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14話〜ギルドで一騒動と防具〜

「ーーーーで、あなた方はただの採集のつもりだった筈がろくな防具も無しにシェルヘッドベアに戦いを挑んで討伐して血濡れで解体中の血の臭いに惹かれてやってきたディノラプターもついでに狩ってきたと」

「すみません、お騒がせしました」


 ミアル達が報告と素材の精算に戻った時、冒険者ギルドは騒然としていた。本来外縁部に出てこないシェルヘッドベアが目撃されたからだ。討伐には最低でもDランク冒険者複数人の戦力が必要なため、魔の森への一般人及びD、Eランク冒険者の立ち入り禁止、早急にCランク以上の冒険者に討伐を依頼しようとしていた。

 まだ帰ってきていない冒険者の身が案じられていたところに服が血まみれ(体についた分は水の魔法で洗い流した)の二人が戻ってきていつもの受付嬢アンジェラさんはひどく心配した。

 そしてシェルヘッドベアの討伐と地球のディノニクスに似た魔獣ディノラプターの討伐の報告、ディノラプターが邪魔でシェルヘッドベアの解体を進められず途中で"奈落"にしまって持ち帰ってきたので仕留めたディノラプターごとギルドの施設で解体させてほしいことを伝えたらアンジェラは真顔になって説明を求めた。


 薬草を中心とした素材採集をしていたら遠方にシェルヘッドベアの存在を確認、隠れて様子を見ていたが匂いが原因か接近してきた。

 迎撃のために遠方から梓美が闇魔法で精神を磨耗させる呪いを付与する弾を撃ち込み続け弱らせたところを有効射程距離まで詰めたミアルが"風斬"で首を狙うものの、頭部を強化され失敗。

 作戦を変更し水魔法の霧や顔面への水弾で視界を奪ったところを梓美が長杖で出力の上がった"夜爪刈り(ニクスリーパー)"で魔力を削ぎ魔力による強化を無効化したところをミアルが梓美の光魔法の支援を受けた"風斬"で首を切りつけて致命傷を負わせ、倒れて絶命するまで風弾による挑発、光魔法による目潰しとありとあらゆる手でひたすらに牽制と回避に専念した。

 シェルヘッドベアが出血多量で斃れた後、血抜きと内臓の取り出しをしたとこまではよかったが血の匂いを嗅ぎつけてディノラプターの群れに包囲され迎撃する羽目になった。

 ディノラプターは基本頭部を"風斬"か"閃火弾"の一撃で倒せるものの数が多い上に隙をついては解体途中のシェルヘッドベアやその臓器にもちょっかいをかけようとするため解体を断念することに。

 心臓や肝、胆あたりを切り出して残りの臓器を放棄、囮にして他を"奈落"に収納、追手を迎撃しながら撤収した。返り血は臓器の処理に付着したものである。


「あのね、冒険者の死因や再起不能の原因でかなり多いのが自惚れて冒険者ランクより上位の魔獣に挑んで返り討ちにされることですよ?それが魔の森での初討伐がシェルヘッドベアって。死にたいのですか?」

「返す言葉もないです」

「ディノラプターもシェルヘッドベアの死体放置すればそっちに群がるのに迎撃して美味しいところあらかた持ち去るとか追われて当然でしょう。これが走力を強化する魔獣だったら命はなかったですね。まあ冒険者は自己責任なのですが」

「肝に銘じます……」


 そんなわけで無謀にしか見えない行為をした二人は説教を受けることに。昨日慎重に行こうと決めたばかりなのにシェルヘッドベアを見つけてからは割と無茶の連続だった自覚があるので反論もできない。


「その辺にしとけ。こいつら解体がしたいって言ってるんだ。解体所へ案内してやれ」

「ディーゴさん……わかりました」


 見かねたディーゴの助け舟のおかげで二人は解放され、アンジェラの案内で解体所へ向かうことができた。その背中を見てディーゴが呟く。


「まあアンジェラも試験とはいえ俺に勝てちまうような新人が惜しいってのはわかるけどな。やっぱり先輩冒険者につけた方がいいか。実力そのものはDランク、Cにも手が届いてるレベルだろうが魔獣の生息域での実地経験がなさすぎる」


