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赤い部屋  作者: クロウ
8/10

ー GAME ー

赤い部屋のページに飛ぶとそこは黒いバックグラウンドに無機質に赤い文字がなぞられていた。


赤い部屋って文字が大きく書かれていて、その下に文が乱立している。

特に目立ったリンク先もないみたいだし、なんかこのためだけって感じがする。


文字の背景は…扉?なんかものものしい…名探偵コナンでCMをつなぐ時の扉で分かるかな?

鍵がかかっているようにも見えるけど。


そして、BGMが流れている。

不協和音がいい感じに響く素敵な低い音。

ピアノの旋律がとてもきれいなんだけど、どこか不気味な感じをすごくイメージさせられる。


なんだろう。どこかの古いお城に来てしまったかのような違和感。

世にも奇妙な物語で流れていそうな独特の不安を煽る音色。

画面に映っている背景の扉がやたらリアルに…


すぐ目の前に…


触れたら手の届く位置にあるように感じたの。




画面に書かれている文面をゆっくりと酒井くんは読み上げた。



「赤い部屋。


 決して開けてはいけない赤い部屋。


 あなたは赤い部屋は好きですか?」



その後にSTARTボタンが映っていた。

それは、少し浮きあがったブロックのようなボタンの上に書かれていた。

いかにも押してくださいと言わんばかりに…ね。



その選択肢しか書いていない。

ただそれだけ。


その文字はとてもシンプルにで、それ以外何もなかった。


「これが赤い部屋…?


 なんか思っていたよりも普通だね。」


普通?そうか、千尋ちゃんにはそう見えるか。

このページを開いた瞬間から、信じられない気配がひしひしとするんだけどね。

体中の神経がピリピリしている。


この部屋全体の空気がもう既に変わりつつあることを感じさせるのには十分すぎるくらい。


しばらく私たちは画面を眺めていた。

明かりは付けているから、部屋の中は明るいはずなんだけど、空気のせいかな?

どことなく暗く感じていた。


STARTボタンの文字が薄くなったり濃くなったりを繰り返している。

不穏な音楽と共に画面は少しばかりイルミネーションをつけて…



なんか…どこかで似たような光景を見たことがある気がしたの。

どこだっけなぁ…。

私は頭の中の引き出しを片っ端から開けながら考えていた。



その画面を見ていた酒井くんがゆっくり口を開いた。



「もしかして…」



「何?」



「赤い部屋ってゲームなんじゃないかな?」



ゲーム?



「なんで?」



「いや、ただなんとなく。そんな気がしたんだ。


 このバックグラウンドの造りとかBGMとかSTARTボタンがなんとなく…ゲームの造りに似ているなって。」



そう言われて私はもう一度画面を見た。

私はあまりゲームをしたことがないけど、よく弟がゲームをするものだから、

ついつい見てしまっちゃうことがある。

その時との記憶と照らし合わせてみると、

確かに…似ているような気がする。


というか!私が感じていた違和感と一緒だ!


「そう言われたらなんかそれっぽいね!


 よく怖い話でも、そのままパソコンの中に引きずり込まれた!!


 みたいなオチの話もあるしね!


 なるほど…そういう展開もあるわけだね♪」


千尋ちゃんは例のごとく素敵な展開へと夢を馳せていました。


どういう展開だよ!って私は突っ込みたかったけれど、

この空気でそれをする気にはとてもなれなかった。



「確かに、ゲームみたいな感じよね。


 だとしたら、このSTARTのボタンを押しちゃったら…


 ゲームスタートってことなるのかなぁ。」


「んー。これがゲームだとしたらね。」


「そーだよねぇー…」


そんな選択肢を用意していなかったから、ちょっと考えていた。

ゲーム?もしゲームだとしたら…


「ゲームとかなんでもいいけどさー、とりあえず、押すのこれ?


 STARTボタン押すわけ?どーするの?


 っていうか、押すよね!?」



そう彼女はとても目をキラキラさせながら聞いてきた。

その好奇心に満ちた瞳は、エサを目の前にした肉食系の動物のような純粋な眼差しだった。

我慢できません!というメッセージが目からほとばしっている。


酒井くんは私の顔を見た。

言葉はないけれど、目で語るというやつだ。

私もそれに応えるように目で合図した。


「まぁ…これ押さないと始まらないしね。」


「うん。」


酒井くんの言葉に私は素直に頷いた。


「だよね、だよね!!じゃあ、あたしが押すね♪」


そう言って、千尋ちゃんは手を伸ばしマウスを握ると、STARTボタンにカーソルを合わせた。


少しこちらの視線を気にしてか、深呼吸をしていた。


「なんかドキドキするね。」


笑いながら千尋ちゃんはそう言った。でも、どこか千尋ちゃんの表情にも緊張感がとって取れる。

こんな状態でも楽しそうにしているおかげでなんとなく楽天的に考えてしまっていた。


深呼吸している千尋ちゃんを見ながら、一つのことが頭をよぎっていた



もしゲームだとしたら?



なぜかそれが私の頭の中でやけにひっかかっていた。

けれど、考える時間より早く正反対に時間は勢いよく流れていた。


「よし!」


カチ。


そう言って千尋ちゃんは躊躇することなく、STARTボタンをクリックした。




私は少しばかり後悔することになる。



もしゲームだとしたら?



その後に続く意味をもっと考えるべきだったと。



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