11話〜冒険者ギルド〜
アサメイについて今後の話との矛盾があったので修正しました
辺境都市アダマート。魔獣の領域である魔の森に隣接する都市の一つで別名『冒険者の都』。
魔獣からの防衛と治安維持のために騎士団が常駐しており若い冒険者達の憧れでもある。
冒険者として名を上げて騎士団に。そう言って成人を迎えてすぐにこのアダマートで冒険者になる若者は多い。
「すみません、冒険者登録をしたいのですが」
ミアルと梓美の二人はこのアダマートの冒険者ギルドの門を叩いた。成人の祝いから1週間ほど旅立ちの準備を整えてから今日このアダマートへ早朝に辿り着いたのだ。
「冒険者登録ですね。お二人ともですか?一人銀貨5枚になります。」
「はい。二人お願いします。」
「では、こちらに名前と出身を記入してください。必要であれば代筆も承ります。終わりましたら魔道具による鑑定を行います」
梓美もこの世界の文字を勉強したので問題なく記入していく。
書類を提出すれば次は鑑定だ。村長宅にあった物よりやや小型で綺麗な魔道具だ。
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名前:ミアル・ルート
種族:エルフ族 性別:女
年齢:15歳
身体機能
生命力:B
体力:B
筋力:C
耐久:C
魔力:A(適性:風、水)
敏捷:A
保有スキル:魔力知覚、精霊術
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名前:アズミ・トウヤ
種族:人間族(地球人) 性別:女
年齢:15歳
身体機能
生命力:C
体力:C
筋力:C
耐久:C
魔力:A(適性:光、闇)
敏捷:B
保有スキル:言霊(人型種族)、舞台装置lv3
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「はい、確認しました。ミアルさんは《精霊術》のスキルを持っていますが、扱いはどのくらい?」
「いえ、精霊術に関してはほとんど扱えない、というか扱い方を知らないですね……正直持ち腐れです」
《精霊術》スキルとは本来精霊や一部の妖精族が扱える魔法を行使できるスキルであり、直接自然現象や生命体に干渉する等通常の魔法とは一線を画す。しかし、肝心の扱い方はスキルを持つだけでは知ることはできず精霊術を使えないまま天寿を全うする者がほとんどだという。
「わかりました。次にアズミさん。《舞台装置》は初めて見るスキルです。現在lv3ですが、今スキルに保有している魔法は?」
「一つが"収納"の魔法に近い物を。あとの二つは必要に応じて構築し直して入れ替えていますのでなんとも言えません。基本的に一つは"鑑定"に似た、物品の有害性を他の解析済みの物と照らし合わせて確認する魔法を入れてます」
常に"奈落"を使い続けているからか《舞台装置》のレベルは3まで向上している。
そこで新しくスキルに保有した魔法は"解析"だった。これは対象の構成素材や身体機能を把握する他、対象が鑑定済みの物に対して有害な性質を持っているかを把握できる。ただし、対象の構成の解析に重点を置いているため保有スキルに関して知ることはできない欠点を持つ。
もう一つは状況に合わせて現在の技量では即座に発動できない魔法を構築、保有している。
「わかりました。それと、この種族、地球人というのは?」
「生まれがこの大陸ではないんです。気が付いたらニオクス村の近くで、そのまま保護されました」
「……嘘は言ってませんね」
冒険者登録の際、常に対象が嘘を言っていないかを判別する魔道具が作動している。とはいえ素直に異世界人だと告げるのもトラブルの元になりそうなので「この国どころか大陸の生まれではない。何かしらの事故か現象でニオクス村近くまで飛ばされ、保護された」という嘘は言ってないけど全ては話さない、人を騙す常套手段を取ることにした。
「それと、アズミさんは一応人間族ですが、『聖光神教』とは関わりが?」
「私の知る限りではないと思います。少なくともその教徒との接触はないです。なんなら踏み絵もしますよ?容赦なく踏み砕いて見せます。」
聖光神教はこの大陸で最も人型種族内で数の多い種族である人間族を至上とする信仰で、差別主義が強い。この大陸で最も大きな国の国教も聖光神教である。