 ギルド内を見渡した彼はある人物に目をつける。


「そういやあいつと同じ宿だったな。役割もあの二人と補いあえる。ちょっと上とも相談してみるか」




 ◇




 宙に現れた黒い孔からドサリドサリとシェルヘッドベアとディノラプター4体の亡骸が落ちてくる。


「丸ごと持ち帰られたシェルヘッドベアは珍しいですね。基本的に魔の森の中層をテリトリーにしていますしそれなりの巨体ですので収納の魔道具持ちでも高価な部位に絞って持ち帰ります」

「高価な部位っていうと?」

「普通の熊、それと魔獣と同じです。胆臓、心臓、肝臓ですね。毛皮は腹部をズタズタにされて討伐されることが多いので質が落ち剥ぎ取る手間もあってここまで傷の少ないものはそれなりに売れると思いますが」

「それじゃ、先にこの臓器類の買取査定お願いしてもらっていいですか?ボク達しばらく解体して時間もかかりますので」

「ミアル、ナイフ貸して。光魔法で切れ味上げるから少しはやりやすくなると思うよ」


 解体に慣れているミアルがシェルヘッドベアを、多少は森で慣らした梓美がディノラプターを解体していく。


「これだけでかいのに1頭あたりの値段がククラプターと同額ってなんか納得いかない」

「味は落ちるみたいだしでかいし向こうから寄ってくるから逆に狩りやすいのもあるかも」

「へえー……」


 梓美はミアルに首を断たれた個体の断面近くの肉を切り出して光と火の魔法で十分に熱してから齧ってみる。


「あ、確かに同じ部位でも少し硬い?ちょっと食べてみて?」

「どれどれ?あー、ほんとだ。それに少しクセがある?これ肝とか背肝の臭みきついんじゃないかな。ククラプターの方が単価高いわけだよ」

「え、お二人ともククラプターを食べたことがあるのですか?」

「うん、村近くの森で見つけたら即仕留めるようにしてたからね。横取りする魔獣もいないし」

「獲れたてってことはあの幻の珍味の背肝も……」

「かーさんが大好きだね」

「私はハツの方が好きだけどね」

「もも肉の塩カラ揚げがボクは好きだなー」

「この街で生姜とか醤系の調味料あったらまた違う下味で作って……いや、下手にククラプター本来の味を潰すのは勿体ない?ディノラプターの方がタレ漬けに合うかな?」

「なんって羨ましい……!」

「すごい言葉に力こもってる……!」


 その頃冒険者達は一先ずシェルヘッドベアが討伐されたことと新たな『熱暴走娘』の話題を肴にギルド内のフードコート区画で盛り上がっていた。


「シェルヘッドベアを『熱暴走娘』二人で仕留めたってよ」

「は?昨日冒険者登録したばかりだろ?」

「いやいや流石にないだろう」

「さっき解体所覗いてきたけどマジだった。収納系スキル持ってるみたいで丸ごと持ち帰ってた」

「報告聞いてたけど遠くから闇魔法で精神削ったとかえげつねえ」

「確かにあれ遠距離には弱いもんな」

「首切りつけたらあとは牽制で失血死狙いって絶対毛皮高く買い取ってもらうためだろ」

「首筋から血が流れ続ける中霧でろくに見えなくて闇魔法で精神えぐられて風弾叩き込まれるのってどんな気分なんだろうな……」

「文面だけだと外道の所業じゃねーか!」

「シェルヘッドベアはそうやって狩るんですか?」

「いいか、真似すんじゃねーぞ。その首を斬るってのが難しいんだ。魔力で強化されてるからな」

「だから基本腹を狙うんだ。それか殺傷力の高い魔法で胴を狙って近づけさせないことだ。そのせいで毛皮に傷が多くなるんだけどな。」

「タンク役か火主体の魔法使い無しで相手したくないよあれ。間違ってもDランク以下は手を出すなよ。気づかれたらすぐに酢とか獣除けの薬自分にぶちまけて離れればよほどのことがない限り襲われることはない。あいつら鼻がいいからな」

「あの二人それ知らなかったんだなー。よく生きてたよ本当」

「あと、さっき先に採取済みの物の査定してたの見たけど生きたまま瓶詰めのラピスビートルも査定出してたぞあいつら」

「死にたいのか馬鹿か!?」

「え、なんですかそのラピス……?」

「ラピスビートル。色が宝石みたいな青でコレクターがいるくらいだがシェルヘッドベアの好物らしくて生きたまま何匹も持ち歩いてると中層では嗅ぎつけてくる。つまり、外縁部に出てきてたあいつとは必然の出会いだったわけだ」

