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その元・男、現・貴族令嬢にて  作者: 伊賀月陰
第一章:失ったもの、失わなかったもの
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幕間:再開と本当の始まり

デイリー2000PV到達ありがとうございます。

今後とも宜しくお願い致します。


本編開幕です。







 夢を見た。


 いつか見たような真っ白で透明な景色と、忘れもしない不思議な少女。


「やあ、少年。久しぶりだね」


 貴女は、神様?


「んー、まあそれでいいか。そうだよ。元気……って聞くつもりだけど、顔見たら聞く気も失せちゃった」


 私は救えなかった。


「それは仕方ない。元々変えられない運命ってやつさ」


 励ますような口調でやれやれと語る。


「ここまでは、変えられないんだ」


 ……何だって?


「言葉通りさ。君が両親を失い、家族を傷付けられる……そこまでは決まっていたことなんだ。

 ―――すまないね」


 何故謝る。


「ボクはこうなることを知っていて君を転生させた。

 本来の『リリアンヌ・ル・ブルトン』が耐えられず発狂した、この事態が起こることを知っていて、君に任せたんだ」


 ……………とんだ非道だ。


「うん、そうだね。でもこの先は違う」


 白磁のような細腕を目いっぱいに広げ。


「君はここから先を、選べる」


 選ぶ?


「本来の『彼女』には無かったものが君には幾つもある」


 無かったもの……。


「剣術も体術も、魔法も魔法理論も、学術も、政治も……そして君の転生前の知識も」


 さあ、と背中を押すように。


「君は何を選び、進み、終わるのか。選べるのは―――君だけだよ」









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