タンパの夜
「これからどうするね?」
「そうだなあ……」
女性陣が風呂に入っている頃、1階のカウンターでロルフとガイアルドは酒を飲みながら作戦会議をしていた。
勿論二人とも疲れているはずだし、ここまでの道中でも何度となく交わされていた会話でもある。
「本当にあの二人を元の世界に帰すとなれば、それなりの覚悟がいるぞ。しかも実際の所はやってみないとわからんしのぉ」
「まあ、偶発的に開く『扉』をアタるってのは面倒だしリスクが高すぎる。今までもいくつか『扉』を見てきたが俺がいた世界と繋がっていたのは、初めてだしな」
「実際には今まで見た『扉』の中にも、お主の世界と繋がっていたものはあったのかもしれんが、判別する方法から調べんとのぉ」
「判別する方法なんてあるのか?」
「知る限りでは、ないのう」
「だよな。せいぜい中から何が出てくるかで判別するくらいだろ。そもそも『扉』が双方向に移動可能なのか自体が解らねーし」
「今まで何度も『扉』そのものは見てきたが、吸い込まれるといったことは無かったしのう……」
「異界に移動するようなリスクを負いたがる奴も普通は居ないしな。ただまあ……」
「うむ、試みている者は何人も居るじゃろうな。ただ、、移動してしまった者が戻って来ておらんのなら立証はできんが」
「論理的に考えれば『扉』はそれぞれの空間を双方向に繋いでいると考えるのが自然なんだがな。もしそうだったとしても、とにかく『扉』自体にアタれない事にはどうしようもねえか」
空になったカップの把手を持ち、カウンターの奥にいるユエイルに向かって振りながら、二人は話を続ける。
「なにをどうアタってみるかね?」
「今まで……既に管理されてる『扉』はあんまり気にしてなかったが……」
「転送施設でもあたるのか?」
「うーん、流石にそれはなぁ。この辺り……行ける範囲でまだ管理されてない、もしくは破棄されたっぽい『扉』はねーのかな。もしあれば、そこからあたってみようぜ」
「そこに行って何を調べる?破棄された『扉』の復元なぞ流石にできんぞい」
「さすがにそこまでは考えてねえよ。とりあえず『扉』の性質でも解らないかと思ってな」
届いた酒を飲みつつ、干物をしゃぶる。
「うーむ、基本的というかなんというか……ただ、『扉』そのものはあれだが紋のコピーは学園にあるかもしれんぞ?」
「そういやそうか。発見当時に調べられてるはずだしな。んじゃあそっちを調べといてくれないか。俺はとりあえず仕事がないか当たっておこう」
「食い扶持が増えたで、稼がんとのう」
「そういうことだ」
そこまで言うと話の内容は徐々に他愛のないものへと変わる。まだまだまともな食事と酒を楽しみたい。
風呂を上がった二人が部屋に戻るのを見送った後、更に飲もうとしていたところをユキに窘められて風呂へと入ったが、上がった後は結局また飲み始める。
部屋に戻った二人があっという間に眠りについていた後、夜中まで酒宴を続けていたのであった。