「それに釣られて外縁部に出てきた可能性は?」

「ゼロじゃないのが怖い話ね」

「うわー、本当に綺麗な虫が瓶に入ってましたよ。知らなかったら俺も捕まえてたかも」

「外縁部でも見かけるから捕まえればそれなりの金にはなるけどもし俺達と一緒の時に捕まえたら容赦なく囮にするからな」

「それにしてもトバすねぇーあいつら。冒険者二日目でシェルヘッド狩ってくるとか。次はどんなやらかし見せてくれるのかね?」

「あまり大事になるとうちらも巻き込まれるから昨日程度でいいんだが」

「よう隣座るぜ。さっき解体所での会話が聞こえたんだがあいつらよく故郷の森でククラプター狩って食ってたらしい。解体中のディノラプターの端肉味見して比較してた。二極使いの方はハツが好物だとか。あとそいつが料理したモモ肉の料理が絶品らしい。アンジェラちゃんがすっごい羨ましそうな顔してた」

「マジかよ!俺達でも食ったことないのに!」

「そうか、森に迷い込んで増えたやつなら他の魔獣も少ないから安全で逆に取りやすいのか。ちょっと田舎の村行ってこようかな」

「待て待て待て明日行く予定の討伐依頼どうするんだー!」

「ククラプターが俺を呼んでいんるだッ!」

「呼んでねぇよ!」

「これで『熱暴走娘』のエピソードに美食家が追加されたな」

「おっ早速ディノラプターの肝とかが限定メニューに並んだぞ。ちょっと買ってくる」

「てめえ!抜け駆けするんじゃねえ!」

「セセリはもらったあ!」


 まとまった量の劣化が早い食用部位を仕入れた時に限りフードコートに希少部位の限定メニューが比較的安価で並ぶ。滅多に口にすることのできない珍味を求めしばらくの間フードコートは戦場と化した。

買取分を受け取りに解体所から出てきた二人が崩れ落ちる冒険者多数と戦利品に舌鼓をうつ勝者達の異様な光景に二度見したのも無理はない。



 ◇




 全ての査定を終えた結果素材は大銀貨9枚と銀貨5枚で買い取って貰えた。もしシェルヘッドベアの討伐依頼が出ていればさらに報酬を貰えたのを聞いてなんとも言えない表情になった。買取金額の半分近くがシェルヘッドベアの毛皮で全身の比較的良好な状態だったため剥製等にも利用できそうとのことだった。

 当然ながらラピスビートルについての注意も聞かされた。知らずに持ち歩いて周囲を危険に晒す可能性があったことに二人は肝を冷やした。

 そして今すぐ稼いだ金で防具を揃えるよう忠告も受けた、その際解体に失敗して出来の悪くなってしまったため買取額の落ちたディノラプター1頭の皮や爪を持ち込みにするよう勧められた。


 武具屋で採寸を担当したトランジスタグラマーの女性はドワーフ族で昨日の長杖を売ってくれた男の奥さんとのことだった。


「昨日旦那が制御補助のない廉価の長杖買っていった子がいたって聞いたけどいきなりディノラプター1頭分素材持ち込みなんてねえ。で、こいつで防具かい。どちらも魔法使い、特にエルフの嬢ちゃんはあまり機動性落としたくないんだろう?胴回りは最小限の革鎧、あとはグローブぐらいかねえ」


 もう少し高価なものになれば魔力を貯蔵しておけるローブや外套等もあるらしいが基本的に魔の森中層あたりから必要になる。本来外縁部クラスで危険なのはディノラプター、次に武装したゴブリン程度なので戦力過多な上に下手な扱いをして修繕に出すことになると赤字になる。

 一通り採寸を終え二日後の完成待ちとのことで前払いで代金を支払った。材料としてディノラプターの皮や爪を買い取ってもらったので半額近くになっていたので武具の新調の時のためにいくらか素材をストックしておくこうかと考えた二人だった。


シェルヘッドベアは某狩人ゲームの村クエスト範囲内で例えるなら星4程の強さ。初心者の装備と技量、特に物理寄りでは間違いなく返り討ちにされます。

そして明日以降しばらく更新ペースが落ちるかもです。


『面白かった!』

『続きが気になる!』

『もっとバトルを!』

『ミアルと梓美をもっとイチャつかせろ!』

他諸々という方がおられましたら大変励みになりますので感想やブクマ、広告下の評価(⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎になってるやつ)を宜しくお願いします。

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