現在この国をはじめとした多種族共存国家と睨み合いの状況にあり、身元が明確ではない人間族は疑われることが多い。
『踏み絵』というのはその聖光神教のシンボルを踏みにじることによってその信仰を否定できるか確認する行為である。聖光神教は背教者に対しての弾圧が強く、もし聖光神教の勢力内で踏み絵をすれば居場所がなくなると言われるほどである。
「生憎と聖光神教のシンボルがないので踏み絵は結構です。仮にシンボルがあっても砕くまでしないでいいです。新しく用意するのが大変なので」
梓美が「踏み砕く」とまで言ったのは「聖光神教の信仰心が一切ない」という宣言に等しく、これも魔道具によって虚偽ではないことが証明されている。割と定番のやり取りらしく受付嬢もさらりと流す。
「お二人とも人柄に問題はないでしょう。この後実技試験をします。冒険者は時に命を張る仕事です。最低限の戦闘能力が無ければ登録は認められません」
最初にステータスの確認と必要に応じて面接。そして冒険者として生きていられるかを試験官との模擬戦による実技試験の結果で冒険者登録が認められることになる。不合格の場合、一ヶ月の再登録申請禁止期間が設けられるが最初に支払った金額の半分は返却される。
初めての村の外の人との(模擬)戦闘にミアルと梓美は気合を入れ直す。
◇
冒険者ギルドには素材の保管庫、簡易な酒場といった様々な施設がある。実技試験はその中の一つ、訓練場で行われる。
「俺が今回二人の試験官を務めるディーゴだ。ルールは簡単、一対一で模擬戦を行う。ただし互いに殺傷能力の高い攻撃や毒や汚染の伴う物は禁止とする。」
二人の前に立つ試験官の男は筋骨隆々の人間族の男性だった。手に看板のようなものを持っている。
「ステータスを見た限りじゃ二人とも魔法使いタイプ、一応体も鍛えてるか。そこら辺を怠けてる奴らはDどころかEもありえるしな。さて、まずはアズミ・トーヤからだ」
「はい!」
梓美とディーゴが訓練場の中心に向かう。ミアルはそのまま見学用のベンチに腰掛ける。
さっきの受付嬢が審判を務めるようだ。
二人は10メートルほど距離を開けて立つ。
「おい、杖はどうした?」
ディーゴが怪訝な表情を浮かべる。ミアルは魔法使いの筈。それが徒手空拳で戦うつもりでいるようにしか見えないのだ。
「杖?」
梓美がきょとんとした顔を浮かべる。
「魔法使いは基本的に魔力運用の補助具を使う。基本的には『杖』の形をとるがな。万が一の近接戦用の武器にもなるんだがまさか手ぶらでやるつもりか?」
初耳なんだけど!?という顔でミアルに目を向ける梓美。
「いや、無くても魔法って使えるからいっそ訓練になるってかーさんが……」
補助具など無くても魔法は使える。最初から高めに目標を設定しておけば高い水準で鍛えられるとはルルの弁である。
「杖はないのでこのままお願いします……」
考えてみれば魔法使いなら杖とか持っている筈だと今更になって気づいた梓美。一番身近な魔法使いだったミアルやルルも杖無しで魔法を使っていたためそういうものだと思っていた。
今度何かしらを調達することを決めた梓美だった。
「まあ杖が無いなら無いで構わない。始めるぞ」
ディーゴが看板……だと思っていたが実は木剣を構える。
「それでは、始め!」
受付嬢の合図と同時にディーゴは殺気を剥き出しにして距離を詰めてくる。
「どうしたぁ!腰が引けてるぞ!」
殺気に呑まれかけて半歩後ずさった梓美だったが、すぐに右手に闇属性の魔法を発動、自分にそれを叩き込む。すぐに表情に冷静さが戻り迎撃の態勢に入る。発動するのは"身体強化"。こちらからも距離を詰める。
「"精神干渉"を自分に使って恐怖を散らしたのはいいが剣士に魔法使いが距離を詰めるだぁ!?そいつは自殺行為だぞ!」
木剣の間合いまであと僅かというところで梓美が右に飛び退く。そのまま手をディーゴに向ける。
しかしお見通しとばかりにディーゴも足に"身体強化"を使用、梓美を追うように跳び、木剣を振りかぶる。
「意表をついたつもりだろうが跳ぶのは失敗だったな!甘んじて受け入れな!」
そのまま袈裟斬りにする。が、その手応えの無さに罠だと気づく。背後には黒いもやのようなものでできた爪を振りかぶる梓美。
("夜爪刈り"!!)
