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その元・男、現・貴族令嬢にて  作者: 伊賀月陰
第二章:夢見がちな来訪者
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幕間:神坐

ほんのちょっぴりの幕間です



「あーっはっはっはっはっはっは!」


 白い空間に笑い声が木霊する。


 目の端に涙を浮かべて腹を抱えているのは勝ち気そうな少女。笑いすぎて座っている床をべちべちと叩いている。

 その横で額に青筋を立てて震えている男が一人。細面を紅潮させて眼の前を睨む。


 二人が見ているのは一つの風景。今いる神坐から離れた場所の映像であった。


「ひー、笑えるっ……なあなあどんな気持ち、配置ユニットが立て続けに敗北してどんな気持ち?」


「うるさいぞ小娘がっ!」


 見ていたのは、ある屋敷の一室での戦闘。

 胡散臭い男が二剣の少女に殴り飛ばされているところだった。

 男はファルス、少女はリリアンヌ。それぞれ、神坐の二人が加護を与えた人物である。


「ええい、ヨシヒコといいこいつといい使えん……!」


「だぁーから言ったじゃないの。与えりゃいいってもんじゃないんだよ」


「貴様も相当詰め込んだだろうが!」


「あんたと違って意思を曲げたりはしてないからねえ」


「くそっ」


 ケラケラ笑う少女に舌打ちを返して、男は立ち上がる。


「おや、帰るのかい?」


「貴様には関係ないだろう!」


「いやーこれでも管理神だから。客が帰るってんなら御挨拶しないと」


「下位神風情が私に指図するな!」


 その言葉を残して、男神は光となり飛んでいった。

 方角は男の古巣ではなく、下方……少女の管理世界。

 行き先を察して少女神は眉を顰める。


「……盟約を忘れてはいないだろうね、あいつ。行くだけなら構わないけど……」


 カリカリと頭を掻いて、溜息を吐く。


「露払いを任せてばっかで悪いなあ……そろそろ、なんとかしなきゃあね」




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