも近接戦をこなせるようになったことについて何か秘密があるのではと思っていた。
「《舞台装置》スキル、今空きがあるからその一つに相手の動きを記憶して自分の体に反映させる魔法を構築したの。模擬戦で目星つけて小休止中に技を盗み見て、その後の模擬戦でところどころ再現。短剣使いの戦い方も視たからミアルにもアサメイ使って近接戦する時の見本見せれるよ。命名するなら"見取り"かな?見取り稽古な感じで」
「そういえば魔法の練習の時もスキルで魔法を構築して、その時の魔力の流れをなぞって自力で発動できるようにするってやり方だったよね。魔力と体の違いはあっても動きの再現はお手のものか」
「そういうこと。最初から強くはないけど強くなるための能力があるのはありがたいよ」
軽く梓美は言っているが、三ヶ月するかしないかの期間で魔法はおろか戦闘の経験も無しの状態からC級冒険者並みにまで成長できるのは異常だ。
これが梓美の元々の才能なのか異世界人であることなのかはミアルには判断がつかない。
「どんどん梓美が強くなっていくからボクは先輩としての立つ瀬が無くなってくるよ。せめて《精霊術》スキルが扱えるようになれば……」
「あ、精霊術といえば」
「何か知ってるの?」
「知ってるというかなんというか。妖精って基本女性型だけどつがいの性別は問わないって話があったでしょ」
「あぁ……うん」
ミアルは顔を赤くする。妖精のハーフなのだから他人事ではない。むしろ自分とすごい関わりのある話だ。
「あれって精霊が姿を変える能力で性別を変えてるんじゃないかな?ただ、妖精族に女性型が多いってことは、えっと……その……」
言い澱みながら梓美まで少し顔が赤くなる
「個人の好みなのかもしれないけど変えるのをせ、生殖器官あたりだけに限定させて性別の壁を突破してるんじゃないかなーって思って。ルルさん何があったかは具体的には教えてくれなかったし。」
「つまり、生やしたり?」
「あるいは生やさせたり」
「「………………」」
年頃の女の子が揃ってなんという話をしているのか。
「……今思い出した。昔村長の家に娘さんのナルちゃんと遊びに行った時にナルちゃんの部屋にあった本なんだけどね?妖精の呪いで女の子に変えられた王子の物語の絵本があったんだ」
「妖精の呪い……あっ」
梓美も察したようだ。勿論ただの作り話かもしれない。
しかし、妖精がつがいの性別を問わない仕組みが精霊魔法による一部の性転換だとして、それが相手の全身にも適用できるのだとしたら現実味を帯びてしまう。
「その物語はドタバタした面白い話だったんだけどね。それをかーさんに話したら「あー……そうねー」ってすっごい微妙な顔したり遠い目をしてた覚えがあるんだ」
「妖精族、本当にやりかねないのね。それ実話がモデルならその王子コメディどころじゃなかったんじゃないの?」
その妖精族の意図を考えると耽美物一直線である。
余談ではあるがムロアウィールドの王家の200年程前の記録には同年代と思われるシャルル王子とシャルロット姫の名があるが、王子の成人以降の記録と姫の幼少期の記録はなぜか殆ど無いという。
「話を戻すよ。もし、私が地球に帰る方法がなかったとして、この世界に住むことになったとするよ?私達の家庭はミアルの精霊魔法習得にかかっていると言っても過言では無いんじゃないかな?じゃないと子供欲しかったら養子取るしかなくなるよ?」
「何てこと言うの梓美ーーー!?」
ミアルは頭を抱えた。どうも梓美はこの手の話は色々すっ飛ばして唐突にぶっ込んで来る。
「なんか結婚すること前提じゃないかな!?」
「正直ミアルなら嫁に行きたいって思ってるよ?かっこいいし可愛いし一緒にいて楽しいし面倒見がいいし実際家事ができて冒険者引退しても薬草の扱いとな狩りとかで真っ当に稼ぐ手段もあっておまけに顔もいい。というか初日とミアルの成人した時の夜のあんなことしたんだから責任取ってほしいくらい」
「ストレート過ぎだよ!?……でもそれなのに地球に帰ることが目標なんだ」
「うぅ、そこを突かれると痛いけど所詮私はこの世界の存在じゃないからね。戻れるならあるべきところに帰らないと」
苦笑いする梓美。