爪がディーゴの体を通過する。やられたと思ったディーゴだが体に一切の傷がないことに不発を疑った。しかし次の瞬間には強烈な目眩と足に力が入らず、その場に膝をついてしまう。
「ぐっ、何をした!?」
叫ぶディーゴだが顔の横スレスレを光弾が通過し、閉口してしまう。
梓美はいつでも追撃できるようディーゴに人差し指を向け、その指先に留めた"光弾"がいつでも放てる状態になっていた。
「そこまで!!」
受付嬢の声が響く。
梓美の戦術はこうだった。"身体強化"でギリギリまで接近、回避の瞬間に光学迷彩のように自分の姿を隠し、さらに反対側に自分の虚像を転写して囮にする。そうしてできた隙を突いて半実体化した魔力を介して触れた相手の魔力を奪う魔法である"魔奪"、それを爪の形にしてリーチの確保と"魔奪"とは別の魔法に見せかけた"夜爪刈り"で文字通り魔力を刈り取った。
魔力を大幅にかつ急激に失うと意識が混濁したり、気を失うこともあり、"身体強化"をしていた場合だと意識を失わずとも急に術が解けるのでそのまま脱力してしまうこともある。それを利用して無力化を狙ったのだ。
「ああ、くそ、やられた。確かに魔法使いだが"精神干渉"に目眩しの類、さらに"魔奪"か?暗殺者向いてるんじゃないか?」
「だって貴方に普通に魔法撃っても弾き飛ばされるのが目に見えてますもん。意表を突いてバッサリ無力化しないと私じゃ勝てそうになくて」
「それはいいんだけどね、梓美?」
ディーゴと感想を述べ合っている梓美が振り返ると仁王立ちしているミアル。
「あれ?ミアル?なんか目が笑ってないんだけど……?」
「この後ボクの試験あるのにディーゴさんの魔力ゴッソリ奪って試験大丈夫なのかな?」
「心配いらねえよ。こういう時の魔力回復薬だ。値は張るし自腹だが俺が油断したツケだ。さあ、ミアル・ルート、次はお前の番だ!」
「はい、よろしくお願いします!」
ミアルは腰のホルスターから短剣を取り出す。
普段獲物の解体や投擲に使う物ではなく諸刃で柄には緑色の宝石が埋め込まれている一目で特別な代物だとわかる一品だ。
「アサメイか。こっちはしっかりと用意しているのか」
アサメイとは所謂杖として機能する短剣である。
これがミアルの杖であり、いざという時の近接戦用の武器でもある。しかし、魔法効果を高める鉱石素材を使っているものの、子供の時に贈られた物なので安全に配慮された結果刃が砥がれておらず、鉄でできたナイフよりも切れ味が落ちる。近接戦に用いるのは本当に緊急事態用だ。
「ディーゴさん、もう大丈夫ですか?」
「ああ、回復薬は効いてる。もう始めて構わないぞ」
「それでは、始め!!」
号令と同時にミアルの正面に複数の魔法陣が出現する。ミアルお得意の"風弾"だ。だが、その展開速度も弾速も村で梓美の訓練の時とは比べ物にならない程の速さ。これがミアル本来の実力である。
「速ぇなこの!!」
しかしそこは試験官。毒づきながらも木剣で全弾を弾き飛ばしながら距離を詰めていく。梓美にやられたことを引っ張っているのか彼も割と本気である。
アサメイを持つ右手で"風弾"の連射を続けながら左手で別の魔法の発動準備に入る。
("水射"!)
左手で放ったのはゴルフボール大の水弾を一度に多数放つ魔法だ。あまり殺傷力はないが、顔面に何発も当たれば十分な目眩しになる。
被弾はまずいと考え横へ飛び退くディーゴ。すぐに態勢を整え、追撃の"風弾"を弾く。
("幻霧")
先に放った水弾が弾け、霧へと散る。ディーゴの視界は完全に霧に覆われた。
「ちいっ!」
即座に"身体強化"を腕に回し木剣を大きく振るうディーゴ。その風圧に飛ばされて霧が晴れるが前後左右を見渡してもミアルの姿は無い。
「上かっ、なあっ!?」
すぐにミアルが跳んだと予想し見上げた瞬間、強烈な衝撃を顔面に受けそのまま仰向けに倒れ込む。
"風弾"より大きく高密度の風の塊をぶつけ、着弾の際に解放した風で吹き飛ばす"風撃"だ。
ディーゴの予想通り風の魔法で跳躍して"風撃"をぶつけたのだ。
そのまま木剣も"風撃"で弾き飛ばしながら着地し起き上がろうとするディーゴの顔面にアサメイを構えチェックメイトだ。
「そこまで!!」
「だーっ、2連敗か畜生!」
ディーゴが頭を掻き毟る。
「あー、格好つかねぇ。しかもアンタあれだろ。その気になったら"風斬"の類いの斬撃できたよな?」
「うん。使えたけど、殺傷力の高い魔法が禁止だったから、というか無闇流血沙汰にするべきじゃないからね。そっちはやめたんだ」
もしこれが狩りや討伐なら風の刃を飛ばす"風斬"を使っていただろう。
「本当は勝てなくて普通なんだよ。その上で冒険者やっていくかを見るんだよ。あー元先輩冒険者の威厳がねぇー。」
ディーゴが項垂れる。「引退して随分と鈍ったみたいだし鍛え直すか」と小さく呟いた後
「技量、戦い方共に不足なし。初級とは思えないくらいだ。あとアズミって言ったか、そっちは最初ビビったあたり実戦慣れしてないみたいだがその後しっかり立て直したし杖も無しに術の扱いもいい。あとは経験で補えるだろう。二人共合格でいいと思うが、どうだ?」
「はい、問題ないかと。ですが皆例外なく初級のEランク冒険者から始めてもらいます。お二人もそれでいいですね?」
ディーゴの意見に受付嬢も賛同する。なりたての冒険者に飛び級はなく一番ランクの低いEランクのスタートになることを告げるがミアルは梓美と顔を見合わせて、
「「はい!よろしくお願いします!」」
力強く答えた。こうして二人は冒険者としての第一歩を踏み出した。
『面白かった!』
『続きが気になる!』
『もっとバトルを!』
『ミアルと梓美をもっとイチャつかせろ!』
他諸々という方がおられましたら大変励みになりますので感想やブクマ、広告下の評価(⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎になってるやつ)を宜しくお願いします。




