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赤い部屋  作者: クロウ
2/10

ー 千尋の家 ー


さて、持つものは持ったし、行くとしますか。


私はほぼ手ぶらに近い格好で家を出た。

家を出るともう既に日は暮れ、肌寒い季節になったことを感じる。

空気が凛として冷たい感じ。

寒いのは嫌いだけど、こういう透き通った感じって好きだな。


フードつきのパーカーの大きなポケットに手を入れて歩き出した。

待ち合わせのコンビニまでそんなに遠くない。

歩いて十分行ける距離だった。

待たせるのも悪いと思って私は5分前には着いたんだけど…


酒井くんはすでに待っていた。


「ごめん!待ったかな?」


「いや、今来たところだよ」


ああ、なんて王道の会話(笑)これはちょっと嬉しいかも。


「自転車寒くなかった?」


「そんなことないよ。美山さんの家ってここから近いのかな?」


「うん。わりとすぐだよ。立ち話もなんだし、行こうか」


「そうだね。」


止めていた自転車を押して、私たちはゆっくりと歩き出した。


「なんか、ごめんね。巻き込んじゃったみたいで。」


「あはは。いいよ。僕が話を振ったせいもあるし」


「そかな?でも、千尋のお願いを断れなかったのもあるでしょ」


「うーん。まあね。」


「やっぱりー」


ふうと小さくため息をついた。

少し照れながらそう言われるとなんだかなー。

あの小悪魔め。自分の長所っていうものを分かりすぎなんだよね。

だいたい私が酒井くんに気があることを分かったうえでこういう…


「久遠さんはさ」


「え、は、はい?」


「何で怖いの嫌いなの?やっぱりドキドキするから?」


にへらって笑いながら聞いてきた。


「そうだね…それもあるけど、あんまり関わりたくないんだー。」


「ま、確かになんか呪われたりしちゃいそうだもんね。」


「そんな感じかな?」


私も笑いながら返した。


それからもクラスでの雑談をしながら、ゆっくりと千尋の家に向かっていた。

私は楽しさとは裏腹に、不安ばかりが募っていた。

何が起きるか分からないけど、これからのこと考えると嫌な予感が募るもの。


「あ、あれが千尋んち。」


「あのマンションなんだね。なんか綺麗だなー。」


10階建てのけっこう新しいマンション。

玄関入口はまるでどこかの城みたい。

オレンジと白のライトが照らす空間はとてもきれいで、それをまた大理石風の床が拍車をかける。

ほんとお嬢様の家って感じ。

その8階に彼女は住んでいるのだ。


すっごくキレイだしきっと普通の感覚ならまた来たいって思うんだろうけど、

私からすればなーんか、また来ちゃったって感じがするなぁ。


ふう。とため息をついて、私は一つだけ酒井くんに聞いた。




「酒井くんはさ、幽霊とか妖怪とか世間では存在しえない者って言われてる存在を信じる?」




「え?」


「ただ、なんとなくね」


「そうだなぁ…。僕はあんまり信じてないかな?」


「そっか。」


「どうかした?」


「ううん。なんでもないよ。」


不安をかき消すように私は私なりの最高の笑顔で笑った。

にかって酒井くんも笑ってくれた。

このまま今日が終わってくれたらいいのに…


「自転車停めてくるね」


駐輪所に自転車を颯爽と走らせ、手早く鍵をつけていた。


「信じてない…か」

そうだよね。普通はそういうもの。

そう信じていれば、きっと今日は何にも起きなくても済むかな?

この胸にかかる不安な影が、私の杞憂であってほしいな。


「じゃあ、行こっか」


明るい笑顔でそう言うと、私たちは千尋のマンションに足を踏み入れた。




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