「それに、向こうに残してきたものが結構あるのよ。どっちにしても両親には何かしら伝えないとって思ってる。急にいなくなった私のことで気を病んでるかもしれない。ずっとあてもなく探し続けてるんだとしたら気の毒だよ。戻れないにしてもそれを伝えるくらいはしたい」
「梓美は親思いなんだね。でも、結婚とか云々は抜きにしてボクも梓美がいなくなるの、嫌なんだよ?」
「帰れない何かがあったらせめて親にメッセージは送るよ。ベストは行き来できることだけど。まあ一番の問題はそこじゃないんだよね」
「一番の問題?」
「寿命」
人間族の寿命は日本での平均寿命を基準にしてもエルフの三分の一にも満たない。梓美の方がずっと早く老いていくだろう。
ミアルの表情が暗くなる。
「……結局ボクは置いていかれちゃうのかな。世界にしても寿命にしても」
「このままだとね。一応寿命の方は考えはあるよ?」
「どうやって?」
「ぶっちゃけ人間をやめる」
ミアルはぎょっとした表情で梓美を見る。一体何を言い出すのか。
「人型種族の中で妖精族とエルフが圧倒的に寿命が長い。次に竜人族かな?妖精族と竜人族は会ったことないからわからないけど『解析』の魔法で視てみてもエルフだけ他の種族と大きく違う部分があったの。多分これって先祖の精霊の要素だと思うのよ」
梓美が《舞台装置》ですぐに発動できるようにしている魔法"解析"。
視認した対象の構成や身体機能を把握、記録する他、対象が解析済みの物に対して有害な性質を持っているかを把握できるオリジナルの魔法だ。
梓美はこのアダマートでも時折"解析"をしてデータを集めていた。
「だから私の身体を精霊のそれに近づけることができれば老いるまでの期間と寿命延ばせるんじゃないかなって思ってる」
「そんなことができるの?」
「ううん。まだ机上の空論。どうやったら精霊の要素を組み込んだ身体にするとかそもそも精霊の要素をどう用意するとか課題はいっぱい。それにそんな身体になったらなおさら地球に帰れないもん。この世界でミアルと一緒に生きていくなら必要になりそうだし使えるようにはしたいけどね。何事も手札は多いに越したことはないよ」
梓美の場合さらに手札が増えるのかとミアルは思う。そんなミアルを他所に梓美はブツブツと思考に耽っている。
「精霊を宿らせるならシャーマンみたいな降霊術、で、そのまま同化?でもそれじゃ身体は人間のままね。それに意思も精霊と混ざるんじゃ話にならない。意思のない精霊?あるのかな?身体は同化後再構築するとか?でも後付けの機能を元からあったように組み込み直す方法なんてどうすれば……あ」
目を見開いた梓美の足が止まる。
「梓美?どうしたの?」
「ううん、何でもない。ちょっと変な考えに行き着いただけ」
それは何でもないとは言わないのではないか。
ともあれ、精霊魔法を扱えるようになるのは変身能力を差し引いても戦力アップに繋がるので途中の店で買い物をしながらも二人は何か手掛かりになるものはないか図書館に向かった。
◇
「精霊は魔力が何かしらの理由で一つの生命となったものって物語や伝承でよく言われてるけどどうやったら生命になるんだろう?」
アダマートの街にある図書館。本の貸し出しはされていないが入館料を払うことで自由に閲覧ができるので度々二人は訪れている。
今ミアルが読んでいるのは精霊の起源に関する本だ。
「それを言ったら私達だってそうよ。何をどうしたら海の中の物質が命を持つに至ったのかって話だし」
「海?」
「そう、海。地球だと何十億年もかけて私達の目に見えないほどの小さい生き物が色々な進化をしながら陸にも進出していったの。未だに生命の起源ってわかってないんじゃないかな?」
「どっちもどっちかあ。ボク達の起源も海からなのかな?いつか海にも行ってみたいなあ」
ミアルにとって梓美の知識は新鮮な物ばかりである。魔法がないからこその視点からの研究や技術は魔法をより効率的に使ったり新たな使い方の発想を与えてくれる。
「私も海行きたい!ミアルと一緒に水着着て海で遊びたい!」
「水着?」
「うん、水遊び用のインナーみたいな濡れることを前提にした服?だね。露出が多いから一見下着みたいな物が多いよ」
「下着!?そんな姿で遊ぶの!?」
