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004「教え上手、聞き上手」

 辺境伯とは何かという初歩的な質問から始まり、果てはレオくんたちの年齢まで脱線しながらも、ジャンさんはため息一つこぼすことなく、むしろ嬉々として色々な知識を教えてくれた。現代日本なら、カリスマ塾講師か、文化人タレントとして人気を博すことだろう。

 とにかく、話し手の言わんとするところを汲み取る能力に長けているのだ。さすが、ロイヤル執事である。


「つまり、ここは広い意味ではルージュ選帝侯が支配する王国で、王子は選帝侯に委任される形で、このミネット辺境伯領を統治しているというわけね?」

「その通り。いやはや、飲み込みが早くて助かります。聡明な頭脳をお持ちですね」


 高校の先生が、これくらい教育熱心だったら、少し無理をしてでも大学に進む道を選んだかもしれない。経済的な理由で私学受験を諦める人間が居ることを考慮して、政府は、もっと公立校教職員の待遇を改善すべきだ。

 おや? この桑畑を逆さにしたようなマークは、何だろう?


「ジャンさんの説明が上手だからですよ。――この記号は何ですか?」

「それは、マンドレイクの群生地を表すマークです」

「マンドレイク?」

「はい。薬草の一種で、占術にも使う植物です。ちなみに、隣にあるひと回り小さな記号は、その亜種であるアルラウネの群生地です」

「へぇ」


 少しばかり心配性すぎるきらいがあるけど、頭の回転の速さは、とても四十二歳とは思えない。馬齢を重ねて威張ることしか能が無かった養護施設のおじさんとは、月とスッポンだ。

 この際だから、ついでに言っておくと、ヘレナさんは三十五歳で、レオくんは、なんと十四歳なのだとか。勝手に十八歳くらいだと思っていたので、ビックリした。この世界では十二歳を迎えると成人一名以上の同意により婚姻が認められ、十六歳を迎えると成人として扱われるという。

 猫耳獣人はヒトとは違って、身体機能の成熟が早いからなんだろうなぁと思いつつも、なんだか生き急いでる感じがしてならない。


「どうかなさいましたか? 疑問点があれば、何なりとおっしゃってください」

「いえ。色んなことを聞いたので、ちょっと頭の中で整理してただけです。――平均寿命は、どれくらいなんですか?」 

「おおよそ、五十歳手前です。もっとも、薬草学の研究や医術の発展により、徐々に伸びつつあります。アミさまの世界では、おいくつですか?」


 逆質問が返ってきたか。これで八十歳を超えているといったら、どんな反応をするのだろうな。

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