僕と僕の姉ちゃんと時々赤髪の少女
「な、なんで姉ちゃんがここに…」
ワナワナと震えながら、赤髪の少女の右後ろに立つ女性。つまるところ姉ちゃんである日浦 睦を指差した。
すると、姉ちゃんは指を差されたことが気に食わなかったのか、口角をピクッと動かして僕の方に歩き出す。
何を思ったのか、僕の前に立つ姉ちゃんはそのまま人差し指を掴む。
ボキンッ。
「〜〜〜〜っ?!!あ、うぅ…あぐっ!?」
そのまま逆関節に無理やり曲げ、骨が折れる鈍い音が響く。突然の痛みに思わず膝をつき、折れた指を見る。人差し指の付け根が折れたようで、一切動かない。
だが、痛みは一瞬で今は痛くない。じわじわと折れた箇所が温かくなっているような感覚はある。
モスマンに殴られて両足が折れた時は上手く状況を理解できていなかっただけマシかもしれない。単純に折られた今は、視界がチカチカするし、汗が止まらない。冷や汗というか脂汗というか。
「人に指差すなって、姉ちゃん教えたよね?依」
「睦ちゃん、それはひどいよほんと」
膝をついたまま、姉ちゃんたちを見上げると赤髪の少女は若干引いていた。口角が引きつっている。
「大丈夫?依くん。まぁ君の回復力ならもうすぐ治るよね?」
少女はしゃがんでいる僕の顔を覗き込む。
僕は少女の言葉を無視して、折れた人差し指を動かすとまだ少し違和感があるが、そんな違和感もあと数分もすれば無くなると思う。痛みはもうない。
姉ちゃんを軽く睨みつけながら、僕は立ち上がった。
「わっ、もう治ったの?さすが改造されてるだけあって回復力だね!」
「……改造?」
なにそれ。僕が改造されたって言いたいの?それこそ日曜の朝じゃないんだから…。
「それよりここは?」
僕の問いに、僕の指を無理やり折りやがった姉ちゃんが口を開く。
「魔法連盟が管轄する研究所の一つ。ここでは依アンタの身体を調べるために拘束していた」
「待ってくれ姉ちゃん。訳がわからない」
すごい淡々と言っているが、魔法連盟ってなんだよ。あの僕のことを眠らせたあの子も……あ。
「それよかあの子どこいった?僕を眠らせたヤツ」
「あぁ仁科さん?どこかにいるわよ。アンタを連れてきた張本人だからね」
あの子は仁科さんというのか。覚えておくぞ。
「そろそろ…本題に入っていい?」
少し痺れを切らした赤髪は左手を挙手し、僕を見た。
「本題…?何か話すことが?」
「あるよ〜あるある!そうだなぁ、その身体のこととか?」
少女は、にししと笑いながら僕の顔を見る。普通の純情無垢な少女にしか見えないんだけど…なんて言えばいいんだろう。
隙が一切見当たらないし、どことなく修羅場を潜っているような印象がある。みたいな?
「身体って…この回復力とか筋力のこと?」
「そそそ。知りたいでしょ?なんで突然、そんな力を手入れてしまったのかとか」
「…まぁ少しだけ」
「よろしい!じゃあついて来て?」
少女と姉ちゃんはこの取調室を出るように歩き出すので、僕もそれについていく。