「それくらいの露出じゃないと布が水を吸って動きにくいのよ。大丈夫。フィリスさんの胸当てを布にしたような感じだから」
「それってすっごくよくないんじゃ……」
「大丈夫!皆そんな風な格好だから」
目の前の梓美が最初の日に身につけていた下着のような格好で普段通りに振る舞うと想像すると全然大丈夫じゃなく感じる。
そして自分も似たような格好をして衆目に晒されると考えると顔が熱くなってくる。
絶対に色々間違いが起きてしまう確信がミアルにはあった。
そんなミアルを見る梓美はなんかニヨニヨしてる。ついミアルは半目になってしまう。
「なんだよその目ー」
「水着で恥ずかしそうにするミアルを想像したら可愛くて。どんな水着が似合うかな?」
ゴン!と音を立てて机に突っ伏す。
「う〜梓美が意地悪だぁー」
「ごめんごめん。でも水着着たミアルすっごい似合うと思うのよ。これで私も露出大きめな格好したらミアルどうなっちゃうんだろ?」
「知らないー。少なくとも精霊術習得するまで行かないー」
「どうしてそこで精霊術?」
「調子に乗った梓美への反撃手段と抑止力。この本に書いてあったよ?妖精族ってゴブリン程下半身生物じゃないけど相性の良い相手は稀だから気に入った相手にはケダモノだって。梓美の水着姿を日中から直視し続けてボクは大丈夫なのかなー?取り返しのつかないことにならないかなー?」
つまり、調子に乗って煽り過ぎて我慢できなくなっても知らないぞ、ということである。梓美も顔を赤くして押し黙る。
元々梓美はミアルの魔力同調の影響を受けている。その気になったミアルに襲われたら余程のことがない限り抵抗できずにされるがままになってしまうだろう。
言った側のミアルも突っ伏したままだが耳が真っ赤になってしまっている。
「……調べ物に集中しよっか」
「……うん」
気まずい空気の中、ページをめくる音だけが図書館で聞こえる音となった。
◇
途中何とも言えない空気になったが調べ物についてはそれなりの収穫があった。
精霊術には自分の魔力で周囲に働きかけて様々な現象を発生させる魔法がある。
それはあくまで自前の魔力のみで効果を出す従来の魔法よりも大規模な物となる。
火属性なら自分の魔力だけを燃料にしてそれを操るのが普通の魔法に対し精霊魔法はその魔力で周囲を燃料にしてより大きな炎を作り操ることもできるのだ。
「ミアルだったら自分の魔力で嵐を起こしてその規模で風や水の魔法を使う感じかな。
「魔の森中層でもオーバーな力だよね。試すにしろ練習するにしろ一歩間違えたら大災害だよ」
ギルドの訓練施設で練習すればギルドが吹き飛んでしまうかもしれない。
いかにして精霊魔法の練習もできないかと考えていると不意に妙な魔力をミアルは感じた。何事かとその方向に目を向けると、
ーーーーーーーカンカンカンカン!!
アダマート中に鐘の音が鳴り響く。緊急事態を告げる鐘の音だ。
何事かと二人で目を見合わせると次の瞬間、
ゴァァァァァァァァァァァァーーーーーッ!!
巨大な咆哮がアダマートに轟いた。
「ミアル、私を高い所に!今の声の方を見る!」
「任せて。捕まってて!」
梓美を横抱きにして図書館の窓から飛び出したミアルはそのまま風の魔法で跳躍し一際高い建物の屋根の上に立つ。
街を見渡すと一点から土煙が登っている。ミアルが妙な魔力を感じた方向だ。
長杖を取り出した梓美が望遠用の魔法を発動すると、表情が凍る。
「何よ、あれ……」
その声は震えていた。
「梓美!何が、何を見たんだ!?」
「特徴を言うよ。全身白い毛皮に覆われていて高さは二階建ての建物並み。四足歩行。頭部には大きなヤギのような表面の鹿のような形の角。背中に鳥の様な翼。獣っぽいけど私から見た第一印象
は、」
「それってまさか」
二人の声が重なる。
「「ドラゴン!!」」
『面白かった!』
『続きが気になる!』
『もっとバトルを!』
『ミアルと梓美をもっとイチャつかせろ!』
他諸々という方がおられましたら大変励みになりますので感想やブクマ、広告下の評価(⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎になってるやつ)を宜しくお願いします。




